ええ。小心者ですから・・・。

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悠遠夜話・番外編


悠遠夜話・番外編~王様の話~:::彼方の眉月:::

2011.10.03  *Edit 
▽TB[0]▽CO[0]

「ねえ・・俺・・身体が熱いんです・・どうにかしてください・・」

しどけなく肌蹴られた襦袢から見えるその首筋から鎖骨の窪みは
内側から持て余した熱で、ほんのりと赤みを帯び艶めいて。

その苦しそうに薄く開かれた紅い唇からは、時折り苦しげな吐息が漏れ出て
小さな紅い舌がチロチロと蠢くのが見える。
それは、早くきつく吸い上げて欲しそうに見えて、酷く男の劣情を誘う。

「ねえ・・・早く・・・お願いだから・・」

啓太のあの澄み渡る青空のような瞳は今、水膜を張った様に潤んで
確かな情欲の色を映しだしていた。

!!啓太・・・
おまえ・・!!

「・・早くどうにかして・・」

熱い吐息がかかるほど、ねっとりと耳元で囁かれれば
その甘い誘惑にくらりと目眩がしそうになる。

・・・・抱いて・・いいのか?

こくりと頷いて、おずおずと啓太が裾を自分でたくし上げれば
その白く透ける様な太ももが露わにされ、
もはや耐えきれなくなった様子の啓太の内股が、丹羽の腰へと悩ましく擦りつけられた。

!!!啓太っ!!!

あれほどに焦がれた白い肌へ、嬉々として伸ばした筈の丹羽の手は
何故だか、ジャラジャラと無粋な音を立てた。
そして、その重量で太い腕を地面へと引き戻し、
同時に丹羽の意識さえも味気ない現実へと引き戻した。

想い人の甘い声の余韻に浸りながら、ぼんやりと目蓋を開けてみれば 
どうやら自分の両手は、黒光りする太い鎖によって自由を奪われているらしかった。

ああ・・・・。
近くで轟々と鳴る水の音が酷く耳障りだ。
だが、自分はこの音を良く知っている・・・・・・。 
丹羽はそれを認識すると同時に、がくりと盛大に肩を落とし
大きな敗北感に打ちのめされたのだった。



ここは仙界。
どこまでも澄み渡る紺碧の海の底深くに、天界の四神将 青龍の屋敷はある。

穏やかな陽光が高く登れば、透明度が高いその美しい海は遠浅な底まで光が届き、
赤や青の色とりどりの魚達が珊瑚の中で戯れる様まで見てとれる程だ。
豊かに隙間なく鬱蒼と茂る紅い珊瑚の林を通り抜けた先、深く深く沈んだ所。
もはや陽光など一筋も届かぬ深海の奥底に、その建物は高くそびえ立っている。

輝く真珠のようなその白い建物の四方には、轟々と見上げる水柱が立ち上っている。
それは強健な水の壁を作っており、遥か上方へと広がる水の流れは
巨大な渦を巻き、四頭の鎌首をもたげる竜の形をとっている。
その圧倒的な力は、何人たりとも破る事が出来ない仙界一美しく、
仙界一非情な監獄をこしらえているのだ。

本来なら咎人を繋いでおくその建物の中央へ今、丹羽は縛され捉えられている。

「・・・・ちっ・・・」

大きく舌打ちをして、自分の腕に繋がっている黒光りのする鎖を引っ張ったり、
じゃらじゃら揺らしたりして眺める丹羽のすぐそばに、 
黒装束集団の中にいたあの男が歩み寄った。

「若 お目覚めになられましたか・・」

「なんだよ・・随分な扱いじゃねえか・・」

跪いた格好の男の目の前で、
丹羽は大仰にもう一度その太い腕を振り、鎖を鳴らして見せた。
その硬くいかめしい鎖の始まりは
術と共に厚い岩盤へがっちりと繋ぎとめられている。

「申し訳ございません。長のお言いつけにて・・」

男が慇懃に謝罪の言葉を口にするが、まるきり心はこもっていない物言いに
丹羽は呆れたようにため息を一つ洩らした。

判っている。
目の前のこの男は自分の父の忠実なる右腕だ。
父が黒いモノを白だと言えば、黙って頷く男なのだ。
もしも父が自分を殺せと命じたならば、その事に一切逡巡することなく 
己の手を血に染めるに違いない。
そう言う男だった。

天空の守護者 四神将が内の一人。
水と雷を司る 古から連綿とつらなる名門中の名門。
武門の誉れ高い仙界の番人。
 
一人が一騎当千の力を持つ精鋭集団を束ね、天界の法と秩序を護る。
その強大な力は正しく仙界一 二を争えるほどで、天帝に最も近いとされる男。
それが丹羽の父親である青龍一族の現頭領、 竜也その人だった。

目の前のこの男一人だけではない。
さっき自分を襲った黒装束集団全員、皆が皆 一様に父に心酔しきっている。
あの父が死んでこいと言えば、喜んでその命を投げ出すに違いなかった。

只、それは万が一にもあり得ない。
何故ならそれは『紅の闘将 朱雀』と並んで仙界一、血の気が多いと噂される
青龍の現頭領殿は、肉弾戦こそが戦いの真骨頂と信じて疑う事をしないからだ。 

多分、どこかで戦の狼煙が上がろうものなら即、敵・・・いや
もはや誰かれ構わず派手に蹴散らして、土煙りを上げながら戦場へと馳せ参じ
一番乗りを声高に名乗るであろうことは、仙界では赤子でも知っている事なのだ。



不意にあんなに激しく耳障りだった水流の音が止む。
ゆったりと巨躯を揺らしながら、その人物が姿を現した。
それを認識した四頭の水竜たちは、主を見つけた犬みたいに大人しく鳴りを潜め 
もたげていた鎌首を擦りよる様にして下げ、さっきまであれほど轟々と絶え間なく
吹きあげていた水の壁を、綺麗に二つに分けさせたのだった。

「よう。哲也~。良い格好だな~」

「・・ちっ・・・今すぐ此処から出しやがれっ!!」

「うーん・・・それは出来ねえなあ・・だって逃げんだろ?お前。」

「に・・逃げる訳ねえだろ・・」

「嘘付け・・顔に書いてあんぞ・・・」

「そんなことねえ・・ぜってー逃げねぇから、
         手枷だけでも外してくれよっ!手が痺れて仕方ねえんだよ」

「ああ???てめえがそんなタマか~?!」

「・・んだと~?人が大人しくしてれば好き勝手言いやがって!クソ親父!!」

「ああ?それが父親に向かって言う言葉かっ??
                   この親不孝息子がっ!!」

「うるせー!!早くしねえとこの牢屋ごとぶっ壊すぞ」

「はっ!!やれるもんならやってみろ馬~鹿っ」

「・・馬・・馬鹿って・・・・てめ~っ」

「・・お二方ともお納め下さりませ・・」

『うるせえ!』

仲裁を試みた黒装束の男へ奇妙に息の合った怒声が浴びせられ、
その頭上を、極めて低次元の罵り合いが嵐の様に交わされる。
やれやれ・・・と肩をすくめた男は一つだけため息をつくと
諦めの表情を浮かべて、この似たもの親子の
毎度、馬鹿馬鹿しい喧嘩の傍観を決め込んだようだ。

「・・・・。」

「・・・・。」

しばらくすると親子は、ぜーはーと息を切らし
それでも、がるる~っとお互いに歯咬みをして相手を威嚇した。
どうやら罵詈雑言のネタも尽きたらしい。

「ったく。つくづく口の減らねえ野郎だぜ。」

「うるせえっ!その言葉そのままそっくり返してやるっ」

竜也は尚も威嚇し続ける自分の息子のその様子を、上から下まで一度確認すると
だらしなく無精髭の生えた顎をゾリゾリと親指で撫で廻しながら、
何故だか急に一人にやにやし始めた。

じゃらりと両腕にぶら下がる太い鎖は確か、
咎人の気を吸い取る強力な呪詛をかけられている筈だ。
人界から運ばれて来て、気絶している時間を差し引いても
結構な時間繋がれていたように思う。
普通の者ならばとっくに、子犬の様に大人しくなっている頃だろうに。
我が息子ながら、ほとほと呆れるほどの体力があると見える。

ほんの少しだけ、己の息子の有り余る若さへ羨望を抱いた自分の心を
おくびにも出さず、竜也は息子へにやりと口端を大きく上げて笑って見せた。

「へへ・・まあいいさ。明日の婚儀は早い。花婿殿はゆっくり休んでくれ。」

「は?」

竜也の何の脈絡もない発言に、さっきまで首筋がちりちりとするほどの怒気を
はらんでいた大気が急にしぼんで行き、代わりに呆けた丹羽の顔が出来あがった。

「なんだ?その嬉しそうな顔は。この助平めっ」

「誰の・・・婚儀だっ・・・て???」

「だーかーらー。てめぇに決まってんだろ?俺は母ちゃんが居るからな。」

「馬鹿か?てめぇっ!!誰が結婚なんかするっつった?」

丹羽はやっとその言葉の意味する所を知り、辛抱たまらず
目一杯両の腕の鎖をびぃぃんっと張って、竜也の胸倉を掴みにかかった。

・・・が、
僅かばかり丈尺が足りずその巨躯の均衡を崩し、たたらを踏んでしまう。
だがまたすぐに体勢を取り直し、今度は自棄になったのか
それはもう無茶苦茶に腕を振り回し始めた。

ヤケクソになって鼻息を荒くしている息子を見た竜也は、心底面白そうに
ゆっくりと腕組みをして必要以上に胸を張ってから、居丈高に鼻をならして見せた。

「もう決まっちまった事だ。てめぇの意見なんざ聞いちゃいねえ。
それになぁ・・・あの崑崙山の大層な美人だそうだぞ~。
おまけによぅ。何と聞いて驚け!西王母様の末の孫だそうだっ!
ああ ・・・・青龍一族も大安泰だなーこりゃ・・・」
  
呪詛を込めた鎖をモノともせず、なおも自分に掴みかかろうとしてくる息子の
手の風圧を鼻先で感じながら竜也は、両手を胸の前で合わせて
恭しく合掌の形を取ったかと思うと、口端を下げてへの字型を作り、
ワザとらしく神妙な顔を作って見せた。

「あ~哲也君。父は君の一番のシアワセを考えてイルノダヨ・・・」

「訳、判んねえこといってんじゃねえよっ!!馬鹿親父!!」 

「まあ・・なんだ・・兎に角、結婚しちまえ!!あの婆さんに逆らったら
何されるか判らねえからなぁ・・・俺も未だ命は惜しい・・
諦めろ・・・息子よ・・・」 

「てめぇっ!!売りやがったなっ?!」

「では、哲也君・・・初夜に備えて体力は温存して置きたまえ。」

はっはっはっは~と声も高らかに、尚も暴れ続ける息子を一切無視して竜也は、
その隆とした背を丹羽へ向け、入り口で平身低頭する四頭の水竜の頭やら顎やらを、
代わる代わる一撫ですると黒装束の男を伴に連れ、ついには一度も振り替えることなく
その部屋を出て行ってしまった。

「ちょ!!!待てコラっ!!このくそ親父―――!!」

耳をつんざくような丹羽の大声は、果たして父の耳に届いたのだろうか?

答えは――――――
否。

何故なら、四頭の水竜達が自分達の主がその部屋から一歩出ると同時に、
恐ろしい勢いでその鎌首をあげ、瞬く間に上空へと昇り
また轟音をとどろかせる水壁を作ってしまったからだ。

「っきしょ――――っ!!出せええええええええっ!!!」





しゃらん・・しゃらん・・と鳴る鈴の音に合わせて
煌びやかな刺繍を施された上掛けの重量を一切感じさせる事無く
啓太は舞い続ける。

ふわり・・ふわり・・・・と
それはまるで花びらが風に身を任せる様に、軽やかに、優しく。
だけれど、どこか寂しげに一心不乱に舞い続けるのだ。

『ほう・・・・。』

じゃらん・・・と最後の小節の伴奏が止み、舞台の上で啓太が深々と頭を下げると
皆のため息が漏れ、それきり座敷はしんと静まり返ってしまった。


ここしばらく体調不良を訴えて伏せっていた啓太が
久しぶりに舞の稽古をするという事で、その様子を一目見ようと
楼閣中の者は皆、こぞって座敷へ見物に来ていた。

琵琶の腕もさることながら、鈴菱楼一と言われる太夫の舞は
以前とまったく変わることなく、涼やかで伸びやかなままだ。
ただ、あの澄んだ青空の様な瞳だけは、何処か憂いを帯びていて
匂い立つような艶を啓太に与えていた。
折れそうな程細い腰も、白いうなじも、何気なく指先を動かす所作にさえ
見る者の心を酷くざわつかせ、それはため息を漏らさずにはいられないほどに
美しく妖艶に変わっていたのだ。

「・・・・太夫・・変わったわよね?」

「・・うん・・・なんて言うか・・こう凄まじく色気が・・」

「ねえ?丹羽様のせいかしら?」

「・・・でも、丹羽様最近めっきりご無沙汰なんでしょ?」

「・・しっ!!太夫が来たわよっ!!」

聞こえているのか、いないのか、啓太はお端達がひそひそと
噂話をするのを気にも留めずに、さっさと豪奢な上掛けを放り出すと
一言も発することなく、自分の部屋へと踵を返してしまった。

ぎぎ・・・と大きな観音扉の向こうへ太夫の姿が消えてしまうとそれを横目に
お端達皆が、部屋の真ん中にわらわらと蟻の様に這い出て集まってくる。
そこには、何処から引っ張り出して来たものだろうか
こんもりと甘い匂いのする揚げ菓子を山盛りにした器が置いてあって
座敷の後片付けもなおざりに、女達は皆我先にと手を伸ばし、
次々自分の口へと放りこみ始めたのだ。

今夜は月一度の店の定休日。
どうやらお端達はそれを良い事に、ここ最近滅法美しさに磨きのかかった
花街一の太夫の噂話で、夜が更けるまでの暇を潰そうという魂胆らしい。
始め、ひそめられていた声はいつのまにか騒々しい声になり、
いつしか品のない大きな笑い声に変わっていった。

そんなかしましい声があがる楼閣の一室へ
まるで似つかわしく無い弱い月の光が、静かに忍び落ちてくる。
その光は、薄墨色の雲の隙間からようやく届けられたぼんやりとした光だ。

今宵、眠る事を知らない花街を照らすのはわずかな月光。
それは細く儚い・・・・まるで恋しい男を指折り数えて待つ、
遊女の眉に似た月の光だった。






お久しぶりの更新です。
すでにどんなお話か忘れられているんでしょうねえ(笑)
なかなか思いを遂げられない王様です・・・。
丹羽父が好きです・・・。


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