ええ。小心者ですから・・・。

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悠遠夜話<本編>


悠遠夜話『壱』

2010.03.16  *Edit 
▽TB[0]▽CO[1]

ここんとうざい やおよろず
とおいむかしの ものがたり
かみよのくにの ものがたり
いまではもうない ものがたり
かなしいこいの ものがたり


「ダディ~!!はやくー!!」ふたつの声が重なって
わっと走り、ふかふかのベットにぼふん。と突っ込む。

少し遅れてきた父親は優しい瞳で子供たちを見やりながら後ろ手にドアをそっと閉めた。
「さあ。二人とも もう寝る時間ですよ。もうお遊びの時間はおしまい。」

ぱん。
と、手を軽く叩き、まだまだ寝る気配のない二人の子供たちをすっぽり
毛布でくるんでしまう。
「きゃ~っつ!!」
上から二人をむぎゅっと押し付け、口を押しつけたままつぶやく。

「まったく。早く寝ないと帰ってきたマムに言いつけますよ」
「だってー」
「だってー」
一緒に部屋に響くユニゾンは
「まだ ねむくなあーい!」「なーい!」
この上もなく愛しくて可愛らしいけれど。もうこれ以上はいけない。

家庭と仕事を立派に両立させている妻と約束したのだ。
出張中は子供たちの面倒は責任もって見るからと。
だから安心して仕事に専念するんだよと。

めったにあるわけでもないが、今回の仕事ばかりは妻の代えが効かない事柄だった。
でも子供たちと旦那さまを置いての出張は幾分心配だったから、断るつもりですと・・・。
妻から聞いた時、大丈夫!ドンと任せて出張へ行っておいでと半ば強引に荷物を詰めるのを手伝った。
たった一泊二日の出張だったけれど・・・。
妻のありがたみが身に染みた・・・。

有給をとって子供たちの面倒を丸一日見た。
正直・・・こんなにキツイとは思ってもみなかった。
普段から家事も分担してやっている。
だがしかし子供たちの世話は妻が比重を多く担っていたから。

本当に双子たちの行動は予測不可能で、ちっとも一つ処に居てくれない。
一時として目が離せない。
明日はもう妻が帰ってくる。
僕の愛しい愛しい妻が帰ってくる。

「ダディ。お話して。」
「お話して。」
さて今夜は何のお話がいいでしょう?と父親が優しくほほ笑む。
可愛らしい天使たちは声をそろえてこう言った
「不思議のものがたりー♪」
「また?それでいいの?昨日も同じ話でしたよ?」
「いいのっ」「いいのっ」

毛布を鼻まで上げて、小さな手がギュッとその端をつかむ。
双子はその話が大のお気に入りだった。
昨夜もその前も・・・。ずっとその話ばかりせがむ。
ふふっと笑いながら父親はその物語を始めた。
キラキラと目を輝かせながら双子たちは父親の紡ぐ優しい声に耳を澄ませるのだった。



ここんとうざい やおよろず
とおいむかしの ものがたり
かみよのくにの ものがたり
いまではもうない ものがたり
ふしぎの ふしぎの ものがたり
ずーっと むかしの ものがたり


◆◆◆◆◆◆

小さな小さな名もない国はそこにありました。

それはまだ、人々と、人でないモノとがいっしょに暮らしている時代。
「おい。聞いたか?」
「ああ。領主さまも酷な事をなさる。まだ年端もいかない子供だぞ?」
「領主さまも人の子だってーことさ。自分のこどもは一番かわいいさ」
「だがな・・・。あの子は・・・」
「そうだな・・・不憫だな。」
「神様ってのは酷い事をするもんなんだな・・・」
「しーっ!滅多なことをいうもんじゃねえ。どこで聞かれているかわからんぞ」
「仕方ねえ。誰かは行かなくちゃならないんだ。
あの子は身よりも無いしこれから先どうなるかわからねえ・・・
山神さまの所へ行った方が幸せになれるかもしれん」

村の住人達は話を早々に終えると足早に散っていってしまった。後には枯れた雑草だけが小さく風に揺れるばかり。
夕闇が迫り道を急ぐ村人も決して裕福な身なりをしているものは居らず
どこか、酷く疲れた表情をして家路に急ぐ。

初めの年は日照りが、そして次の年にはイナゴが大発生し穀物を食い散らかして行った。そして今年また雨が降らない日がずっと続いて。
太陽がジリジリと容赦なく照りつける。
痛みさえ覚えるその光に生き物は全て動きを止めてしまったかのように
目に映る限り動く物は無い。

春にはあんなに青々とした田んぼや畑の緑も今はもう力無く頭を下げるのみで、
いつしか、山に生い茂っていた草や木も色をなくし、山のきこりの話では湧水さえ枯れてしまうのは あともう僅かではないか・・・ということだった。
このままでは、秋の実りに収穫が無く、多くの住人たちが餓えて死にゆく。
死人が多く出れば恐ろしい疫病も流行る。
連続して続く災厄に既に蓄えてあった食料ももう底を着こうしていた。
この種もみを食べてしまえば来年は一体どうしたらよいのか。

人の力ではどうしようもならない時。
それまでは鼻で笑っていた神と言う存在に全てを託したくなる。

どうか身にかかる全ての災厄をお払い下さいと。

そして大層重く煌びやかな衣装をまとった名高い神官は領主にこう告げるのであった。

「贄を捧げよ」と
神はお怒りである。神の御心をお慰めする贄を。

民草の中からひとり、鈴の年 菱の月に生まれた子供を贄に捧げて怒りを鎮めよと・・・。

四年に一度やってくる鈴の年、しかも、菱の月に生まれた子供はこの国でたった二人しかおらず、一人は強欲な領主のその娘。もう一人は早くに両親をなくしてしまった少年。

強欲な領主はもちろん自分の娘が生贄になることなど納得する筈もなく。
さっさと身寄りのないその子を生贄に決め村々に伝令を走らせてしまった。

両親もおらず、身寄りも一人として居なかったその子供には誰も助け、
かくまってくれる者などいなかったから。
村人の誰もが自分可愛さでその子供に背を向けてしまったから。
生きたまま神へと捧げられる贄となるのは当然のことだったのかもしれない。
少年はただ、領主の使いのものが朗々と読み上げる声に黙って小さく頷いた。

その国には高い高い山があり、夏でもてっぺんの雪が溶ける事無くのこっている。
深い深い森に包まれて、いつも全てを拒むように白い霞の立つ その高い山は
奥深くに踏みこんだなら最後 だれも戻ったものは居ないと言う。
一人だけ運よく戻ってこれたものが居たが、その男は正気を保っていなかったから
あの山の中で一体何が起こっているのか判らなかった。

だがしかし。
この誰も寄せ付ける事の無い山は 不思議な事に日照りでどんなに雨が降らなくても
緑がまったく失われることは無く相変わらず霞をまとって暗くそびえたっていたのであった。

遠い古からその山には神が棲み、そこは人間の考えの及ばない世界と繋がっているのだと
まことしやかに人々に囁かれていて、
麓には立派な社とそこを守る神官が据え置かれていた。

ご神託により少年はその山に棲むと言う山神様の所へ捧げられる。
「人々の願いを山神様に聞き届けてもらえるように
直に神の御元へお願いをしに行く。大変名誉な仕事。
清らかなる心を持つ者しか担えない神を慰める重要な役割」とみんな口々に言った。
立派にお役目を果たして来いと。
帰ってきたなら一生食うには困らない生活が待っていると。

大昔にやっぱり今と同じように人々に災厄が降りかかり、神官のお告げに従って贄を神へと捧げたら神の怒りがぴたりと止んで、住人に幸せをもたらしたのだと言う。
その時捧げられたのは男か女か 大人か子供か今ではもう判らないけれど、伝書には
神官の姿を称える記述ばかりで、贄が帰ってきたとは一言も書かれていなかった。

みんな判っている。贄は帰ってくるはずもない。
山にいるのは神なのかそれとも異形のモノなのか・・・・。
贄を捧げ、丸くおさまるものならばそれでいいのだ。
今自分たちを苦しめるこの災厄が払われれば 神様だって化け物だってどっちだって。


出立の日、少年は美しい絹を身にまとわされ
村人たちが懸命にかき集めた沢山の供物と一緒に輿へ乗せられた。
まるでどこかの王様へ嫁ぐ花嫁のように美しくそれは幻想的だった。

ただこの行列が、花嫁行列と違ったのは真っ暗な夜の道をただひたすら無言で進む白装束の村人たちにとり囲まれるように進んでいる事だった。

輿に乗っている少年の手と足は荒縄できつく縛られている。
その空色のひとみが伏せられたまま行列は山の麓の社へ進んでいった。

社の前に着き尚も村人は無言のまま作業を続ける。
社の奥の森の中には戒めの縄が何重にも巻かれた大岩があってその後ろには
この世と神の世を繋ぐ道があると言う。
行列よりすでに先に来て作業を続けていた村人たちが
お互いに目配せして頷き合い 無言のまま少年の乗った輿を大岩の後ろ、
ぽっかり空いた穴の中へと運びこんだ。

風がごうごうと流れている。
それはどんどんと中に吸い込まれていって戻ってくる気配は無い。
ここからは果てまでが見えないから、この穴はずっと奥まで続いているのだろう。

そそくさと作業を終わらせ、村人は少年を振り向きもせず立ち去ってしまった。
開かれた大岩がまた穴を覆う為に大人数で動かされる。
ゴリゴリと響く音を立てて完全に穴を塞いでしまった。
同時に少年は完全に外から入ってくる光を失って 一つ溜息をついた。





思えば自分は幸せだった頃があっただろうか?
物ごころついた時すでに両親はいなかったし、唯一のこった身内の
祖父母もすぐに亡くなってしまった。
小さな手に豆を沢山作って畑仕事をした。
朝から晩まで働かないとその日に食べるものもままならなかったから
読む事も書く事も出来なかった。
甘いお菓子も、しろいご飯も口にした事は無かった。

今着せられているこの着物を市で売ったなら、
一体どれだけの食べ物を買うことができるだろうか?

手を伸ばせばすぐに届くところにキラキラ光る金や銀。
そして甘く鼻をくすぐる沢山の果物はかぶり付いたらきっと得も言われぬ甘さなのだろう。
ごくりと喉が鳴る。

そんなものは自分には一切縁がなかった。
一生見るのも叶わない宝の山に今自分はいる。

手も足も縛られて。
身動きできない。
何にも手が届かない。何処へも行けない。

まるで自分が生きてきた証そのものを見せつけられるようだったから
涙が後から後から溢れてきて止まらなかった。
後も少し もうすぐ何もかも終わるから。
自分は贄なのだ
どうせ喰われて死んでしまう。
荒縄が肌に食い込む。もう感覚がなくなってきた。
早く、楽になりたかった。






おや?この少年・・・??すみません。臣さんは今回出番なしです

*Edit ▽TB[0]▽CO[1]

~ Comment ~

Re: NoTitle 

訪問ありがとうございます。無理やりな設定ですのでどうぞ最後まで 大きな心で見守ってください。ラストが書きたいが為にこのお話は出来ました。逆に言うとラストしか思いついていないとも言います(笑)  文章を書くのはとても難しいです。 香澄様 尊敬しております。
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