ええ。小心者ですから・・・。

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悠遠夜話・番外編


悠遠夜話・番外編~西園寺さんの初恋~その2

2010.06.01  *Edit 
▽TB[0]▽CO[0]


痛い・・・。

腰も 尻も 足も・・・。
どこもかしこも ズキズキと痛い・・・。

それに何だかエラク・・・埃っぽいぞ・・・。


「―――っくしゅ!!」

「あ?目が覚めましたか?」

埃っぽさに鼻がむずむずとして くしゃみを一つしてみれば
そこには晴れ渡った 五月の空の様な青があった

「どこか、痛むところはありますか?」

眉根を寄せて 心配そうに覗きこむ茶色の癖っ毛 
眼の色は空色。
年は・・・・
見てくれだけなら、自分とそう変わらないだろう
未だ少年らしさを残した若者が自分をそっと覗きこんでいた。

「ここは?」

問いながら さっきまでの出来事と
今起こっているこの事態との擦り合わせを開始した

そうだ、やっぱり自分は風に乗り損ねて 人間界に落下してしまったのだ
体勢を立て直し損ねて、結局被害を最小限に食い止めるべく
風の壁を 身の下に作る事しか出来なかった

それにしても、何と言う体たらく・・・とんだ失態だ。

ぐるりと回りを見回せば 実に質素な作りの家で 
寝かせられている布団も お世辞にも衛生的とは言えなかったし
何より がらんとした何もない風景は いっそのこと見事だった

おそらく自分は貧民層の簡素な造りの住宅街へと
落下したに違いないとあたりを付け
富裕層の頑健な家屋へと落下した事を考えたなら 
これくらいの怪我で済んだ事が 全く不幸中の幸いだったと冷や汗をかいた 

早く、治癒の力を使って傷を癒し、一刻も早く此処から出て行こう
人間とあまり深く関わって これ以上の厄介事になる事だけは 御免被りたかった
醜聞をさらに増やさない為にも、猶予はならないのだ


むくり・・
と上体を起こして見れば きしみを上げる身体中に想像以上の痛みを覚える
かなり酷い打ち身らしいが 骨などは折れてはいないようだ。
手っ取り早く治癒の力を使おうと腰のあたりをまさぐってから、
はたとあるべき所にあるべき物が無い事に気が付く

「?・・・無い・・・。」

人間界では気が乱れていて 力が上手く使えなかったから
気を増幅させる飾り玉を腰紐にぶら下げていた筈なのに

・・・・・・なのに・・・ない 

「―――っ貴様!!さっさと飾り玉を出せ!」

頭にかっと血が上り 柳眉を逆立てて 腕を伸ばすと
近くにいた人間の若者の胸倉をむんずと掴んで 
ぐいぐいと締め上げて 飾り玉の返却を求めた

「え??ええ??あの・・何??」

突然の盗っ人呼ばわりに 戸惑う人間の若者の着物を掴んだまま 
ブンブンと左右に振って見るが 
中々飾り玉のありかを吐こうとしない事に 焦りと腹立たしさが募る

人間の分際で・・ と尚も首元を締め付けてやろうかと腕に力を込めたその時

「こら―――!!啓太先生をいじめるなあ―――!!」

と 何処からか湧いて出たのか
小さな子どもたちがわらわらと まろぶように入ってきて
ひな鳥の様な可愛らしい手や足で 容赦なくびしばしと 
薄桃色の髪を持つ若者を 攻撃してきたのだ

「っつつ!!こらっ!!止めんか!!・・痛っ」

ほんの小さな人間の子供を まさか振り払う事も出来ないまま
髪や頬を引っ張られたり 噛みつかれたりと散々な扱いを身に受ける
どうやら 若者の命令になど従う気は更々無いらしい
一致団結して ちいさな手足から遠慮なく繰り出される攻撃は 
打ち身だらけの細い身体には カナリ堪えた

「うわわっ!!こらこら!!みんな止めなさい!!」

子供たちの攻撃に気を取られていて すっかりと緩んだ腕から
逃れた人間の若者は 砂糖菓子に群がる蟻の子たちのようになっている
子供たちを認めると 先ほどまで 痛みに眉をしかめて床についていた美しい人から
一人づつ子供たちを 慌てて引き離しにかかる

「え――!?なんでえ?こいつ啓太先生をいじめた!!」

「そうだ!そうだー!助けてやったのに、いじめたー!!」

「天女様なのに 乱暴―――!!!!」

子供たちはみな不満げに一斉に口を尖らせ 若者の不義理を非難し始めるのだ

「もう・・・大丈夫だから・・ね?あっちで遊んでおいで?」

 無理やり戸外へ追いやられて渋々と了承し出て行こうとするが
まだ腹正しさが収まらないのか んベ~!!!と舌を出して
悪態を付く者まで出る始末
その様子にこら!と小さくたしなめて若者は振り返り
苦笑いをしながら 子供たちの無礼を詫びた

「すみません。大丈夫でしたか?」

子供たちに馬乗りにされ 床に無様に倒れていた若者は 引きちぎられた髪も
引っ張られて少し赤くなってしまった頬もそのままに茫然としていた 
そっと背中に手を添え 空色の瞳をもつ啓太と呼ばれていた人間の若者に
その身を起こされると ようやく我に返ったようだった。

「いや・・・こちらこそすまなかった・・・」

ばつが悪そうにぺこりと頭を下げる

おそらく この人間が知らないと言っている事は嘘ではないのだろう
よくよく見てみれば 自分の衣は泥だらけで腰紐は強く引きちぎれたような跡がある
冷静に分析してみれば 落下した衝撃で切れて
どこかに落ちてしまったのだろうと直ぐに気が付いても良い筈なのに

・・・全く・・・
知将よ 悟性の朱雀よ 
とチヤホヤされて いい気になっていた自分が恥ずかしい

それに、身体中に塗られている塗薬や包帯が手厚い看護を
この身にしてくれた事を教えてくれていたし 
驚いた事に目の前にいるこの人間からは 一切の邪気が感じられなかった。
近頃の人間には滅多に見られないほどの 清浄な気の持ち主だったのだ
気を見れば 人となりが知れるというものなのに・・・

ほとほと自分に呆れる。未熟にも程があるではないか
おそらく、風を操り切れなかったのも精進が足りないせいだ。
自分の至らなさを棚に上げて 他人を責めるとは 

はあああああ・・・。

秀麗な姿に全くもって似合わない
深い 陰気なため息を付く姿を見て
人間の若者は慌てて 俯いている薄桃色の髪の若者へと近づいた

「あの・・どこか痛みますか??」

「?ああ・・・いや・・大事ない・・・」

そうですか・・良かったです・・・とほっとした様な表情を浮かべると
立ち上がり 予め用意していたらしい粥らしきものを盆に載せ運んできた

「どうぞ・・お口に合うかどうかわかりませんが
・・ずっと眠ってたから・・・お腹空いてませんか?」
器をそっと西園寺の目の前に差し出てきた

成行きのまま 受け取ったはいいが、自分は仙界の住人だ
もともと自然界の気を身体に取り込んで力としていたから 
特に食べ物を口にする必要はない だから腹が減るという感覚も別になかった
仙人によっては丸きりの道楽で固形物を口にするものも多く居たが
自分が好んで口にしていたのは酒や果物が殆んどだったから

「・・・・。」

「あっ!えーと・・その・・こんな雑穀ばかりのおかゆ
              ・・召し上がった事ありませんよね??」

手に取ったまま 椀を睨みつける様に微動だにしない客人を見て
どう思ったのか 申し訳なさそうにぽりぽりと頬を掻きながら
すみません・・・こんなものしか無くて・・と渡した物をまた下げようと
そっと伸ばされた手に西園寺は制止をかけた

「いや・・・頂く。ありがとう」

礼を述べてから 上体をすくっと伸ばして姿勢を正し
長い脚を折り胡坐をかいてから床に座り直す
ゆったりと衣の袖先を脇にやり 
添えられていた匙で 口許にそっと粥が運ばれた

一挙手一投足 なんとも典雅なその様は 雑穀ばかりの水気の多い薄い粥を
まるで宮廷料理を賞味しているような錯覚を起こさせられて
大きな空色の眼を さらにまた大きく見開く啓太がそこにいた

ごくり・・・と白い喉が嚥下の為に上下に動くのを最後にして
ぽかんと口を開けてみていた啓太へ 凛とした声が掛る
粥を残すことなく 平らげた器と匙を静かに盆へ置くと 
こちらへ向き直り優雅に頭を下げた

「馳走になった。」

「あ!!いえいえ・・お粗末さまでした・・・」

自分の日常からは 遥かに離れた礼儀作法を見せつけられて 
いささか尻ごみをしてはいたが もともと楽天的な性格からか
興味はすぐに別の事へと移ったようだ

「えと・・・あの・・・ほんとに・・おとこの・・ひと・・ですよ・・ね?」

「!!!」

へへ・・と笑って純粋な興味を自分に向けている
大丈夫だ・・落ち着け・・・・この手の質問には慣れている
相手は人間じゃないか。
しかも 年端も行かない子供だ
・・・・・・だが・・・しかし・・・
一体全体 私のどこが女人に見えると云うのだ!!??・・
こめかみに青々と筋を立てながら がるるっと歯噛みして
精一杯の平常心をかき集めてみるが 
うまく取り繕えているかどうかは 知ったことではない

「・・・そうだ・・・生まれてこのかた、女人だった事は一度もないが?」

刺々しい低い声が返されて
美々しいその青年には全く似合わない 背後にゆらりと揺れる真っ黒な気配を感じる
いくら疎い啓太でも 生命の危険が身近に迫っていることに容易に察しがついた

「あの・・えと・・それなら・・よかった・・・あんまり綺麗だったから・・・
                        女性の方かと思ってしまって・・すみません」

治療するときに 近所のおばさんを呼ぼうかどうか迷ったんですよねえ・・・
あ!!でもそんな 疾しい気持ちでなんか見てませんから!!ほんとです!!
それに 腕や足しか触ってませんし!!!

と大慌てて真っ赤になって 啓太は両手をぶんぶんと振り回し
自己の完全潔白を証明しようと躍起だ

赤くなったり青くなったりして 
大きな目をウルウルさせて必死になって訴える
そのさまは小動物のように大変愛らしい姿だった
 
「・・っぷ・・っはははは」

「??」

西園寺は 知らず声を立てて笑っている自分に 驚いた
本当にこの人間からは悪意が感じられない
その瞳の色と同じ 清々しい晴れ渡った空の様な 気

それに なんというか・・・・
その何とも柔らかそうな ふぁふぁの髪を両手で
わしわしと撫でくりまわしたい気分になってくる
この感情は・・・・
…そうだ・・・可愛らしい・・・というのがぴったりだな・・・

「ふふ・・・希少動物並だな・・・」

「??へ?」

くすくすと笑い続ける 目の前の麗人の初めての笑顔に
啓太の鼓動がどくどくと一足に速くなる 
眩しいほどのその笑顔に もはや まっすぐに顔を見ることさえ困難だった
会ったことはないけれど きっと天女が笑ったらこうなのかもしれないと
霞がかかりそうになる思考でうっとりと思いを馳せる

この人を女性に間違えるなという方が無理な話だ
いや・・女性よりはるかに美しいこの人は もしかすると子供たちが言うように
本当に天から降りてきた人なのかもしれない
それほどに 浮世離れした美しさと高貴さを持ち合わせている人だった



「あの・・えと 俺、伊藤 啓太って言います。どうぞ宜しく」

ふと思い立ったように啓太は 上気した頬のまま 前へ視線を戻すと
茶色の髪を ぺこりと下げてから 
にっこりと何とも朗らかな顔で 西園寺を見て微笑んだ

「ん?・・ああ。・・・私は西園寺・・・西園寺 郁だ。・・・・啓太」

あまりにも無邪気な微笑みに虚を突かれて 
別に適当に名乗っておけばよいものを 真名を言ってしまった自分に再度驚く
今日は本当に 吃驚する事ばかりが起きて目が回りそうだった

そう言えば・・・と思い出したとたんに 何だか身体中が痛くなってきた
力が思うように使えないと言うのは 何とも不便極まりないものだ

「―――つっ」

「あっ・・・未だ横になっていた方がいいです」

「いや・・・大した事はない・・」

こんな打ち身程度で 床に就くなど 紅の闘将の名が泣く
そう思って無理やりに立ち上がろうとすれば

いえいえ・・随分と酷い傷でしたからと またにこにこと微笑みかけられて
有無を言わせず掛け布で くるり・・と身体を覆われ 
床に就かせられてしまった

けして力を込めた動作ではない だが優しい拘束力を持った言葉に
知らず従ってしまう自分が不思議だった。

人間界で無防備に眠ることなど避けたかったが
きっとこの人間は 自分に危害を加えないだろうな と何の根拠もない
感覚だけで判断し ここは大人しく言われたとおりにするかとそのまま
じっとしている事にした。

「どうぞ・・ゆっくり眠って下さい・・」

優しく紡がれる言葉は ゆるゆると西園寺の目蓋を重くしていく
赤子にでもするように 掛け布の上からトントンと
一定の拍数で掌が 静かに打ちつけらて 
鼻歌で子守唄らしきものまで歌われ始めた

「・・・・・。」

なんだか 頑是ない小さな子供をあやす様で 酷く気恥ずかしい 
山より高い矜持が痛く刺激されたけれど 
穏やかで優しい歌声が なんだか段々と心地よくなって来て
中止を言いだせないまま 子守唄が静かに終わりを告げるのを
深く沈む意識の遠くで聞いていた

 

西園寺さん 啓太君と出会いました(>_<)

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