ええ。小心者ですから・・・。

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短編よみきり


私立鈴菱総合病院::メディカルクラークA美の場合::

2011.12.02  *Edit 
▽TB[0]▽CO[0]

いつも優しいお言葉を下さる貴女へ・・・。





「ちょっとっ!!何これ?処置抜けてるっ?」
「え?・・・あ・・ホントだ。」
「珍しい事もあるモノね・・・。・・・んもう・・こんな時間だから直接先生に聞いて来て??」
「はーい。行ってきまーす。」

パタパタと私一人のサンダルの音だけが、ロビーと病棟を繋ぐ長い廊下に響き渡る。
月末の診療時間終了後、昼間あんなにもごった返していたロビーは
すっかりと鳴りを潜め、薄暗く不気味なほど静まり返っていた。
だが、私の戦いは今まさに始まりを告げたばかりなのだ。

ここは私立鈴菱総合病院。
私はここの病院でメディカルクラークをしているA美。

メディカルクラークというのは、判り易く言えば医療事務員の事。
あなたも病院に行った事があるならご存知のはず。
病院の窓口で受付業務を行ったり、医師の作成したカルテの点数を元にして、
患者さんへの会計業務を行ったりする仕事をしているアレだ。

まあ・・この天下の大財閥の抱える私立鈴菱総合病院では業務は多種多様に渡り、
職種はより細分化され、効率的に配分されているのだけれど、
基本的には病院の事務担当って事なのは間違いは無いと思う・・うん。

この病院事務、毎月月末で〆て外来患者さんやら入院患者さんの医療行為の点数を出し、
各保険組合に診療報酬請求するの・・・ってナニ言ってるか判んないわよね?
うーん・・・そしたら後は各自ググって調べてね?うふ♡

請求業務って、インタバルが無いから大変なのよ。
だって月末の翌日は確実に月初が始まるでしょ?
当たり前なんだけど・・・。
判ってるんだけど、コレがもう風邪っぴきの多い冬場で患者倍増、
翌日連休とかあたった時にはもう最悪。
確実に残業じゃないのっムッキ―っ(-“-)てなるわね。

そんな最悪の日が今日という訳。

いつにもまして処理件数が多いし、ドクターの入力ミスは多いし・・・
はあ・・一体いつ終わるんだろ・・・
まったくこっちだって都合があるっつーの。
でもまあ、ドクターも人間だし間違いくらいあるか。仕方ないよね。
みんな疲れてんのは同じだし・・・。
でもでも、やっぱり今日はなるべく早く帰りたいんだよね~。
最近ホント忙しくてパソコン開く暇もさっぱりだったし。
今日こそは夜更かししてBLサイト巡りするんだからっ!

密かなる野望を胸に拳を握りしめ、いつしか早歩きから小走りになっていた私は
目指していた医局へと到着した。
開け放してある扉にノックをしてから、一旦顔だけ覗き込む。

「すみませーん・・七条先生はいらっしゃいますか?」

「あれ?さっきまでいらしたけど・・・。」

「あー。俺、外来で見かけましたけどぉ。」

「すみません。ありがとうございます。」

軽く会釈をしてその部屋を後にすると、私は今来た廊下をくるりと引き返した。
あーもう。こんな時に限って放浪しないでくれる??
探すの大変なのよ、ココやたら外来広いんだからっ。

私は誰もいない事を良い事に薄暗い廊下を、一人ぶつくさと言いながら
七条先生を探しに急いだ。
ぶつぶつ言ってないと、なんだかニヤケて来てしまいそうで。

何故って?
それは七条先生がとっても素敵な人だからでぇ~すっ。
私が捜索中の七条先生は脳外科のドクターで、まだ随分と若いのに
次々と難しいオペを成功させている今一番旬と言っていいくらいの、
医療界で注目されている凄い人。
おまけに信じられないくらい美形なの。

なんでもお父様がフランス人らしくて、サラサラの銀髪に紫の瞳。
眼元にあるホクロなんて色っぽいのなんのって(>_<)

着任当日初めて七条先生の姿を見た時、私ったら
七条先生の背後に薔薇の花びら乱舞するベルサイユ宮殿が見えたくらい。
正直失禁・・・いえ、おほほ。失神しそうになったわ。

BL大好きの私でもやっぱり、二次元の世界は所詮、夢だって判ってる。
現実的に考えて、ホモの世界があんなに美しいはずがないもの。
あくまでBLは趣味・・・ってゆーか癒し?
悲しいかな、現実世界は物凄いスピードで回っちゃってるからね。
しっかりと地に足を付けて、ヌカリなくしたたかに生きて行かなくちゃ。
そう。例えば未来の旦那様探しとか・・・。
常にアンテナ三本立てて、送受信状態ばっちりよっ。

ああ・・でも・・・。
七条先生はなんだか別格かな。
ちょっとハードル高過ぎ?
確かに、私は七条先生には憧れてる。
でもあまりにも美し過ぎて、もう好きとか嫌いとかすっ飛ばして
どこが現実離れしている存在になってるみたい。

七条先生って何だかちょっぴり無機質な感じがして、生活臭が全然ないから
夫婦になって、一緒に納豆とか食べるの全然想像できないもん。

私的にはもうちょっと・・・
そうね・・・普通の爽やか系で、もっと優しい感じの人が好みかな。
そうそう。
看護師で男の人なんだけど、すっごい可愛い感じの人が
この病院に居るんだよね~。どっちかって言ったらあの人みたいな人となら
結婚生活も具体的に想像できるってものよ\(~o~)/
だからまあ、私にとって七条先生は完全観賞用って感じかなぁ。

でも「超」が付く美人さんで、物腰も柔らか。極めつけに独身O(≧▽≦)O♪
将来有望ときたもんだから、七条先生はこの病院中の女が狙ってるんじゃないか??
って言うくらい当然モテモテ。
みんな、先生の気を引こうと必死で見てて笑えるくらいの、そんな状況で、
相手なんて選り取り見取りの筈なのに、先生ってば
不思議な事に浮いた噂一つないのよね~。
まあそれが、「誠実な男」として株上がりっぱなしの原因な訳な訳だけど。


ああもう・・それにしても・・・おかしいな。
どこ行っちゃったんだろ七条先生。

「?!」

廊下をきょろきょろしながら歩いていると、通り過ぎた資料室から
人の声がするのが聞こえて、私は踵でキュっ!!っと急ブレーキをかけた。
もしかして意中の七条先生かもしれないと思い
扉のノブに手をかけ、薄暗い部屋の中へと入っていく。

資料室は半ば物置の様に使われている所で、あまり出番のない超大型の
プロジェクターやら、刷り過ぎた学会のポスターがうず高く積まれまくり、
やたら物がごちゃごちゃある部屋。
入ってすぐに大きな書棚が私の視界を阻み、この部屋に居るのが
本当に七条先生なのか判別をさせてくれない。
私は迷路のようになっている書棚を進みながら、薄暗い資料室の奥へと進んで行った。

本当は入り口で大声を出せば済むのだけれど、それじゃ苦労してここまで
足を運んだ意味がないっつーの。
だって・・・。
うふふ。七条先生と直にお話をする又とない大チャンスなのだからっ!!
あの美しいお顔を間近で見られるのよ♪眼福とはこの事だわん。
完全観賞用と割り切っていても、やっぱ私だってうら若き乙女なのだ。
ああ。こんなことならもっとガッツリ化粧直ししとけばよかった・・・
とちょっぴり後悔しながらも、心はウキウキが止まらない。
ふんふんと無駄に鼻息が荒くなってる事がどうか気付かれませんようにっ!

1オクターブだけ高いよそ行き用の声を喉に準備して、
私は書棚の陰から頭を可愛らしくぴょこりっと出して

・・・・・・・速攻引っ込めた。

七条先生が誰かと一緒にいる。
それも私の目の錯覚でなければ、テーブルの上に誰かを押し倒しちゃってますけど。

「ぁン・・・駄目・・・誰か来ちゃいま・・・す・・・」

「ふふ・・随分と今日は余裕がありますねぇ・・・。」

えええっ??!!なになになになになにーーーーーーー!!!!
ちょい待てええいっ!!

「あぁっ・・・やだっ・・・そんなにしちゃ・・・んあっ」

「ね・・もっと声を聞かせて。」

「んっ・・・んっ・・・ああ・・っ・・・だ・・めえ・・」

このねっとりと纏わりつく濃密な空気は何っ??
衣ずれの音やら、ぴちゃぴちゃとこれ見よがしに聞こえる水音やら、熱い吐息やら・・・・
もしかしなくても・・私ったらかなりマズイ所に居合わせたんじゃないっ??

心臓がやたらに早くなる。
急激に収縮を繰り返す心室から、ドクドクと身体中の毛細血管へと
血流を送り出すのがやけにリアルに感じられて、あっという間に私の顔が熱くなった。

嗚呼!!赤血球よ。酸素をありがとう。
・・・・って私ったら完全にパニ――――――ックっ!

どどど・・どうしよう。マズイわっ!マズイわっ!かなりマズイわ~っ!!!
これはこのまま何も見なかった事にして退散したほうが賢いだろうと、
気配を消してゆ~っくりと身体を方向転換させようとした。

・・・・けど。

「んっ・・・ぁああっ!・・っふ・・ぁふ・・・」

何よ?
このとてつもなく可愛らしい声は。
なんか腰椎にガツンととくる声の持ち主ね。
超エロいんですけど。
でもでも・・・これって男の人の声?だよね?

・・・て、ことは

きゃああああああああああああっ!!
リアルBL来たああああああああああああああああああああっ!!
私は大声で叫びながらそこらじゅう転げ回りたいのを、必死で両こぶしを握り締めて何とかこらえた。

うっそーっ!えー!えー!!あの美しい七条先生がっ??

いやいやいやっ・・・全然ありだわっ!!
ってゆーかこれぞ理想!!全く問題なしよっ!!
ああんっもうもうっ!!俺得来たあああっっ!!

現実の世界と夢の世界が交差して、今まさに融合っ!!
神様ありがとう――――――――――――――――!!

それにしてもあの七条先生が誰かと
・・・しかも同性とお付き合いしていたとはね・・・。
さっき見た時、白衣がちらと見えた気がしたから、ここの関係者には
間違いないんだろうけど・・・。

イケナイ事としりつつも、私はさっきから休みなしに聞こえる
甘い声の主が知りたくて、ドアの方へ方向転換しかけていた身体を秒速反転し、
書棚の隙間からそっと向こうを覗いてしまった。

「んっ・・・はぁ・・・ぁっ・・・し・・ちじょう・・・せんせぇ・・」

熱にうかされた様な熱い吐息がこぼれる部屋の温度が、なんだかぐっと
高くなった様な気がして、私はごくりと唾を飲み込んだ。

書棚の向こうに見えたのは女の私が嫉妬する程、白く透ける様な肌。
肌理が細かくて、触れたならきっと吸い付くような感触がするに違いない。
時折り聞こえる嬌声は鼻にかかって甘くかすれ、男のくせに猛烈にエロい。

さっきから悔しい位、せわしなく動く広い背中の向こうに、
時々見え隠れしてるその人物の華奢な腕は、
七条先生にしっかりと縋りついていて、時折り、ぎゅっと皺が付くほど
白衣を掴んでは、あがるその声を押さえようと必死になっている様子が判るから、
なんだかやけに可愛らしくて。

「ふぁっあぁ・・・・あふ・・・や・・・そこ・・だめぇ・・」

うわー。ちょっと。随分と気持ちよさそうじゃない?
あら?おほほ・・失礼。

これじゃ七条先生も堪んないわね。
こんな艶っぽい声、この病院中探したって出せる女いないわよ。
ああ・・もうホントいったい誰なのっ??気になるっ!

どうやら七条先生は恋人へのご奉仕に夢中らしく、私がここに居る事に
全く気が付いていない様子。
ここはあともう少し移動したなら、確実にお相手の顔が拝める、砂被り席。
がっぷり寄つしなくてどうするよ?!私っ!!
完全にBL魂に火のついた私は、ついに我慢が出来なくなって、
気配を消したまま少しづつカニみたいに横方向移動を開始してしまった。

書棚の向こう側に繰り広げられている夢の世界を覗こうと、普段使わない眼底筋を駆使し
私はわずかな隙間から、両眼をきょろきょろと動してみる。

すると努力の甲斐あって、ようやく七条先生の肩越しにその人物の髪が見えてきた。
それは・・・やけに見覚えのある茶色くて、ふわふわのちょっと癖がある髪。

「や・・だめ・・です・・もうこれ以上は・・・・おねが・・・い」

「ああ。・・僕の可愛い伊藤君・・・」

??伊藤っ・・っ??

良く知っている名前に、私は反射的に・・・ひゅ・・・っと息をのみ込んで、
慌てて自分の口を両手で押さえこんだ。
今、目と鼻の先で七条先生に組み敷かれているのは、この鈴菱総合病院の看護師である
伊藤啓太さんその人だったのだ。

彼はいつも明るくて心配りが細やかな、患者さんにも私達職員にも分け隔てなく優しい人。
それに何でも一生懸命で、笑うと凄く可愛らしくって、実に癒されると言うか・・・

・・・・・。

うう。ちょっと・・・
いや・・かなり良いなぁ・・・って思ってたのにぃ・・・。

七条先生がライバルじゃ、敵いっこない
完全不戦敗決定じゃないの。
もうもう神様の馬鹿ぁ――――――――――――――――――!!
わずか数分前に神を讃えたばかりの私は、同じ口で徹底的に冒涜した。

ああ・・失恋かぁ・・・なんか涙出て来たわ。
私がここに居るって事に気付かれると困るから、垂れて来た鼻水もススれなくて
涙も鼻水もひたすらにダダ漏れ状態。うら若き乙女にあるまじき格好だわ。
うう・・・・。負けるな自分。

・・・に・・しても。
彼・・・、こんなに綺麗――――だったんだ。
半ばヤケになり、制服のブラウスの袖口でグイっっと諸々の汁を拭った私は、
改めてわずかな隙間から見える伊藤さんの姿にため息が漏れそうになった。

・・・だって、私の目に映った伊藤さんは、本当に本当に美しかったから。

あの、いつも綺麗な五月の空みたいな瞳は、今はすっかりと潤みきっていて、
焦点が合っていないまま天井を見上げてる。
ふあふあの茶色の髪の毛が張り付いた額には、真珠の様な汗が結んで、
頬も随分と紅潮しているみたい。
きっと相当な時間、七条先生からの愛撫を受けているんだろうな・・
と見当をつけたのにはちゃんとした訳ある。

白衣から露わにされた伊藤さんの華奢な肩口から鎖骨には、たった今
七条先生に付けられたばかりの桜色の跡とそうでないモノ・・・
つまりは既に時間が経った跡とが混在して、沢山の鬱血の花びらがその白い身体に散っていたのだ。

・・・どんだけヤッてんだか・・。と早々に突っ込みを入れたくなるが、
甘い吐息を吐きだす艶やかな唇が、時々苦しそうにはくはくと動き
その奥で小さな紅い舌が蠢いているのが見えれば、
そのあまりの妖艶さに納得もいくというものだ。

ああホント・・・もう・・
イヤらしい・・・なんか物凄―――――く。
男なのに色気がマジ半端ない。

もともと伊藤さん自体に素質があったのか、七条先生がシツコク開発したのか・・・
うーん・・これは多分両方ね・・・。
ふん。舐めんじゃないわよ。
こちとらBL歴無駄に○十年重ねてないのよっ
あーあ。こりゃ七条先生、勤務中でも我慢ならなくて当然か・・。

色々超越した情景に、私はいつの間にか失恋の痛手も忘れて、
なんだか妙に納得してしまい、薄暗い書棚の陰で一人、ふむふむと頷いてしまっていた。

・・・ぞくり・・・と背筋に悪寒が走るまで・・・。

恐る恐る顔を上げた私は書棚の向こう、伊藤さんを胸元に抱え込む七条先生と
ばっちりと目が合ってしまった。

看護衣を半分肌蹴けさせたその白い身体を、誰にも見せないように
長い腕で抱きしめて懐へと囲い込んでいる。
それはまるで大切な宝物を扱う様にそっと・・・。

「!!!」

ひいいいいいいいいいいいいっ!!
気付かれたっ!!!どどどどう゛じよ゛う゛っ!!

すぐにでも逃げ出したかったけれど、何故だか私の手足は硬直してしまって
まったく言う事を利いてくれない。
当然、だらだらと大量に嫌な汗が背中を流れ、口元がひくひく・・・と
大きく引きつったままの私と七条先生は書棚を挟んで対峙する事になる。

だが、当事者である七条先生はと言えば、特に焦った様子も見せず、
私から目を反らさないまま悠然と、半ば見せつける様にして
ねっとりと伊藤さんの耳を舐め上げたのだ。
すぐに、くふん・・・と小動物の断末魔に似た伊藤さんの甘い声が漏れる。


獣だ。
それはまさしく、餓えた獣そのものだった。

そこには普段の理知的で、穏やかな微笑みなんかどこにも見当たらない。
捕えた極上の獲物を、今まさに喰い尽くそうとする、
しなやかでこの上なく美しい銀色の獣が居た。
ギラギラと欲望に滾ったこの紫の瞳に魅入られたら最後、きっと骨まで残さず
しゃぶり尽されるのだろう。

私と視線を交錯させたまま、伊藤さんの耳やら、肩口やらを
愛おしそうに甘咬みしていた七条先生は不意に、硬直したまま1ミリも動けなくなって
しまっている私に向かって、つい・・と優雅に人差し指を立てて見せた。

「?」

そして、その指をそっと口許へと寄せ、声を出さずに確かにこう呟いたのだ。

『内緒です。』

それはそれは美しくて、世にも恐ろしい艶やかな微笑みがそこに出来あがる。

瞬間、ぞわぞわと悪寒が背筋を這いあがって、
私の中で明らかに生命の危機を知らせる警鐘が激しく打ち鳴らされるのが判る。

だが、口だけで形取られたそれを理解できた途端、呪縛から解き放たれた様に
私の手足はようやく自由を取り戻す事ができたのだ。

不思議な事に七条先生には、それがすっかりと伝わっているらしく、
既に、私への関心をすっかり無くした様子で、邪魔な虫は退散・・・とばかり
片手だけをひらひらと振って、また愛しい人へのご奉仕活動へ戻られたようだ。

もうとっくにこちらを見てはいない事は判っていたけれど、私は速攻、
これでもかと言うほど高速でブンブンと頷き、他言無用了承の意思表示をして見せ、
即、資料室退場を開始した。
音をさせないよう細心の注意を払ってドアを閉める瞬間、
伊藤さんの一段と高い嬌声が耳に届いて、猛烈に後ろ髪引かれたけれど、
命の方がずーーーーーっと大切に決まってるもの。



・・・。
あの後、私ったらどうやって家までたどり着いたんだろ?
やっぱり、七条先生はいませんでした~とか適当な事を言って、
ひーひー言いながら残業をこなして帰って来たのは、
なんとなく覚えているんだけど・・・。
記憶が定かじゃない。

うう・・・。今日はホント凄い一日だったわ。
良い意味でも悪い意味でも。
まるで天国と地獄を一遍に見てきたみたい・・・。

大きなため息を一つついてから、ぺたん・・とほっぺをテーブルに付ければ
その冷たさが心地よくてそっと目を閉じてみた。
そうすればだんだんとモヤモヤしていた思考がすっきりと晴れて来て、
私はある一つの明確な結論にたどり着いたのだ。

「よしっ!!決めたっ!!」

だんっ!!と乱暴にノートパソコンをテーブルの上に置き
wordが立ちあがるほんの数秒も待ちきれず、そわそわと落ち着かない。
そして新規画面が立ちあがると早速、ガツガツと超高速でタイプし始めた。
・・この胸に滾る思い全てをぶつける様に・・・。

「ふふ・・ふふふ・・BLサイト立ち上げてやるわよ~!!もう見る側じゃなくて
今度は発信する側よっ!!目指せランキング1位―――――っ滾るううう―――――」





今宵、素晴らしきBLサイトがまた一つ産声をあげようとしようとしていた。
この1年後、出版社にその才能を見いだされた彼女は、瞬く間に
100万部突破の売れっ子BL作家へと転身を遂げる事になる。
彼女の記念式典へ、大恩人として招待された七条と啓太が、
はたしてそこへ出席したのかは、また別のお話。




うふふ。
あみさまへ捧ぐ。
ちょぴりネジのユルイ人物設定になってしまった事に深く反省。


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