ええ。小心者ですから・・・。

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悠遠夜話・番外編


悠遠夜話・番外編~西園寺さんの初恋~その3

2010.06.04  *Edit 
▽TB[0]▽CO[0]

土ぼこりが上がる でこぼこした未完成な道は大層歩きにくかった

道の両側には 一続きになった屋根と 
所々土壁が落ちている家屋が ずっと続いていて 
整地されて順次 建設された住宅街ではないことは 
複雑に込み入った道が如実に証明してくれた。

「うっわ―――!!」

「おおお~」

「きゃあああ~」

「すっげ―――!!」

先ほどから同じような歓声が 両の道脇からあがっている
歓声と噂を聞きつけて わざわざ家屋のなかから
身を乗り出して覗き込むものも出る始末だ

啓太とその後ろへ立つ西園寺の周りには黒山の人だかりが出来上って
前進し辛いことこの上ない

「んもう・・・だーかーらー 違いますってば!!」

見世物じゃないんだから!!帰って!帰って!!
啓太は声を張り上げて 人だかりに解散を促しながら
とほほ・・・。と肩を落とした

先ほどからもう何度 同じことを繰り返せば気が済むんだろう・・・
朝から続く 質問と騒々しさにほとほと嫌気がさしていた。

きっと昨日のうちに 子供たちの口から 
長屋全部の住人たちに知れ渡ったに違いない
この恐るべき伝達力は本当に驚愕に値する
みな口々に 西園寺のこの世のものとは思えない高貴な美貌を褒め称え、
どこから来た女人なのか?とか 
どこかのお姫様なんじゃないか?とか
まったく啓太もすみに置けないなーなどと 
羨望と興味丸出しで集まってきているのだ


「よう!!啓太~ドえらい別嬪の嫁さん貰ったんだってえ??」

不意に啓太の目の前に影がかかる 
見上げるほどの大男が 親しげに声をかけてきたのだ

がははと笑って 巨躯を揺らした男はどうやら啓太を良く見知った者らしく
自分の立派な胸筋を誇るように
着物の上半身を肌蹴て浅黒い肌を外気に晒していた

「ち・・違います!!お客さんなんです!!」

ぶんぶんと音が出るほど首を横に振って 男の言葉を否定する

もう・・失礼ですよね・・すみません

と自分の後ろできょろきょろとあたりを物珍しそうに見回している 
薄桃色の長い髪をもつ若者に詫びを入れると 
若者は風に乱れた髪を片方の耳に 長い指でかき上げて
その美しい顔を大男の方に向けた

「うおっ!!」

一歩後ずさって 悲鳴に似た驚嘆の声を上げ 
眩しげに西園寺の顔を見るや否や 
ぼふっと 赤面した男がフルフルと震えている 
そしてやにわに啓太の細い肩をむんずと掴むと

「け・・啓太・・・気持ちはわかるが・・・くれぐれも壊さねえようにな・・」

耳元に小声で言ってから うんうんと頷いてみせ 
西園寺をちらりと見て にやり と意味ありげに笑った 
そうしてからすぐに 幸せにしてもらえー・・と後ろ手に手を振りながら
男の言葉にさっきから固まってしまっている啓太を置いて
大股でさっさと行ってしまった

ハッと気づき

「だっ!!だから違いますってば―――!!」

と 大声をあげて否定してみるも 男はずっと遠くへ行った後だった


「・・・啓太。もう いないぞ?」

ひゅう・・と風がほこりを巻き上げて寂しく吹き過ぎていく
どうやら心からの啓太の叫びは男には聞こえなかったようだ

「・・・たびたび・・本当に・・本当に・・すみません」

男や長屋のみんなの言った意味を 西園寺がどう解釈したか考えれば
冷や汗がだらだらと背中を流れる
自分が女性に間違った時だって なんだか殺気立っていた
きっと 間違われるのがものすごく嫌なんだ
それをお姫様だの 嫁だのって・・・・

うう・・・かなり怒ってるんだろうなあ・・・・どうしよう・・・

びくびくと背後に立つ西園寺を伺いみるが  
自分の後ろに立つ西園寺は 昨日と違って 別段怒っているそぶりは見せてはいない 
それどころか さっきから長屋の様子が気になるらしく
振り返ったり 覗き込んでみたりと実に忙しそうだ

もう何度も啓太の袖先を つんつんと引き 
細くて美しい指をさしながら あれこれ質問してくる

啓太にとっては ごく普通の物や出来事が
西園寺にとってはかなり物珍しく映っているらしい

どれだけお金持ちの家で育ったんだろう?と首をひねるほどに 
市井がまるでわかっていない
子供たちが空から降って来たというのは 到底信じられる事ではなかったから
きっとさぞかし大きな商家の出かなにかで 箱入り娘ならぬ 
箱入り息子として大切に育てられたんだろうなと啓太は想像を巡らせて 
本当に目の前に居る彼ならば充分にその可能性がありそうで
小さくくすりと笑ってしまった。

「何が可笑しい?」
「え?いえいえ別に」

変なやつだな・・・と言いながらも
瞳をキラキラと輝かせて まるで子供のように頷きながら
啓太の丁寧な話を一つも聞き漏らすまいと耳を澄ませている
そんな西園寺は とてもとても楽しそうだった



今は・・・・そんな彼ではあったけれど
今朝がた眼を覚ました折は なんだか
ものすごーく気だるげで辛そうだった 


だから啓太は 西園寺に不都合がなければ 
今日は一日この家で休んでいるようにと伝えると
布団の中からもそもそと身を起して おまえはどこかへ行くのかと問われた

打ち身ばかりとはいえ 西園寺を一人きり残すことが案じられて
今日の仕事は休もうかと思っていたところで
一度仕事場に行って休む旨を伝えてくるのだと言うと
もう大丈夫だから 仕事は休まずに自分もそこへ連れて行くようにと
かなり強引に押し切られてしまった。

そこで二人は先ほどの大騒動に巻き込まれた次第なのであった。


「西園寺さん!・・ここ!・・ここです。」

適当に腰かけて 待っていてくださいと 言われるや否や
啓太の周りに子供たちが大勢走ってきた

「せんせー!」
「啓太せんせー!!」
ぎゅうぎゅうと纏わりつかれても嫌な顔ひとつせずにこにこと微笑む 
目線を合わせて屈み 
子供たち一人ひとり名前を呼んで優しく頭を撫でていく

そんな啓太の邪魔にならないよう西園寺は 
部屋の隅の方の壁にもたれて ゆったりと座り
片方の膝へ頬杖をつきながら 子供たちの中でくるくると
その大きな空色の瞳が輝く様子を じっと眺めていた

どうやらここは学問を教える所のようだ
・・・教える所のようだ・・・
というのは学校と言うには余りにも設備がなさすぎたし、
年がばらばらの子供たちが一つ箇所で
本当に初歩的な読み書きを 習っているに過ぎなかったのだ
啓太はここの教鞭をとっているらしい

筆で上手く字が書けず 泣き出してしまった子供の鼻を拭いてやったり
喧嘩を始めた 男の子たちの仲裁をしたり
あちらからも、こちらからも 先生! せんせー!と
元気な声があがり てんてこ舞いだ 
だがどんなに 子供たちが騒ぎ 身に纏わりついても
啓太のまなざしは変わらずに 全てを包み込む様だった

ふふ・・・まるで 子守りだな・・・

そうだ・・・子守唄を唄いながら自分を 寝かしつけてくれた時も
あんな瞳をしてくれていた

身元の知れない不審極まりない自分を 助けて家に上げてくれた
聞きたい事は山ほどあるだろうに
啓太はよそ者である西園寺の事を何一つ 詮索しない
自分が付いた悪態にも嫌な顔一つせず ただ笑っていた
優しく、愛情あふれる それはまるで慈悲の瞳

・・・本当に 希少性の高い奴だな・・・

ふと 啓太が凝視する西園寺の視線に気が付いたのか 
子供達から顔を上げると こちらを向いて唐突ににっこりとほほ笑んだ


「/////////////っ・・・・」

とくん。と一つ 胸が波打つ
な・・・なんだ??今のは・・・

何故 私を見て 微笑む???
何か 可笑しかったのだろうか

どこも おかしい所が無いかどうか確認するべく 西園寺はわたわたと
壁から身体を起こし 着物の襟もとの合わせなどを直して
居住まいを正したりしてみた
だがしかし 自分の着衣にさして乱れた所も無い事を知ると
啓太の視線にどうしていいか判らなくなって ついには
ぷい・・・とそっぽを向いてしまった

明後日の方を向いてしまった西園寺を見て
啓太は「?」と不思議な顔を一瞬だけしたが すぐにぐいぐいと衣の裾を
引っ張られて 身体ごとそちらへ向き直してしまい
また 子供たちの輪の中へ戻ってしまったようだ

「・―――ぁ・・・」

何故だろう
どうしてだか とても腹が立つ・・・

否・・・腹が立つ・・ とも違うような気がする
下腹がもやもやとして 澱が溜まっていく様なとても嫌な気分だ

人間界に居るせいで 体内の気が乱れ 
精神が不安定になっているのかも知れないな・・・

そうだ・・きっとそうに違いない

西園寺は自分の心のうちに生まれた 小さい小さいさざ波の様な
名前も知らない痛みに 気づかないふりを決め込んだ



「啓太せんせー!!たいへん!!」
ガタガタと大きな音を立てて 飛ばす勢いで開けられた戸口に
一斉に 部屋に居た子供たちが振り返った 

「どうしたの!?」
ただ事で無いその様子に 啓太は早口で問い
戸口に立ち 未だぜいぜいと息を切らせている教え子に駆け寄った

「ま・・また・・やつらが・・・嫌がらせに・・きてる・・」

途切れ途切れではあるが 確実に事実を聞き出した啓太は
すぐさま後ろを振り返り 西園寺にここを動かないよう告げると
幾分青ざめた硬い表情で 今 子供が入って来た戸口から
一人飛び出して行ってしまった。

「―――――啓太!!」 
おい!どこへ?!
叫んだ西園寺の声は全く聞こえていないようだった




何やら事件のようです・・・((+_+))

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