ええ。小心者ですから・・・。

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悠遠夜話・番外編


悠遠夜話:中嶋さんの場合: その2(再掲載)

2012.10.18  *Edit 
▽TB[0]▽CO[0]

こちらは、以前拍手にあげていたモノを見やすく修正しております。
内容は変わっておりません(>_<)





悠遠夜話:番外編
中嶋さんの場合 その2 ~はじめてのともだち~






「よう!ヒデ~・・子守り始めたんだってぇ~」

さっきまで美しい声を競うように歌っていた鳥達がガサツな侵入者の声に驚き 
それを非難するようにさえずりを止めた。
書物をめくっていた指先に当たっていた眩い午後の陽光が、
飛び立つ鳥達の揺らした木漏れ日で急に陰ると、遠くの方から自分に向かって
かなり無遠慮に掛けられた言葉から、勝手知ったる来客が、
館の主の了承も得ずに中庭に入って来た事を知る。

「おい・・邪魔だ」

いつの間にか書物と自分との間に割って入った、旧知の逆さまの顔に半ば、
ウンザリとしながら、この館の主である玄武の宮 中嶋英明はまるで
雲霞でも追い払うように、ひらひらと手を振って見せた。

「おいおいなんだよ~!」

酷ぇじゃねえか~!!!・・・
と大して傷ついても居ないくせに、大げさな身振り手振りで
憐みを引こうとする見知った顔に、大きく一つ溜息を浴びせると、中嶋は
眉根を寄せたまま心底嫌そうに書物をゆっくり閉じた。

「喚くな・・五月蠅い・・」

「へっへー」

にやりと笑った友人は断りもなしに、どかり・・・と中嶋の向かいに陣取って
卓上にあった可憐な細工を施された青磁の茶器に手を伸ばし、
微塵の遠慮もせずドボドボと乱雑に茶をついで、一息に飲み干した挙句、 
盆にこんもりとのせてあった焼き菓子を、鷲掴みにして当然の様に 
片っぱしからガツガツと平らげて行ったのだ。

「おい・・丹羽・・・」

「ん~」

子供の様に両手いっぱいに焼き菓子を持ち、次々と口へ頬張っていた丹羽と呼ばれた
客人は、このいつも無愛想な友人の傍らに滅多に置いてある事のない甘い菓子に夢中で
不穏な空気が辺りの温度を、ひんやりと下げ始めていた事に全く気が付かないようだった。

!!!!!

「っってええええ!!!!」

ごごっっ!!と鈍い音が自分の頭蓋から響き、眼から火花が飛び出た所で丹羽が
やっと焼き菓子を頬張る事を止め、向かいに陣取る友人を見てみれば、
口端をひくつかせ、額に青筋を浮かべている怜悧な瞳が硝子越しにこっちを睨んでいる。

「・・誰が。喰っていいと言った?」

「っ痛ぇな~!!菓子くれぇいいじゃねえかよっ!!」

どなり声を上げたせいで、まだ口の中に残っていた菓子屑が、
未だ拳を解いていない中嶋の頬の辺りに飛んだ瞬間。 
また丹羽の目の前で、ちかちかと派手に火花が散った。

「~~~~ぐおおおおおお」

じたばたとそこらじゅうを巨躯が転がり回るのを横目で見やってから 
ふんっ・・と鼻を鳴らした中嶋は、手元に会った呼び鈴を優雅に一振り、 
りりん・・・と鳴らして侍女を呼びつけると、また、
早々に見目麗しい新しい焼き菓子を盆いっぱいに用意しなおさせたのだった。
 
「なんだよ~。まだあるんじゃねえか・・・」

ズキズキと痛む頭のてっぺんを摩りながら、身体中を芝生だらけにした丹羽が
口を尖らして・・ケチケチすんじゃねえよ~・・
とだらしなく地べたに座ったまま不平をぶちまける。

「・・ふん。まだ居たのか?」

「なっ!!!」

気のせいか、いつにもまして容赦のない友人の痛烈な攻撃に
一瞬たじろぎそうになった丹羽だったが、ここで尻尾を巻いて帰る訳には行かずとばかり
やおら立ち上がり、 今、仙界中で噂になっている事の真相を
目の前の人物に問いただす事にした様だった。

「なーなー・・玄武に隠し子が居るってもっぱらの噂だぜ??」

「・・だとしたら?」

「でええええ??マジかよっっっ」

・・・・声がでかい・・・・

まったく・・・この男の言い様は何とかならないものだろうか?

中嶋は半ば丹羽から顔をそむけると、あからさまに眉を潜め
嫌悪感を露わにしてみせた。

天空の守護者。四神将の内が一人は青龍。
彼らは水と雷を司り、仙界の中でも天帝に一番近いと言われる程の実力を持つ龍の一族だ。
歴代の長の持つ強大な戦闘能力と、武闘派一族で構成される統率の取れた
精鋭集団を擁する正に天空の番人。 
その青龍一族が総領息子がこの丹羽哲也だった。

文武両道に秀で豪放磊落。 
さらには人望も厚く、巷では青龍一族の末は大安泰と囁かれているのが 
今、自分の目の前で、頭のてっぺんに大きなタンコブを作ったまま
うかれた巷説の真相を問いただそうと、必要以上に瞳をキラキラと輝かさせて
自分を詰問しているこの男なのだ。

この人物、貴族中の貴族のくせに人間の流俗にひどく関心を持ち 
人界で流行りの乱れた言葉を好んで使い、しょっちゅう人界に降りては
多くの人間とともに夜を徹して酒を酌み交わし、今は博打とやらに傾倒しているらしい。
 
まったく・・・大安泰が聞いてあきれるな

さっきから自分は一言も口を利いていないのに、 
どこの女に孕ませたんだ?とか、仙人なのか人間なのか?とか 
水臭いじゃないか友達だろう??とか、勝手な事を
ベラベラと一方的にまくし立てているのだ。

「丹羽・・・・」

「で?で?その子は?今ここにいるのか?なぁなぁなぁ。会わしてくんねぇ?」

「おい・・・丹羽・・・」

「もったいつけんなって!!俺とお前の仲だろ??」

・・・嗚呼・・・

そうだ・・この男は出会った時から人の話を一切聞いていなかった。
今だってさっぱりだが。

他の仙人達が見たなら、そのまま卒倒しそうな程の中嶋の冷たい一瞥も、
恫喝まがいの言葉での非難も、ついには実力行使の暴力でさえ、丹羽と言う男には
全く無意味なのだと言う事を随分と長い時間を掛け、つい最近ようやく中嶋は理解した。

きっとこの男は自分の欲求を全て満たすまで、ここに居続けるんだろう。
この屋敷の静かな空間を乱され続ける事は、中嶋にとって大変に迷惑極まりなかったから 
大きく諦めのため息を吐くと、観念したようにどかり・・・と身を椅子へと投げ出した。

簡素だが重厚な椅子の背もたれに寄り掛かり、その長い脚を組み直すと 
目の前でにっかりと白い歯を見せ、満面の笑みを晒している友人を視線だけで見上げる。
そして、ほんの少しだけ躊躇してから、その名を呟いたのだ。

「・・・啓太・・」

とてとて・・・と小さな足音が長い渡り廊下を段々に近づいてくるのが聞こえる。
やがてその足音が止まり、代わりに屋敷から中庭に続く扉が開かれる音がした。

「おかえりなさいませっ!!お館(やかた)様っ!!」

丹羽は大きく目を見開きしぱしぱと二三度瞬きを繰り返した。
なにか今、目の前を横切った気がしたのだ。
やがてすぐ、いつの間にか目の前に腰を下ろす友人の膝の上にちょこんと座る 
まだ幼い少年を見つけたのだった。

「良い子にしていたか?啓太」

「はいっ!お館様っ!!」

返事をする度にぴょこぴょこと動く、頭の先から真っ直ぐに伸びた長い耳。
その耳は少年の頭髪の色と同じ明るい茶色で、ふわふわの柔らかそうな綿毛で
覆われていた。

無愛想な友人を膝の上から懸命に見上げるその瞳は、一点の曇りもない空の青だ。
頬はまろやかな桃色で、指先で押し付けたならきっと綿菓子のように柔らかいに違いない。
そして何とも可愛らしいのは、意図して作られた衣の切れ目から覗く
丸くて小さな尻尾らしきモノで、それが時折りぴこぴこと存在を主張して動く様だった。

「おい!!長耳族かっ!!」

突然に向かいの席に座っていた巨躯が、立ち上がり大声を張り上げたのに
その少年は酷く驚き、慌てて中嶋の胸元に顔を埋めると、長い耳をぺたんと折り曲げてしまった。

「・・丹羽・・啓太が驚く・・・」

丹羽に低く放たれた言葉に、この上なく冷たい気配を感じて視線を移して見れば
靉靆(あいたい)の向こう、視線だけで殺せそうなほど物騒に光る月色の眼が見て取れた。

「わ・・わりぃ・・・」

冷気に気押されそうになる。
すぐに呼気と一緒に吐きだされるように小さく呟かれた言葉と共に、
丹羽はたった今伸ばした足を折り、椅子に力無く腰を降ろすと、
バツが悪そうにバリバリと頭を掻いた。

「・・・啓太・・奴は青龍の宮の丹羽だ」

殊勝に小さくなってしまった丹羽を目の端に映したまま、中嶋の口から諭すように
優しげに、膝の上の塊りに言葉が落とされた。
すると、中嶋の胸元に深く埋められた顔がおずおずと丹羽の方を探る様にして振り返り
同時に茶色の長い耳もゆっくりとだが上向きに直り始めたのだった。

それにしても・・・。

「あの中嶋」が大きな手で小さな肩を撫でる様にしてあやす様は、
丹羽にとって大変に衝撃的な光景であった。 

相当に長い間一緒に居たが、こんなにも優しげなこの男を初目手目にしたのだから無理も無い。
例えそれが他人が見ても判別叶わない程、微弱な変化だったとしても。

おそらくはここに居る、ただ一人の為に用意されたであろう
その卓子に山盛りにしてある焼き菓子を、少年が大切そうに小さな口に運んでいるのを 
実に穏やかな様子で見つめている中嶋の、そんな姿を目の前にしてしまえば、
何やら胸騒ぎさえしてくる。
仙界の中で最も長命な一族であるこの殺しても死ななそうな友人の死期が 
もしかするとすぐそこへやって来ているのではないか?という一抹の不安だ。

それくらい・・・・あり得ねえ・・・

丹羽にとって中嶋の行動一つ一つが、それほどまでに超弩級の衝撃的な光景だったのだ。

だっていつもはすぐ殴るし、蹴るし、嫌みは山盛りだし、
人使いは荒ぇし、陰険だし、無愛想だし、凶暴だし、理屈臭せーしよー
しかし・・こりゃ、・・へへ・・・
はたから見たら完全に人攫い以外の何者でもねえぞ・・・

「・・・丹羽・・全部聞こえているぞ・・・」

「げっ!!」

大慌てに慌てて、身の危険を察知しとっさに常日頃狙われている頭頂部を
防御の姿勢に入った丹羽だったが、少し経ってもいつものように 
痛烈な衝撃が襲ってくる事は無かった。

「?へ?」

・・・・・くすくすくす・・うふふふ・・・

そっと眼前に防御の為に交差させた太い両腕を解いて、笑い声のする向かいを見てみれば
小さな口許に小さな両掌をあて、可愛らしくほほ笑む長耳族の少年と目があった。

少年は丹羽と眼が合うと中嶋の膝の上からぴょこんと飛び降り、豊かに生えそろった
青々とした芝生の上を、とてとて・・・と数歩丹羽に近づいて来る。 
その様子に疑問符を盛大に飛ばす大男を丸っと無視して、
長耳族の少年は大きな茶色の耳をぶんと振り、
それはそれは勢い良く上半身全部を折り曲げて、頭を下げたのだ。

「お初におめにかかります!せいりゅうのみやさま!おれ、けいたです!!」

「・・・あ?ああ・・・・・・」

今下げた頭を又同じように勢い良く上げて、にっこりと微笑むその顔に、
丹羽は・・よ・・よろしくな・・とぎこちなく返しながら、
何故だか頬が突然に上気するのを感じて、一人アタフタとしていた。

おいおいおいおい!!・・・なんつー・・・生き物だ・・・

「おい。変態・・・啓太はやらんぞ・・・」

「な!!!てめぇっ!!!」

恐らくはすっかりと呆けた顔をしていた所に、かなり衝撃的な力を持った言葉が
丹羽を襲った。

いつの間にかまた、中嶋の膝の上に納まっている長耳族の少年の耳元に
眉根を寄せながら、さも恐ろしいと言った顔をし、完全に芝居がかった様子で 
少年に小声で諭す玄武の宮 中嶋の姿が丹羽の目に入る。

「いいか?啓太・・・気をつけろ。奴は危険な思考の持ち主だ・・・」

「えと・・はい・・お館様・・・」

「そうだ・・いい子だな。啓太」

大きくてしなやかな長い指が、ふわふわの茶色の髪の毛を優しく撫でれば
眼を閉じて、気持ちよさそうにしている長耳族の少年だったが、
そうっと後ろにいる丹羽を伺うようにした空色の瞳が、実に不安そうに陰ってくるのだ。
少年はすっかりと中嶋の言葉を信じて怯えきっている。

「お!おいそこ!!間違った情報を伝えてんじゃあねえ!!」

「ふん・・・今 啓太をいやらしい眼で見ていただろう?」

慌てて丹羽はブンブンと腕を振り回し、抗議した。

「馬鹿かっ!!俺にはそんな趣味は無えっ」

「・・そうか?」

「そうだっ!!大体変態はてめぇの方じゃ・・・」

「啓太・・残念だな・・・生憎、奴はお前とは仲良くなれんそうだ・・」

「ヒデ!!ってめえ!!んなこた一言も言ってねえぞっ!!」

自分の頭上の遥か上、ぽんぽんと繰り出される言葉を 
せわしなく左右交互に見つめる少年の顔が、段々と不安そうにゆがめられ始めた頃 
ようやくそれに気が付いた大男二人は、威嚇し合いながらも 
やっと、きまり悪そうに言い争いを止めたのだった。

「おい・・啓太。ヒデが何と言おうと今日から俺とおまえは友達だ。よろしくな?」

にやり・・と卓子へ片肘をついて、浅黒く日に焼け筋肉が隆起した太い腕が
にゅっと・・・啓太の目の前に伸びてくる。

啓太はその手と、夏の太陽の様に屈託のない笑顔を晒す丹羽の顔を代わる代わる
見つめ、やがて最後に中嶋の顔を確認するように見上げた。

やれやれと観念したように、こめかみを抑えたまま目蓋を閉じた中嶋が
小さく二度頷くと、啓太はそれはそれは嬉しそうに、にっこりと微笑んで
丹羽の掌の半分にも満たない小さな小さなその手をそれに重ねたのだった。


何時の間にかさっき飛び去って行った小鳥たちが戻って来て、
優しく麗しいさえずりを披露し始めている。

眩しい午後の木漏れ日の中。 
大男二人と小さな少年の奇妙で穏やかなお茶会が始まった。



うふふ・・・・王→啓←中??????しかもショタ???
ああ・・・禁断の香り(笑)




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