ええ。小心者ですから・・・。

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悠遠夜話・番外編


悠遠夜話・番外編~王様の話~:::望月の宵:::

2010.11.01  *Edit 
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『♪~しゃんしゃんしゃんと鳴る鈴は
天の誘いか 地獄の唄か
開いた扉の向こうには 何が待つのかお楽しみ~♪
ええ やぇ やぇ お楽しみ~♪』

銚子を傾けながら 男がどら声で唸る様に唄っている
その酷い音程に どっと嘲笑があがった

「っか~!!せっかくの酒が不味くなっちまう。そのひでぇ声を止めてくれ~」

「なんでぇ・・人がせっかく気持ち良く唄ってんのによ~」

「おい!今のは唄だったのかい??こりゃ驚いた!!」

場末の酒場にまた男達の笑い声が響いた


川沿いに石で造られた背の高い立灯篭が 規則正しく並んでいる
ゆらゆらと揺れるその明りには 光に吸い寄せられる雲霞(うんか)のごとく
飽きもせず 男たちが群がるのだ

通りに面した見世の 意匠を凝らした朱色の格子窓からは 
白魚の様な細い手が優しく こちらへおいでおいでと誘っている

ここ 花街では一夜限りの恋を求める雲霞達が 
夜毎 蜘蛛の糸にからめとられ 骨の髄までしゃぶられるのだ

冷やかしの酔客
大声を張り上げる 客引き
御大尽を乗せた牛車
肩がぶつかったと 喧嘩を始める男たち
喰いぶちを稼ごうと 襦袢をはだけ 誘う女たちの甘い声

ない交ぜになった喧騒が 宵も端の内から
揺らめく灯篭の光に照らしだされる


店構えはえらく汚いが 出される料理や酒は安くて旨いと評判の
花街の一角に在るこの店は今夜も大繁盛だ

飯台や椅子がもうとっくに一杯になっているのにも関わらず
常連の男たちは 其処ここから酒が入っていた木箱や 
道端の石を勝手に店先に動かして 自分達で料理を運び酒盛りをしている

店の中 ほぼ中心に位置したその大飯台に 
山盛りにした料理や酒を 囲んで一際盛り上がる連中がいた

「いや~兄ちゃん!がたいが良いだけあって 飲みっぷりも半端ないねえ~」

さっきから目の前に置かれた大盃に並々と注がれた酒を 
まるで水を煽る様に 顔色も変えず次から次へと空にしていくその男の様に 
いつの間にか店中の視線と耳が釘付けになっているようだ

周りにいた男達は面白がって 勝手知ったる店の奥の厨房から
もはやその大きさがたらいの様な丼鉢と 
棚の奥に隠してあった 飛び切り度数の高い白酒を 
にやにやしながら丼鉢へと注ぎ始めた

目の前に置かれた 並々と器に波打つその酒に 
くん・・・と鼻先を寄せると その男は 
みごとに筋肉の隆起した片腕だけで 囲い込む様にして掴むと
戸惑う事無くやおら傾け ごくごくと喉を鳴らし杯を干し始めたのだ


・・・確実に泡を吹いて 目を廻す!!!!!

周囲を取り囲んだ男達の 唾を飲み込む音が一斉に聞こえる

だがしかし そんなあらかたの予想を裏切って 
大飯台の真ん中に陣取ったその男は 杯を舐めるように完全に飲み干し
あろうことか にっかりと白い歯をさらし笑って見せたのだ

瞬間
男達の弩号に似た野太い歓声が上がった

猪口一杯で大熊も引っくり返ると言われる 滅茶苦茶な度数の白酒を 
このまだ若い男が飲み干すなんて 誰も想像が出来なかったからだ 
さっきまで 一泡吹かせてやろうと企んでいた男達の目が羨望の色に変わる

思えばふらりと博打場に現れたその男は 何もかもめっぽう強かった
札もサイコロも喧嘩も負け無しなのだ

ぽっと出の新顔に 身ぐるみ剥がされた常連の男達は面白いはずもなく
胴元も 手元にある有り金全部巻き上げられて
大変に面白くなかった 浅はかな両者の利害は一致した
イカサマをしただろうと難癖を付け 多勢に無勢の力技で
面目を保とうとしたのが 運のつきだったのだ

数十人に囲まれて尚 顔色一つ変えずにその男は
おお!!いいねえ!と腕まくりをして 
至極愉快で堪らないといった表情で笑っていた
周りに集まった 大方の予想を裏切って 勝敗は簡単についてしまった
驚いた事に 僅かな時間でぼこぼこに熨されたのは 
多勢だった博打場の男達の方だったのだ

息一つ乱すことなく捲り上げた衣を直しながら 
がっぽりと博打で稼いだ金のはいった革袋を背にして 
揚々とその場を去ろうとするその男に 取り囲んでいた野次馬達が 
面白半分で声をかけ この酒場に誘ったのだった

男とは馬鹿な者で 自分よりはるかに器が大きいと知ると
嫉妬ややっかみを一足飛びに飛び越えて 羨望や憧れに変わるらしい
さっきまで 新参者のひよっこ扱いしていた奴を
博打も喧嘩も 酒さえも敵わないと知るや否や 
掌を返したように見事に 尊敬の対象にしてしまったようだ

酒宴の席の真ん中に居るその男は 未だ随分と若いように見えた
皮膚は浅黒く日に焼け 衣を内側から押し上げている胸筋は
おそらく見事に隆起しているであろうことは 
窮屈そうな胸元と その太い腕の筋肉を見れば一目瞭然だった

他の男達より 余裕で頭一つ分長身 さらに筋骨隆々
普通ならばその巨躯がゆえの威圧感に みな圧倒される事だろうが
その男の笑顔は やたら人懐こいモノだったのだ

夏のまばゆい太陽の光のように にっかりと白い歯を見せて笑う様は
どうしたって憎めるものではなかったし 
自分の強さを鼻にかけるそぶりも見せない 
その男の事が 皆一様にひどく気に入ってしまったようだ 

驚異的な度数を誇る白酒をぺろり・・・と舌なめずりをして 
あれから2杯 さらに煽ったその男に又喝采があがる

渦中の人物は 博打をしてあちこちふらふらしている放蕩者らしい
この街へやってきたのは 今日が初めてだと言う
どこか面白い所があるか?と尋ねるその言葉に 
酒場の男達は皆 口をそろえて
『金があるなら 鈴菱楼へ行け!!』と言うのだ

鈴菱楼はこの世の天国
酒も女も極上品 
男の身体に生まれたからには 
一生一度は行ってみたい♪

盃に箸を叩きつけ 唄い出す者までいる

「へえ・・・で、そこに旨い酒はあるのか?」

「酒だけじゃねえよ!!兄ちゃん!!」

問われた言葉に その場に居た男達が皆 興奮気味に唾を飛ばして
我先に「鈴菱楼」がいかに素晴らしいのか捲し立て始めた

そこはどうやら この国の花街でも断トツ一番の見世らしい
据えられる女も肴も もちろん国中から集められる酒も超一級品で 
半月も通えば大店の一軒は潰れてしまうと言う破格の大見世らしい
この汚い酒場にたむろする男達の喰いぶちでは 簡単に暖簾をくぐれそうにない
もしかすると 縁がないまま一生を終えてしまうかもしれない

だからこそ 大金を持っているこの若者に自分達の代わりに
夢の様な世界を少しでも垣間見て来て欲しい・・・・
皆 縋るような そして夢見心地の顔で若者に説くのだ

「んじゃ・・行ってみっとするか~」

呑気な声を残して 立ちあがった若者の袖に
むさ苦しい男達の手がわらわらと必死に群がった

「な!!なんだよ??」

と 毛むくじゃらのムサイ手達を五月蠅そうに振り払うが
立ちあがった自分を見上げる 酒場の男達の鬼の形相に若者は一瞬たじろいだ

「そんな小汚ぇ 衣じゃ入れてくれねえよ!!!」

奇妙に揃ったダミ声の大合唱が 酒場に響き渡った




「おいおい~何で酒飲むのに こんな趣味の悪ぃ恰好しなくちゃなんねえんだよ~」

酒場の男達に担ぎあげられる様にして 
押し込められた衣料店から出て来た若者は
ぶつくさと文句を言いながら 子供のように頬を膨らませていた

店の暖簾を 邪魔そうに払って出た若者の姿に 
今か今かと道端で待っていた男達は 異様な声をあげてから
即座にそれを うっとりとしたため息に変えてしまったのだ

さっきまで ただ図体のでかい薄汚い男が 
一瞬でどこぞの貴公子然とした美丈夫に変身を遂げたのだから 無理はない


この店一番の御品でございます・・・と ちょび髭を生やした店主が
揉み手をして恭しく運んできた 桐箱の中にその衣はあった


それは黒に似て異なる 
深海の様な群青色の布地に 金糸銀糸が惜しげもなく施されていた衣だった
襟元はその海の懐深く眠る 真珠の様な艶やかな乳白色の絹で縁取られ
若者の厚い胸板を覆う身頃から背中にかけては 大胆にも 
今まさに雲海を越え 雷鳴を轟かせながら稲光と共に天へと還る
一匹の青龍が鱗の一枚一枚まで 丹念に繊細に刺繍されているのだ

花街でも知らぬ者がいない 一点物のみを取り揃えたこの衣料店は
とてつもなく豪奢でド派手な 常人が袖を通せば馬鹿みたいに
やたら毳々(けばけば)しく見える衣ばかりを置いている事で有名だった 
きっと頭の悪い成り金や 趣味の悪い金持ちのぼんぼんが 
遊女達の気を引く為と 店主の甘い口車にのり 
似合いもしないのに 大金を積んで購入していくんだろう 

だがしかし 
この衣はまるでこの若者たった一人の為にあつらえた様にしっくりときていた
けして悪趣味でも やり過ぎでもない 
いっそそれは身に付けた衣の方が 気押されるほどだったのだ

ちょび髭店主が気を利かせ 持って来てくれた手拭いで
砂埃にまみれたうす汚れた顔を 乱雑にふき取った若者の顔は
驚くほどに端正で 嫌がるのを無理やりに梳いた髪は
櫛を通しただけで たちまち艶やかな輝きを取り戻した

煌びやかな花街の風景に慣れた 道行く人の誰もが振り向くほどに 
若者はまさに威風堂々として 美しかったのだ

「・・・全然・・・洒落になんねえぞ・・・」

若者はそう言って ぽかんと呆けている野次馬達の阿呆面を
完全に無視したまま 半目になって乱暴にぼりぼりと頭を掻いた


あ~あ~
何で こんなとこに来てまで 
鬱陶しい紋を背負わなくちゃなんねえんだ
ヒデが見たら大笑い決定だな・・・・こりゃ・・・


まどろっこしくて 堅苦しい挨拶
息が詰まるほどに 仰々しい衣装
バカみたいな 古からのしきたり・・・

例え 自分が役立たずでも皆 媚びへつらって揉み手するんだろう
どんなに優れていたって それは当然とみなされてきた
結局 カビ臭いあの世界では
いつだって どこでだって 自分の後ろには代々の紋が付いて回るのだ

・・・面白くねえ・・・

只 それだけだ 
若者は自分の生まれた家と
自分に纏わりつく全てが本当に面倒で仕方がなかった


天空の守護者 四神将が内の一人
水と雷を司り 天帝に最も近いとされる名門中の名門
武門の誉れ高い 仙界の番人 青龍一族の総領息子

丹羽 哲也
それが彼の名前だった


仙界では人界へ 不用意に渡る事は掟で禁じられていた
だが 自分の置かれた退屈な状況から逃げ出したい一心で
何の考えなしにやって来た人間界は なかなかどうして酷く愉快な世界だった

人間は不浄
好戦的で、野蛮
力あるものにはひれ伏し、弱きものは蹂躙する
ほんの短い生涯なのに、呆れるばかりの悲しい歴史を繰り返すのみ
人間は愚かな 救いようのない生き物・・・

まあ実際に下り立ってみれば 
幼いころから耳にタコが出来るほどに 
呪文のように繰り返された文言その通りだった
しかし 丹羽にとっては、あのアクビの出るような仙界に比べれば
玩具箱をひっくり返したように 見るもの聞くモノ 
触れるモノ全てが 新鮮で興味を引かれる事ばかりだったのだ

確かに人間は馬鹿な生き物だ
でも 与えられた短い命を往生際悪く 足掻いて足掻いて生きている 
その姿に強烈に丹羽は心ひかれたのだ
ここに居れば 何かを掴める気がする・・・ そんな気さえして



この世界では自分の事を誰も知らない
背中に背負う紋も意味を為さない
丹羽 哲也 その身体一つで勝負できる

旨い酒を飲んで女を抱くのも 腹を空かせて野たれ死ぬのも
唯一自分次第なのだ

人界に来たばかりの頃 勝手が判らず博打に大負けし 
身ぐるみ剥がされ 河原に転がされた事はあったが
もともとその身は人界の食べ物を口にしなくても 腹は減らなかったから
生き死にの境を彷徨う事は無かった

仙界の者は人間界に長く逗留すれば やがて体内の気が乱れ 
身体が弱ってくると聞いてはいたが 別段変った事は起こらない
おそらくは自分の身体は それほど繊細に出来てはいないんだろう

頑丈に生を授けてくれた両親へと 仙界の禁を破って飛び出した自分が
初めて感謝の念を持つのは 親孝行なのか不幸なのか苦い笑いが口許をつく

ここ 二、三カ月は面白そうな事を探して 随分と方々を渡り歩いた
兎に角 丹羽にとって毎日が愉快で仕方無かったのだ

一文無しになれば 博打をして金を稼ぎ 
その金で旨い酒を飲んで 人間の馴染みも出来た 
わざわざ もめ事に首を突っ込んで喧嘩もしたし
仙人の身ながら 人間界の食べ物も意外と口に合う事が判った

流れ着いたこの街は 随分と賑やかで面白そうだったから 
皆のさせたい様にさせて来たはいいが 人間界に来てまで 
こんな衣を着る羽目になるなんて思いもよらなかった

浮かれまくっていただけあって 脱力感が凄まじい

はあああああ~
せっかくの上機嫌が台無しだ・・・・。

意気消沈 がっくりと肩を落とし 
すっかりと死んだ魚の様な目になってしまった美丈夫を気にもせず 
男達は やいのやいのと御輿の様に若者を中心にして隊列を組み 
奇声を上げて ずんずんと花街の街道を行進していく

やがて通りの喧騒から少しだけ離れて 袋小路のその先に
一目見て別格と解る 実に豪奢な建物が目の前に現れた





えへへ(^-^)
王様編 はじまっちゃいました・・・。
あっちこっち手を付けて 一体どうなる事やら・・・。
↑↑↑↑まるで他人事(笑)・・・。
すすすみません・・・・王様はお嫌いですか?????





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