ええ。小心者ですから・・・。

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悠遠夜話・番外編


悠遠夜話・番外編~西園寺さんの初恋~その1

2010.05.30  *Edit 
▽TB[0]▽CO[0]

!!ご注意!!このお話は『西×啓』でございますよ~

宜しければどうぞ










「だまれ!!この親不孝者が!!」

豪奢な細工を細々と施した 
真珠の様な白い大理石で作られた高い高い天井
広く美しいその広間には到底 似つかわしいとは言い難い
びりびりと空気を震わす 怒号が鳴り響いた 

「わ・・若!!大君(おおきみ)に深謝を!!今すぐに!!若―――!!」

オロオロとして 一族の長への不敬を今すぐに 
詫びるよう促す年嵩の家令の言葉などには一向に耳を傾けることなく
形の良い顎を くい。と上げたかと思えば 
その未だ年若い男は堂々と胸を張り凛とした声を響かせて言い切った

「嫌だ。」

びきびきとこめかみに青筋を立てた 炎の様な髪を持つ一族の長は 
がたり と大きな音を立てて 座っていた玉座から立ち上がり
母親に似て大層秀麗な 自分の息子の顔を壇上から見下ろせば
その女のように美しく柔和な姿形には似つかわしくない
敵を射抜かんと欲する 緑碧の燃えるような双眸と視線がぶつかった

「どうしても 頷かぬか」
「ボケられましたか?父上。・・・嫌だと言っております」

一族全てがひれ伏す 長の大喝にも頭を垂れることなく 
それどころか鋭い眼光でこちらを睨んで 否を貫く
 
「・・・・かーおーるううううううう」

バチバチと音が聞こえそうな程の にらみ合いが続き
ついにその緊張に耐えきれなくなった 家令が二人の間にずい・・・と割って入ってきた

自分より、もうすっかりと 大きくなってしまった
小さなころから慈しんで大切に育てて来た若者を 
背中にそっと庇うようにして その前に立ってから 
一族の長のへ起拝を取り 
額をこすり付ける様にして 場の退出を願い出る





「うう・・・若・・お待ちくだされ!!若っ!!」

後ろからちょこまかと小走りで付いてくる 小柄で大層年嵩の家令の声など
全く聞こえていないように 若者は柔らかな美しい髪を揺らしながら
止まる事もせず 大股で廊下を歩いていく

ふわふわと風に揺れる薄絹の衣も 長く続く廊下を照らす穏やかな午後の陽光も
たちまち若者の美しさを際立てる 要素へと変わっていく

その姿は 
滑らかな肌も、聡明な眼もとも 高い鼻梁も
何一つ互いを損なうものなど無く 完全なる調和をとり 一幅の絵の様に美しい
 
すたすたと歩調をまるきり変える事無く歩き続け 
振り返りもせず若者は家令に問うた

「じい・・。何故止めた?」

「怖れながら・・あのままでは炎が上がって仕舞いますゆえ・・・・」

「ふん。いっそ燃えてしまえばよかったのだ。その方がすっきりする」

あぁ・・とがっくりと肩を落として 白いひげをモコモコと動かしながら

「何と言う事を・・・情けのうございます!!」
大体・・大君にむかってあの様な不敬。言語道断ですぞ・・・
ワタクシが常日頃申しておりまするのは一族の長となるべき品位とその本質・・・
長い長い説教が始まりを告げたのだ

「はあ―――――。」

知らず眉間にしわが寄る
先ほどからしこっている 右のこめかみを揉み解してから
若者は一つ小さなため息をついた
それから 口許でひゅっ・・・と空気を吐き出して

来い。風よ・・・
と 念じ終えないうちに その体はふわりと宙へ舞い上がってしまい
ひたすらに小言を唱道し続ける 家令がはて?と気づいた時には
桃園の林を遠く望む 霞みのかかった山々の真上にほんの僅か 豆粒ほどに
認める大きさになってしまっていたのだった。

「むむうぅぅぅ・・・・若あ―――――!!」
家令が白いひげと眉を盛大に揺らして 唾を飛ばしながら叫んだ所で
その声は もう若者の耳に届く筈も無かった。



若者の傍で風がびょうびょうと 呻りをあげて吹き過ぎて行く
眼下には白く光る雲海が何処までも広がっている
雲海の谷間の所々に見える景色が 驚くべき速さでどんどんと流れていき 
眼で形を認識する事は困難なほどだ 

だが不思議な事に若者の身にまとうその衣は 
ふわふわと只 柔らかく波打っているだけなのだ

「ふん。本当に燃えて灰になってしまえばよかったのだ。」
その美しい横顔には全く似合わない 物騒な呟きを忌々しげに吐き捨てて、
先ほどの長の大喝を思い出す。

そうだ・・・大広間へ来いと呼びつけられた時から
何か悪い予感がしていた
自分の直感を信じて、父親の元へなど行かなければ
こんな不愉快な気分になる事も無かっただろうに


炎と風を司る 朱雀、
風と雷を司る 白虎、
玄武は大地を、青龍は水を司る 
自然の息吹きを自在に操る 天空を守る誇り高き四神将

その中でも、炎の中に身を投じて再生を繰り返すと言われる不死鳥 
朱雀は名門中の名門 誉れ高き一族と言われ
その怒りに触れれば、一瞬で地獄の劫火に焦がされ命を奪われる
激しくそして美しい 紅の名将 
と畏怖と尊敬の意味合いを込めてそう呼ばれていた
 
雲海を風に乗り ひたすらに駆ける若者
西園寺 郁は 朱雀の正統継承者だった



「そろそろお前も 伴侶を娶り一族の長として継承の儀式を受けよ」

話は唐突に始まり、うず高く釣書が自分の目の前に積み上げられた
自分の父親であり 一族の長である彼の命令は絶対に覆される事の無い決定事項だ
名門の朱雀の家に生まれ、たった一人の跡継ぎとして家督を相続するのは
当たり前なのだと物ごころついた時から自覚していた

一族を掌握し、繁栄の為に自分はあるのだと信じて疑った事など一度も無い

一族の為 いずれは伴侶を娶ることになるだろう事も 自分の頭の隅にはあった
だがしかし、犬猫をもらい受ける気やすさで 
今すぐここで妻を決めろと言うのは
あまりにも理不尽で 頷く事など到底できる話ではなかった。

長々と書かれた釣書や 豪華な装丁を施された美々しい姿絵に
埋もれそうになりながら
今はまだ結婚の意志の無い事を伝える事にしようと思案する
もしかすれば父親の気が変わる事もあるかも知れない・・・
そう考えた自分は甘かったのだろうか?

「父上、私はまだ嫁を娶る気はございません」

「だが、話は山ほどある。どれもこれも良縁ばかりじゃ。好きな者を選べばよい」

ゆったりと玉座に座る父親は、心底不思議そうな顔をして息子を見ていた

「ですが・・私は未だ 学ぶべき事が山とありまする・・・。」

「何、妻を娶ってからも学ぶ事は出来る」

話はすっかりと堂々巡りになって
気に入ったものが居ないと言えば、取りあえず適当な者を妃に据え 
後で何人でも側室へ迎えればいいと言う。
なおも食い下がり 妻は一人で充分だと言えば 
赤の闘将と怖れ 崇められるたいそう短気な父親の事 
大分焦れて来たのか 
とにかく黙って妻を娶り 家督継承の儀式をしろと恫喝まがいに言い始める

結局のところ、古くからのしきたりで
結婚してからでないと家督の相続は出来ないから、今すぐに
結婚しろと言うことなのだ

この理不尽さは一体何だ?
一人身だと言う事が そんなに罪なのか?
たったそれだけのことで欠陥者扱いで 
継承が認められないと言う 馬鹿らしさ

紅の闘将 
朱雀の正統継承者は 一族が持つ気質を余すことなく受け継いでおり 
例外なく 非常に短気だった

秀麗な顔に沸々と怒りを滾らせ、あろうことか一族の長との真っ向勝負を挑んだのだ

「正当なる理由もなしに一族の長である儂に逆らうことまかりならんぞ。」

「とにかく嫌なものは嫌なのです。」

「だまれ郁。今すぐに妃を選べ!」

「嫌です」

「ぬぬぬぬ・・・」

まさに一触即発の状態で 家令が二人の中に割って入らなければ
おそらく朱雀の持つ火の力で轟々とした炎が燃え上がったに違いなかった

いっそのこと 古臭い建物など仕来たりと一緒に
綺麗さっぱり燃えてしまった方が よかったのだ
自分が隠居生活したいばかりに 息子に家督を相続させようなどと
身勝手にも程がある。
しばらく戻ってなどやるものか。

若者は一つだけ 舌打ちをすると眷属である風に命じて
身を運ばせる速度を落とすよう仕向け
雲を抜け 高度を落とした



眼下に広がるのは 王宮を中心にして放射線状に広がる人間の城下町
中心部は市が立ち 多くの人々が騒々しく往来している
並び立つ建物も大きく立派で見目麗しく 貴族や大商人たちがこぞって
自分の財産を誇示しているかのようだった。

だが反対に 円の外側、ぐるりと巡らされた城壁の近くに行くにしたがって
地味で質素な建物が増えていき
長屋の様なひと続きの屋根が多く連なり
材木をつなぎ合わせただけの簡素なつくりがほとんどになる
道行く人々の服装も簡素で 皆汗や泥で汚れ 男も女も忙しなく働いていた 

若者はこうして 人間を眺めるのが気に入っていた
にぎやかで騒々しい活気あふれる街並みも、行き交う人々の生き生きとした表情も
仙界では見た事が無いものだった。
見ていて飽きる事は無かったから 例え人間の世界へ渡る事が
掟で許されない事でも 風に身を運ばせては こうして時折 
何とはなしに 人間たちの世界へとやって来ていた

人間は不浄。
好戦的で、野蛮
力あるものにはひれ伏し、弱きものは蹂躙する
ほんの短い生涯なのに、呆れるばかりの悲しい歴史を繰り返すのみ
人間は愚かな 救いようのない生き物・・・

物心付いた頃から 人間界は気が乱れ 穢れたものが多い 
因って近づいてはならない と事あるごとに教えられてきた。

だが、心身が成長し力もある程度ついてからは 長時間の滞在でなければ
体内の気の汚染など 特に気に止む事などないのだと判ったし
ほんの数十年の短い人生を 天空のほうき星のように駆けていく
人間の生命の力強さの魅力に 自分は惹かれているのだと知って
度々家令の眼を盗んでは 下界へと降りて来ていたのだった。

仙界と違って、幾分 力を使うのが不自由だったけれど
それを補って余りある 気を増幅させる飾り玉を腰紐にぶら下げていれば
何不自由なく過ごす事が出来たから 家令の小言を避けて 飛び出した時、
迷うことなく 気に入りの人間界へ足を向けようとすぐに思ったくらいだ

さて今日はどんな事をしようか?

身を隠して 市場の親父をからかうのも楽しかった
古書を扱う店では大変面白い 読み物も置いてあったから
続きを見るのも興味深い
そんな事を考えてみれば、若者は心が浮き立ってきて
先ほどまでの鬱々とした気分は何処かへ行ってしまったようだ。
知らず、口端が持ち上がりこれから起こる出来事を
想像して自分が今 風を操っている事にすら うわの空になってしまっていた


≪わが君!気流が乱れまする!! ≫

突然 眷属である風たちがざわめき お気を付け召されませ と
注進してくれたにも関わらず 若者の虚をついて 
一陣のつむじ風が操る 風の束に絡みついた

「――っ!!しくじったか?」

ぐらりと 身体の平衡を崩し急転直下 
頭を下にして ぐんぐんと高度が下がっていく

慌てれば慌てるほど気が乱れて 上手く風に乗る事が出来ない
誉れ高き名門の 御曹司らしく無く ただジタバタと 
無様に両手足を動かす自分が ひどく自尊心を傷つけられて情けなかった

風を司る朱雀の長の息子が 
風に乗りそこなったと知れたなら とんだ醜聞だ 
こんな事が知れたなら 仙界みなの恰好の笑いの種になるに違いない
朱雀一族の高い矜持が それだけは 絶対に避けたいと
青年・・西園寺郁は歯ぎしりをした。

だがしかし無情にも 身体はキリもみを繰り返して
着々と地上に近くなるばかりだった。





「先生――――――!!」
「ちょ・・・ちょっと待って・・・」

小さな子供たちにぐいぐいと 袖口を引っ張られ 前へつんのめりそうに
なりながら案内されてみれば

「ね?お空から天女様が落ちて来たよ?」

「・・・―――――へっ??」

蕩ける様な白い肌 
高い鼻梁に 艶やかなバラ色の唇
整った眉に 細い顎
柔らかそうな 薄桃色の髪 
長い長いまつ毛に縁取られた瞳を開いたなら
そこにはどんな美しい色が湛えられているのか



「・・・・・・ふぁあ・・・・」

我ながら素っ頓狂な声を上げたものだと自覚して 恥ずかしさに
思わず口許に手をやった。
だが 声を出さずにいられないほどに その人は美しかったのだ

教え子たちに空から人が落ちて来たと言われて
まんまと騙された振りをしてやろうと面白半分に来てみれば
そこには本当に子供たちが言うように 人が・・・
天女が居たのだ

陽光を受け美しく身体全体が きらきらと輝いている
側にいるだけで眩しく感じられる人になど未だかつてあった事など無い

(・・・本当に・・天女様???・・・)

ごしごしと思わず目をこすって 確認してみたがどうやら
夢で無く本当にそこに存在しているようだ

「啓太先生・・お顔・・真っ赤~」
「?!―――――っ。」

ハッと気が付き 慌てて自分を叱咤する
何やってんだ??俺・・・

先ほどからピクリとも動かないその人は 
本当に空から落ちて来たのであれば 大変な怪我をしているかもしれない、
もしかすると命にかかわる程に重症なのかもしれないのに・・・・

「見とれている場合じゃないぞ!!」

啓太先生と子供たちに呼ばれるその若者は 子供たちにテキパキと指図して、
力を合わせて取りあえず 空から降って来た天女を
自分の家へと運んで介抱する事にしたようだった。






むふふ・・・西啓始めました・・・
冷やし中華始めました的な・・・(笑)
基本的に臣啓史上主義なので、上手く書けるか心配ですが
どのお話でも西園寺さんが全く報われておりませんので
このお話ではぜひとも幸せになって頂こうと思っております。

私の中ではヘヴンキャラ中 一番の漢前は 何を隠そう
西園寺郁その人なのでーす!!


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