ええ。小心者ですから・・・。

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悠遠夜話・番外編


悠遠夜話・番外編~西園寺さんの初恋~その6

2010.06.18  *Edit 
▽TB[0]▽CO[0]

「これは・・・一体・・・」
西園寺は 茫然と啓太の家が確かに建っていた筈の場所で立ち尽くした
そこにはほぼ全壊と言っていいほど 滅茶苦茶にされた啓太の家が 
材木と土とその他雑多な物になった建材がこんもりと 山を作っていたのだ。

何が・・あったと言うのだ??
啓太は?

ただの残骸になり果てた材木の山に あの啓太のまぶしい笑顔が重なる
頭が混乱して、ひどく喉が渇く 
今までこんなにうろたえた事があっただろうか
びりびりとした緊張感が熱を帯びて 西園寺の身体を包み込む
熱量があがり陽炎がゆら・・とあがりだした
その緊張が臨界に達する前に 後ろからやけに間延びした
呑気な声が掛けられた

「ありゃ~?啓太んとこの別嬪さんじゃね~か~?」

頭の上から声が降り はっと西園寺が我に返ると 
横に飛び去りながら 直ぐ様後ろを振り向いた

「あんたは大丈夫だったんだな?よかったなぁ」

人懐こそうな眼がきょろきょろ動いて西園寺を気遣うそぶりを見せるから
よくよく見てみれば 長屋で啓太をからかっていた大男だった。

「何があった?・・・啓太はどこだ!!」

男はどうやら 啓太の家を修繕に来たらしく
使えそうな建材を足でひっくり返し 見つくろっている

「あ~あんた啓太と一緒じゃ無かったのか~?」

どっこいしょ・・と肩から
箱に山盛りになった大工道具を地面に下ろし ぽんぽんと腰を叩いて
ゆらりと煙管を口端に揺らす。
なかなか核心に行きつかないその様子に焦れた西園寺は 
見上げるような男の胸倉に掴みかかって
家が全壊してしまった訳と 啓太の居場所を問い詰め始めた。

てっきり女だと思っていた人間に胸倉をキツク締め付けられて
物凄い剣幕で 脅迫まがいに詰問された男は大層驚いた様子で
眼を白黒させながらも、いきさつを説明してくれた。

「ここいらはさ~地主に土地借りて長屋を建ててんのよ。
ところがさ、ここに王様の離宮を建てる事になったみたいでさ~。
俺ら貧乏人は邪魔な訳。結構前から立ち退きの嫌がらせされてるんだよなあ」

ほら?あんたもこの前 啓太と一緒に逃げ回っただろ?アレだよ!アレ!!
全く・・俺ら貧乏人はどこに住めってんだよ~
と男が木材を蹴飛ばしながらぶつくさと言う

あの時のならず者たちは 立ち退きの嫌がらせに来た輩だったのか

西園寺はふと二人して逃げた時の事を思い出していた。
啓太はやつらの事については全く何も話してはいなかった
一瞬、そんなに自分は頼り無げだろうか?
と酷く落ち込みそうになったが よくよく考えてみれば 
完全に部外者である自分に迷惑をかけたくなかったんだろうと
言う考えにたどり着く。
自分が知る限りの啓太なら 完全に後者の考えしか
しないのではないだろうかと思い 知らずぎゅっと胸が苦しくなる

おまえらしいな・・啓太
叶うなら、お前の心を苦しめる全てのものから守ってやりたい
おまえが いつも笑顔で居られるなら 私はどんな事でもしよう

誰かの為に何かをしたいなどと 思った事はない
一族の繁栄と人心を掌握する学問も 全ては己が為だ 

こんな気持ちにさせられたのは 啓太ただ一人だった

啓太
啓太 お前に会って確かめたい事がある
早くおまえに 会いたい

「啓太は・・今どこに居る?」

「ああ。学問所の方に避難してるぜ~。無事だから安心しな」

「そうか・・良かった。礼を言う」
大変威圧的な物言いであったにも拘らず 凛と背筋を伸ばした姿勢で
礼を述べる西園寺は高貴な威厳に満ち溢れていて 
見るものが見れば 知らず膝を折り 頭を垂れたくなる衝動に駆られる 
生まれてこのかたそんな感情など 持った事も無い男は
ただぽかんと呆気にとられて コクコクと頷くしか出来なかった。


カーン!
カーン!
カーン!!
男に礼を言って 踵を返しかけた西園寺だったが
突然、長屋のほぼ中央に作られた櫓の上から 
けたたましい半鐘の音が辺りに響き渡るのを聞いて 眉根を寄せた

「?・・東で 火事か?」

なんだ?
皮膚がちりちりと痛んで 全身が総毛立つ

何故だかとても嫌な胸騒ぎがする
学問所は確か 東の方角だったはずだ

 「啓太!!」

「あれ?え?!ええええええ?!」
男が振り返った時にはもう 西園寺の身体は風と共に掻き消えてしまっていた。



「せんせ~怖いよう~」
「大丈夫・・・大丈夫だから」

ごほごほと咳き込みながらも 足元で泣きじゃくる子供を庇いながら歩く
出口は前なのか?後ろなのか?
自分たちが今どこに居るのかさえわからないまま啓太は煙の中を進んでいた

もくもくと立ち込める煙が視界を隔てて じくじくと眼や喉を刺激するから
さっきから 咳も涙も止まらない
このまま死んでしまうのではないかと何度もくじけそうになる
自分の心を叱咤する事も そろそろ限界に近付いてきていた。
歩いても歩いても 目の前は開けてくれない

あのならず者たちは なかなか立ち退こうとしない
貧乏長屋に腹を立てて ついに火を放ったようだった

粗末な木材は皮肉なことに大変良く燃えて 火のまわりが異常なほど早かった
逃げ遅れた子供を一人助けようと 長屋の住人が止めるのを振り切って
火の中に入り 子供を見つけたまでは良かった
だがしかし 今完全に煙に追われて逃げまどいどこを歩いているのか
判らなくなってしまっている。

いつだってそうだ。
何も考えなしで飛び出して 後からひどく後悔するのだ。
悪い癖だと思っていても 子供の事が心配で
どうしても じっとしていられなかったのだ。

ぱちぱちと火が爆ぜる音がすぐ近くまで聞こえて来ている
どうやら すっかりと火に囲まれたらしかった。

(この子だけでも逃がさなきゃ・・・)
でなければ 本末転倒だ。自分が助けに来た意味がない。
衣の袂で煙から子供を庇いながらきょろきょろと辺りを見渡すと 
すでに倒れてしまっている家の柱の陰から 向こう側が辛うじて見える
子供の身体ならきっと 抜け出せる隙間だ

「ほら!きっとあそこから出られる。がんばって!」

啓太は子供を抱え上げて その隙間に強引に押しこんだ
幸いにも その隙間から上手く子供は向こう側へと出られたようだ
隙間から手をひらひらと出して 中々動こうとしない教え子を追いやる様に催促する

「さあ!!早く逃げて!」

「で・・でも・・せんせいが・・・」

「大丈夫!先生は自分で何とかするから!だから早く逃げて!」

隙間の向こう側で啓太を心配して座り込む子供に 
出来る限り精いっぱいの笑顔を向けて安心させ 早く逃げる様に急かした。
それでも動こうとしない子供に

「そうだ・・ねえ。誰か助けを呼んできて!そうすれば先生此処から出られるから」
と諭すように優しく言う 
この僅かな隙間からでは いくら細身とはいえ大人の自分は到底出る事は叶わない
さっきから煙の勢いも増して来た。もう炎は近くまで来ているはずだから
ここも じき、崩れてしまうんだろう。
だったら子供だけでも この場から少しでも離さないといけない。
長屋の人がこの子を早く見つけてくれる事を願って。

「さあ!早く!行って!!」

ぅ・・うん・・と子供は 泣きながら言われたとおり
助けを求めに 覚束ない足取りで懸命に走り去って行った
その様子を隙間から見送った啓太は ほっとして
また辺りをしきりに見渡して どこか逃られる道はないか 確認し始めた

こんな所で死ぬわけにはいかない
自分には未だやりたい事が沢山あるのに
生きて 学んで、みんなに今までの恩返しをしなければいけないのに
こんな事で 終わるわけにはいかないのに

「―――。ごふっっ!!ごふっ・・」

もうもうと立ち込める煙に また咳き込んだ拍子に足元がふらつき
もたれ掛かった 啓太の背後の材木がぐらりと揺れる

「!!!」

ゆっくりと 
ゆっくりと
自分の目の前に 火の粉をはらんだ家の柱が倒れかかってくるのが見える
それは酷く 遅い動きで啓太の眼に見えて

(――――――。西園寺・・さ・・ん)

何故だろう
ほんの少し一緒に居ただけの 美しい人が心に浮かんで
自分を見つめて笑った あの宝玉の様な翠色の瞳を思い出した




「啓太!啓太!返事をしろ!!」

轟々と鳴る風が 天を焦がす紅蓮の炎を従える

人間界では力を増幅させる飾り玉の力をもってしても 
力を上手く制御出来なかったから 本来自分の眷属であるはずの
炎を抑え込むのに 相当の力を使っている

朱雀族がこの程度の炎を操り切れないとは・・・
屈辱感に歯ぎしりをして 西園寺の眉間に深く皺が刻まれた

「くそっ!!退かんか!!この馬鹿者め!!」

爆ぜる炎が壁となり柱となって 唸りを上げて両壁を作り
西園寺の行く手に辛うじて 道が出来るが 
僅かでも集中力を欠けば 獣の様な咆哮をあげて
主の命に背き 襲いかかる機会を今か今かと伺っているようだ

さっきから 最大限に力を使い過ぎて指先が震え 
西園寺の額には脂汗が玉を結んでしたたり落ちて来ていた

あと一体どれだけこうしていられるのか・・・。
その前に何としてでも 啓太を見つけなければならない
僅かでも 自分の事を呼んでくれれば すぐに判るのに
一向に啓太の声は聞こえてこない

人間界での力の放出は 仙界の掟で硬く禁じられていて
禁を破ったものには厳重な処罰が科せられる
如何な理由が存在するとしても
人間に仙人が干渉してはならないのだ

だが西園寺にはそんな事は どうでも良かった
人間は 酷くもろい
僅かばかりの 熱と熱さで死に至る
あの啓太を失う事を考えれば 
この自分の身から何を奪われようと構わなかった

啓太
啓太 どこに居る 私の名を呼べ
啓太・・・
―――頼む・・・生きていてくれ!

(・・・さいぉ・・んじ・・さん・・・・)

「!!!!」

微かではあるが 西園寺の耳に今 確かに啓太の声が風によって運ばれた


「啓太!!そこか!!」

奥歯をぎりりと噛みしめて 渾身の念を指先に込める
西園寺の細くしなやかな指先から 火の粉のような血しぶきがあがった

「・・・つ!!!」

もう 西園寺の身体全てに限界が近づいている
失敗は絶対に許されない
あと一度 あともう一度だけ 大きく力を放出したいのだ

啓太・・・。

激痛に顔を歪めながらも 
集中力を高め眷属たちを押さえ付ける言葉を 悲鳴のように紡ぐ

「―――炎よ!!!かしづけ!!風よ!!!跪け!!!!」

一瞬 眼が潰れるほどの強い光が 柱の様に天まで伸び
大地を揺るがす地鳴りと共に びりびりとした衝撃波が辺り一帯を揺らした
 
爆発的な力に耐えきれない簡素な造りの建物と
火柱を上げて燃え盛る炎の全てを 突風がきれいさっぱり天空高く巻き上げた

「啓太!!」

翠色の瞳の端に ようやく探し求めていた人の姿を捉えて
風の塊が宙空高く軽々と舞い上げられた 啓太の身体を柔らかく受け止めて
主である西園寺の元へ ゆっくりと運んだ

「啓太!しっかりしろ!!」

西園寺はふらつく自分の両足を叱咤して 空からふわふわと降ってくる
大切な少年を 両腕を大きく広げてその腕にそっと受け止めた
四肢を弛緩させ ぐったりとしている啓太に慌てて治癒の力を施す

大丈夫・・・命の泉はまだ枯れてはいない。
私の命に代えても おまえは死なせはしない


「・・・啓太・・」
「・・・西園寺・・さ・・」
土気色をしていた 皮膚が徐々に西園寺の腕の中で温かさを取り戻して行く
ゆっくりと 瞳が開かれて西園寺が求めて止まなかった空色がそこにあった

「啓太。啓太・・・良かった・・本当に・・」

ぎゅうぎゅうと啓太を抱きしめて 頬ずりを何度も繰り返す
欲しかったものはやはり これだったんだと漫然とした思いが確信へと変わる

「西・・園寺さん・・・」
「ん?どうした?どこか痛むか?」 

まだまだ足りなかったけれど少しだけ 抱きしめる腕の力を緩めて 
甘やかな瞳で 何かを訴える腕の中の啓太の顔を覗きこんだ

「顔・・・まっくろ・・・です・・大丈夫ですか?」

西園寺に柔らかく抱きこまれたまま 
啓太はそっと片方の手を伸ばして優しく頬に触れてそう言うのだ

「・・・。」
・・・何を言い出すかと思えば おまえは・・・

西園寺は翠玉の眼を大きく見開いたまま 閉口してしまった
確かに言われてみれば 衣も顔も墨や灰でうす汚れてボロボロだ
風に美しくなびいていた長い髪も 少し焼け焦げ縮れてしまって
誇り高き大一族の御曹司の見る影さえもない

だがしかし今は いくら西園寺の治癒を受けたとはいえ啓太は瀕死の状態だった
他人の事を案じている場合ではないと言うのに・・・
本当に啓太らしい・・・
ふふ。
と西園寺は小さく笑い

「・・・馬鹿者が・・良いんだこんなの・・・」

良いんだ・・・ともう一度囁くように言って 
羽根の様に触れてくる優しい手の上から 自分の手を重ね合わせて
あんなに会いたくて堪らなかった空の色を見つめた 

ゆっくりとその秀麗な顔を近づけ 鼻先と鼻先をくっ付けたまま 
吐息のように優しくはあるが ゆるぎない確定を持った言葉を啓太に贈る

「啓太 私のモノになれ。嫌は聞かんぞ・・・」

「・・さい・・おんじ・・さん?」

「もう決めた。おまえを連れていく。ずっと私の側に居ろ」

驚く啓太をまるっと無視して 西園寺はさっさと
その柔らかそうな唇を塞いでしまった。

「!!!」

啓太の歯列をこじ開けて ぬめった感触が口腔内を這いまわる。

「・・ん・・んぅ」

脳髄が痺れる様な感覚に陥って きゅっと眼をつぶった啓太の身体中から力が抜ける
上手く息が出来なくて 苦しくなるけれど
ふわふわしてなんだかとても 気持ちが良い
身体全部が心臓になったみたいに どくんどくんと脈打って
その音と速さに目眩がしてくるようだ

(・・桃の花の・・・いい匂い・・・・)
いつか嗅いだ衣の移り香に 今 全身を包まれて
啓太は西園寺のされるがままになるしかなかった。

散々 啓太の唇を舐めたり、吸ったりして心行くまで堪能した西園寺は
すっかりと赤く充血したそこを なおも名残惜しげにぺろりと一舐めすると 
やっとその唇を解放した 
額を寄せたまま まだ視点が定まっていない啓太の瞳を面白そうに覗きこんで言う

「・・・何だ?足りないのか?」

「/////////////////////・・・・・。」 

ち・・・違いますっ・・・・・と蚊の鳴く程の声で言って
真っ赤になった啓太は ぷいとそっぽをむいてしまった

くすくすと啓太の耳元すぐ近くに 小さな笑い声が漏れ聞こえて
顎にしなやかな指が掛けられる 
指に力が込められて 強引にまた西園寺の方を向かせられ
空色の瞳と翠色の瞳とが ぶつかった

「啓太。私から眼を逸らす事は許さん。ずっと私を・・・私だけを見つめていろ」

指先で固定されたまま見上げた西園寺の顔は
言葉の強さとは裏腹に 翠色の瞳が不安げに揺れていた

それにすぐ気が付いた啓太は西園寺の衣を強く握りしめた 

顔を上げ真っ直ぐに その翠の美しい瞳を見上げたまま 
いつか二人で見上げた空の様に澄んだ瞳で にこりと微笑む
 
そうしてから
はい・・と確かに強く頷いて
そっと 西園寺の胸に顔をうずめた。






:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「西園寺さーん!!」

だいぶ遠くから駆けてくる 足音が聞こえる
そんなに急いだら 躓いてしまうだろうに。
気が気でなくなって そっと読んでいた書物を石造りの机の上に置き 
真下に広がる桃園に目線を移動させた。

「西・・園寺さ・・ん!!芽が・・芽が出ま・・した~!!」

はあはあと 息せききったまま一気に
目の前の麗人に臆することなく要件を伝える

あの長い階段をずっと走って来たのだろうか?
茶色のふわふわの髪が乱れて あちこち向き放題だ

くす・・と吐息だけで笑って 
西園寺は愛しくて堪らないその姿を頬杖をついたまま
蕩ける様な瞳で見つめる。

「良かったな 啓太。上手くいきそうか?」

「はい!!ありがとうございます!」

にっこりと 本当に嬉しそうに微笑むから 
ついこちらまでも嬉しくなってしまう

「私は何もしていない。努力したのは啓太だ」

「いいえ!俺一人じゃ何にも判りませんでした。西園寺さんのお陰です!!」

ぶんぶんと両手を振って
むきになる姿がまた可愛らしいと思ってしまう自分は
相当に色惚けしてしまっているのだろうか

誰に何と言われてもいい・・・
こうして手を伸ばせば 触れられる距離に愛する者が居る 
声を掛ければすぐに 愛しいものから答えが返ってくると言う事は
何と甘美で 何と幸せな事だろうか

今なら全てを投げ捨てて 愛しい者の元へと走って行った
あの銀髪の幼馴染の気持ちが良く判る

悔しいが本当に今回ばかりは あの家令に頭が上がらない事づくしだ
また あの年寄りをつけあがらせる事になるとは 
やれやれ・・・なかなか厄介な事になったものだ



あれから啓太は西園寺のもとで 仙界の技術や学問を多く学び
干ばつや冷害に強い穀物や より多く実のなる果樹の栽培の研究に傾倒していた
何度も失敗を繰り返して ようやく今日その種が芽を出したのだ

よほど嬉しかったのだろう 研究所のある温室から西園寺がいる
この丘の上の東屋まで 駆け通して報告に来たのだ 

真っ直ぐに自分を見つめる啓太の瞳と心が堪らなく愛しい
西園寺はふと思い立ってにやりと笑うと
啓太に一つ提案をしてきた

「そうか・・なら褒美をもらおうか?」

優美に立ち上がり 啓太の腕をグイと引っ張ると自分の膝に
軽々と啓太を乗せてしまった

「ちょ・・!さ・・西園寺さん!!」

真っ赤になって足をばたつかせ どうにかこの体制から逃れようとするが
仙界に戻ってからの西園寺は 
その細い体のどこにそんな力が秘められているのか
と思うほどに 啓太を難なく扱うのだ

「・・・少しは私も構え・・つまらん」

少しだけ据わった翠色の眼が怖い
どうやら 研究に掛り切りだった啓太の事を非難しているらしい

「あ・・あの・・じゃあ先にお茶の用意を!!」

なんとか 身体を捻ってその膝の上からすり抜ける事に成功した啓太は
そそくさと茶器の用意をする為に階段へと向かった・・・が
何故か 宙で足が絡め取られてふわふわと 西園寺の元へ引き戻されてしまっていた

ぽてり・・
と長椅子の上に落とされて 綺麗に腰掛ける形になった啓太の上に
西園寺が待ちかねたように 妖艶に笑ってゆっくりと覆いかぶさる

「私の許しなく 側を離れる事は許さんぞ?・・・啓太」

おどけた様子の西園寺は 片眼を閉じながら小さく笑っている
どんな顔をしていても この人は本当に美しいんだ・・・と見とれているすきに
さっさと衣の袷に手を突っ込まれて 大きく肌蹴られそうになってから 
啓太がハッとして大騒ぎを始めた

「さ・・西園寺さん!!ずるいです!!今 力使ったでしょ~!!!」

さて・・どうだったかな・・・と
五月蠅そうにしながらも 緩む口元が抑えられない

「ちょ・・待って下さい!!」

「嫌だ・・」

「さ・・西園寺さ~ん」

「黙れ 無粋なやつだな。好きにさせろ」

するすると 遠慮もせずに衣の奥に隠された
西園寺しか眼にすることが許されていない 
まぶしいほどの白い肌が陽の光に晒される

穏やかな春の光の中 緑陰の東屋の中で西園寺の唇が
啓太の喉へ落ちるその時

「・・や・・やですっ・・」

羞恥に顔を真っ赤にさせて 啓太が首を横にふるふるとする

「嫌・・・か?」

首筋からゆっくりと 触れるか触れないかの位置で
啓太の気持ちを確認する為に 西園寺の唇が動くが
皮膚へは全く触れてはいない筈なのに ぞくりと背筋を何かが這いあがってゆく
そこを中心にして熱が波紋のように 啓太の身体中へと広がって行った

「ん?啓太・・嫌か?」

もう一度問いながら ぺろり・・・と
我慢しきれなくなった西園寺の舌が白くて細い首筋に這わされた

「・・・・・んあぁ・・・や・・です・・・」

啓太は ぴくん・・と身体を跳ねさせ 頬を上気させたまま
上に覆いかぶさる 西園寺をなんとか睨みつけるが
上目使いに潤んだ瞳で見上げられしまっては 
これ以上ないほどに西園寺の雄が刺激され 単に熱が煽られるだけだった 

まったく・・・無自覚にも程がある

ふう。
と一つ深呼吸をして
仕方ないな・・・と残念そうにさっき 寛げたばかりの
袷を直そうときつめに衣を引く

大切な啓太の真珠の様な肌を誰かの眼に晒すなんて
想像するだけでも 腹立たしいくらいだ

腕の中の啓太の事を好きにしたいのは山々だが
嫌がるのを強引に抱くほど 野暮でもない
ひとつここは 諦めるしかないんだろうと
両肩で盛大にため息をついて 気を紛らわせてみる

西園寺の下で さっきからずっと黙って見上げたままの啓太の 
赤い唇から 小さく漏れ出た一言を この人が聞き逃す筈も無く



「あの・ここじゃ・・やです・・・・・・わわっ!!!」

完全に言い終わる前に 啓太と西園寺の身体は
ふわふわと宙空に舞いあがっていた。

啓太を両腕に抱いたまま 満足そうに笑う西園寺は
その柔らかでいい匂いのする恋人の白い首筋に鼻をうずめていた

「では・・どこで私に抱かれたい?華の閨か?それとも水の閨?
ああ・・いっそのこと新しい閨を作るか?」

擦りつける様にして行ったり来たりする 
鼻先とうっとりするような美声に 啓太は喉をひくりと仰け反らせて 
眼もとをすっかりと上気させている

西園寺はいつでも本気だ
啓太が望むなら 趣向を凝らした閨をいくらでも作ってしまうだろう

自分が愛されるたびに 新しい閨が増えて行くのは
大変忍びなかったから どうにか思いとどまって欲しい
その為には 希望する寝所を西園寺に伝えなければならないのだが
なんだか 強請っているようで非常に恥ずかしい


「えと・・・あの・・・水の閨で・・・」
・・・オネガイシマス・・・・・と
小さく小さくなんとか言い切った啓太の喉を 待ちきれなくなっている西園寺は 
一度だけきつく音を立てて吸い上げた

「・・・んああっ・・・。西 園寺さ・・・」

堪らず甘やかな嬌声を上げてしまったその唇を嬉々として塞ぎ
閨までのほんの僅かな時間 気に入りの柔らかな感触を堪能する事に決めたようだ


宙に浮いたまま 重なりもつれ合う
そんな二人の姿を 
眷属である風たちが いつものように 
そっと咲き乱れる桃の花びらを巻き上げて
すっかりとその影を隠してしまった。

あとはもう 
そよ風たちの くすくすと笑いさざめき合う声が聞こえるばかり・・・



お・・・終わりです・・・・。
どうなんでしょう?
どうなんですか???(笑)

西園寺さん書いていて 大変楽しかったでーす
少しでも男前な彼が書けていたなら良しとしまーす 
ご感想をお待ちしております!


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