ええ。小心者ですから・・・。

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悠遠夜話・番外編


悠遠夜話:中嶋さんの場合: その3(再掲載)

2012.10.18  *Edit 
▽TB[0]▽CO[0]

こちらは、以前拍手にあげていたモノを見やすく修正しております。
内容は変わっておりません(>_<)


悠遠夜話:番外編



中嶋さんの場合 その3~砂の謳~
啓太君と出会う前のお話




ご注意:オリキャラがんがん出ております。
※中嶋さんのお爺さんと通りすがりの爺(笑)の話。
なんでもOKどんと来いなお嬢様のみどうぞー







しっとりと夜露の落ちた藍色の髪が、なお艶やかに月光を浴びて輝いている。
感情の起伏の見えない冷えた蒼い瞳の眼下に見下ろすのは、
生き物の息吹の全く感じられない不毛の地だ。

風が、ありったけの砂埃を巻き上げて吹き過ぎていき、見渡す限りの乾いた砂丘は 
蛇のうろこのように波打ち、次から次へと姿を変えて行く。

雲間から荒涼とした闇夜を照らす優しい月光は、唯一の道しるべ。
びょうびょうとすすり泣く砂漠を渡るこの風は、鎮魂歌。

風たちは謳いながら、億千の死人の魂を運び、
いつ見えるともしれない来世への旅を続けるのだ。



「なあ・・爺(じじ)。俺の求める物は一体どこに在るのだろうな・・・」

わずかな草さえ生える事のない、硬くゴツゴツした岩に腰を下ろしていた
漆黒を纏う長身の男は、その闇を照らす蒼い月のような冷たい瞳で
遠くを見つめたまま、斜め後ろへ立つ人物へ言葉を漏らした。

しぇしぇしぇ・・・と枯れ葉の擦れるような音がして、
男の腰ほどしか身の丈がないその老人は、どうやら笑っているらしかった。

・・・らしかった・・というのはもうすっかりと頬骨が削げ落ち、
所々歯も無くなってしまったその顔が全く酷い有様で、 
張りの無くなってしまった肉に、深く深く刻まれた皺が
老人の表情を判別できないモノにしていたからだ。

長身の男、玄武 中嶋英明のすぐ近くに陣取るその老人は。かなりの老齢である。
だがしかし、不思議な事に余命いくばくもないその枯れ木のような老人は
地面を舐める様にして曲がった腰を、手に持った杖でようやく支えて立っている
という風に見えのに、奥の方に落ち窪んでしまっている目の玉は 
酷くぎょろぎょろとして、若者の様な生気に満ち満ちているのだ。

「存外・・若のすぐ近くに転がっておるやもしれませぬのぅ・・・
この身も未だ探し物の途中ゆえ、爺(じじ)にこそ教えて頂きたいものじゃ」

老人はそう一人ごとのように小さく呟くと しぇしぇ・・・とまた枯れた声で笑う。

「・・ふん・・・」

片眉を少しだけ上げて、中嶋は喰えない老人にやっと一瞥をくれると、
強い風にわずかに乱れた砂漠の夜より尚黒い漆黒の長衣を、ぐいと左手で引き直し
それから、それを頭まですっぽりと覆ってしまった。

「さて・・・ではまた 探し物を見つける旅へと立ちまする。
この次 まみえる事叶いますのは 百年先か・・千年先か・・・。」

とん・・・と老人が手に持った杖で地面を軽く小突くと、 
縮こまったその小さな体は、ずぶずぶ・・・と地面へと飲みこまれ始める。

「では若・・・息災にお過ごしくだされ・・・」

頭一つ分残った所で、又、ぎょろりと眼だけを動かしてから老人はそう呟くと
口端だけ、にやり・・と笑って地面の中へと消えて行った。

ほんの一瞬だけ風たちの慟哭が止んで、静寂が砂漠に落ちた。
ただそれは僅かばかりの時間で、中嶋が一つ嘆息を吐きだす頃にはまた
強い風が砂丘を一つ越え、二つ越えして、
丘を谷へ・・・ 谷を丘へ・・とその形を見る間に別のモノへ変えて行っている。



天空の守護 四神将がうちの一つ。 
玄武が司るは母なる大地。 
生きとし生ける物 そのすべての命と時の支配者 
守り慈しんで育てるのも、その輝きを心のままに握りつぶすのも 
唯一 玄武のその手


玄武一族は仙界で最も長命な一族であった。
不死にも近いその長すぎる命。 
永遠と呼べるほどに長い時間が、その身の上を流れて行くのだ。

かつては栄華を極めた一族も、あまりに長く与えられ過ぎた時間の中で 
虚無にからめ捕られて、いつしか衰退していった。

もう、うろ覚えの父や母、そして姉さえも随分と遠い昔、その命を風に舞わせた。
命の泉を虚無に喰われたのだ。

ただ一人 玄武一族の直系筋として残された幼い中嶋は、
年老いた祖父に大切に育てられた。

一族のほとんどが与えられた生命の時間をもてあまし、心を虚無に喰われて逝く中。
気の遠くなるような年月を、一体どうやって祖父は生きながらえて来たのか?
幼い中嶋は不思議でたまらなかった。

自分もいずれは虚無に囚われ、喰われ、やがて狂って死んでしまうのだろうか?
暗い寝床の中で一人きりそう考えれば、恐ろして夜も眠れなかった。
目を閉じれば今すぐにでも、虚無がやって来そうで歯の根が合わなくなるのだ。

中嶋が、自分の小さな両肩をきつく抱きしめ、寝床の中小さく縮こまって
ガタガタと震えていると、不思議な事に祖父がどこからともなく、ふらりとやって来た。 
そして、中嶋が落ち付いて眠りに着くまで皺だらけの大きな手で頭を撫でてくれるのだ。

「?英明・・何故、怯えておる?」

「・・きょ・・・虚無が・・恐ろしいのです」

寝床で丸まる幼い孫を見て 祖父はいつも笑って言った

「ふむ・・・虚無が怖いか?」

「お・・・・おじい様は恐ろしゅうは無いのですか?」

「ああ・・・恐ろしゅうは無いのぉ・・・」

「何故でございますか?虚無に心を喰われれば死んでしまうのですよ?」

「・・ふふ・・・なら喰われぬようにすればよい」

「喰われなくて済む方法があるのですか??」

「ふむ・・・無くはないの・・」

「おじい様!!ぜひ その方法をわたくしにお教え下さりませ!!」

「教えて欲しいか?」

「はい!!」

「特別じゃぞ?」

夜毎襲うこの恐怖から逃れたい一心で、袖先にぶら下がり
必死になる孫を面白そうに見やりながら祖父は、実にもったいを付けて
神妙な顔をしながら決まって言うのだ。

「失くしたモノを見つければよい」

「???失くしたモノ?」

「そう・・・失くしたモノじゃ・・・」

「それは一体・・なんですか?」

「さあ??何であろ?」

「??」

「英明の失くしたモノと 儂の失くしたモノは同じとは限らん」

「?????」

謎かけの様な問答を繰り返すうち、いつの間にか全身の震えも止まっていたものだ。

解ったような解らない様な、祖父のもっともらしい言葉に
いつも首をひねりながら、何とか答えを聞き出そうと躍起になる中嶋が
寝着くまでのその間、祖父はずっと側に居てくれた。



祖父が言うには玄武一族はみな、どこか一部が欠けているのだと言う。
それは永遠にも等しい命を授かった代償なのか、
それとも遠く過ぎる時間の彼方に、いつの間にかはぐれてしまったものなのか。
もしかするとそれを探す為だけに長い年月を与えられたのか
一族が僅かとなってしまった今はもう、誰にも解らない。

だが中嶋の祖父はどうやら、自身の欠落したそれを見つけたらしかった。
実に高齢であるにもかかわらず、心を虚無に喰われる事無く
日々ひょうひょうと、極穏やかに中嶋の側に在るのだから間違いはない。

その証拠に数百年前中嶋の腕の中で、与えられた命の泉の全てを使い果たし、 
生涯、虚無を心に喰らわせる事無く、風に運ばれ消えて逝く最後の瞬間まで。
本当に祖父は実に誇らしげで、満足そうだったのだ。


あれからずっと長い事、中嶋は祖父の言う「失くしたモノ」を探し続けていた。
相変わらず自分のそれが何かは解らない。

本当に実に滑稽な話だ。
何を探しているのか解らないくせに、この身はそれを求めて止まないのだ。

「求める物を得た時 それは全て満たされる・・・
              満たされたなら・・もうそこに虚無はない」

そう言って優しく笑った祖父の蒼い瞳を今でもこうして時折思い出す。

先刻、地面深くへ消えて行った老人は一族の出で、 
祖父の古くからの友人だった。
彼もまた「失くしたモノ」を探し続けているらしい。

すでに充分に生きたその身体は、老曝(おいさばら)えてなお、
壮絶なほどに生への執着を見せる。

玄武一族は長命だが不老不死ではない。
他の仙人よりもずっと、その身の上に流れる時間が緩やかなだけなのだ。

時が過ぎれば、やがていくら仙人の身だとて肉体は限界を迎える。
朽ちていく己が手足を目にしてなお、精神は生き続けるのだ。

長く生きたある者は、生きたまま朽ちる現実に耐えきれず精神を崩壊させる。
また、あるものは若くして与えられた時間の長さに酷く絶望する。

親しい友が、愛しい恋人が他の一族ならば、彼人が死んで消えてなお 
自分一人が永遠にも等しい時の中に置き去りにされるのだ。 
そしていつしか、与えられた天命を全うする事無く心が虚無に囚われ
狂い死んでいく。


だから、中嶋の祖父の様な年嵩の存在は本当に少数だった。
玄武一族の中、 ほんの一握りの者達だけが自身の欠けた一部を見つけて 
狂う事無く一族の未来を細々と繋げて来たのだ。

だが、どうやらそれも終わりらしい。
玄武一族の直系は、自分一人になってしまったのだから。
亜種、亜属は多数あるが頂点に立つべき純血は中嶋が最後の一人なのだ。

幼いころと違って、今となってはさして死への恐怖は無かった。
さっきの老人のように並はずれた生への執着もない。
ましてや一族が滅びゆく事にしても、大して関心はない。

事実そうなんだから、自分一人があがいた所でどうしようもないし
あがこうと言う気慨さえもない。

そんな出来事は仙人が統べる自然界で、どの時代でもあったではないか。
自分達だけが特別なんだと思うのは大層な間違いだ。
弱い物 適応できない物が淘汰される・・・それは当然の摂理なのだから。
由緒正しき四神将 玄武一族の大尾を務めるのが
自分のこの身かと思えば、なにやらそれもまた一興。
 

しかし一方で、祖父の言った「失くしたモノ」が中嶋の心を捉えて離さない。
自分がそれを得た時、どうなるのか知りたい。

「求める物を得た時 それは全て満たされる・・・
              満たされたなら・・もうそこに虚無はない」

幼い自分に、呪文のように優しく降り注いだ祖父のあの言葉は
長い年月をかけ、今はもう甘美な震えさえ持って中嶋の心の底へ積もっていた。



また びょうびょうと風が啼く

中嶋の薄くて形の良い唇に、そっと長くしなやかな指先が寄せられた。
柔らかな指の腹に、なんの躊躇する様子もなく突然、犬歯が突きたてられ咬み切られると
その傷口から見る間に、ぷっくり・・・と血液が盛り上がってきた。

やがて飽和を迎えた雫は、ついにその指先を離れて
ぽたり・・・・ぽたり・・・・と砂へと吸い込まれていった。

その様子を視線だけで追っていた中嶋は、未だ滴る指先の血液を 
また口許に運んで、赤い舌でぺろりと舐め上げた。 
静かに下ろされたその漆黒の影の衣からのぞく指先の傷は、滑らかで 
すでになんの跡形もなくなっていたのだった。

「・・少しばかり・・・風が五月蠅いからな・・・」

強い風に大きくはためく漆黒の長衣を面倒くさそうに手で引き直すと、
中嶋は今さっき血液を滴らせた場所へと跪き、ほんの小さく息を吹きかけてから
手をかざした。

月光が反射している靉靆(あいたい=眼鏡の古語)越しには判別が尽きにくいが 
伏せられたその瞳は、僅かばかりだが冷たさが消えているように見えた。

そして、衣に着いた砂埃を払いながら立ち上がった中嶋は 
その鼻先に架かる靉靆(あいたい)を長い指先で押し上げるとゆっくりと背後を振り返る。

振り仰いだその先には、いつの間にか夜の帳が消え始め東の空が薄紫色に染まってきていた。
あと数刻もすれば夜が明けるのだろう。
陽が昇れば、容赦ない熱がまたこの砂漠を照りつけるのだ。

「後は・・おまえ次第だ・・」

小さく呟きながら視線だけ足元に落とし、先ほどまで腰を下ろしていた岩を
とん・・・とつま先で蹴りつけると、その漆黒の影がゆらゆらと陽炎のように揺らぎ 
やがてその姿は静かに消えてしまった。





夜明けまであと少し。 
風たちは啼くのを止めた。
砂漠に起こったわずかな変化にそっと息を潜めたのだ。

あの夜より尚黒い漆黒の長衣を纏った男が消えた後には、こぽこぽと音を立てて 
いつの間にか豊かな水が湧き出ていた。
そして男の血が滴った場所には小さな緑が生まれていたのだ。

この広大な砂漠に比べれば、それは涙の一滴のような弱く頼りない大きさだったけれど 
決して休むことなく力強く、水を吐きだし続けている泉と
いつの日か苛烈な日光を遮るほどに成長した緑は、砂漠に生きる物全てを 
優しく庇護してくれる事になるのだろう。

やがて気の遠くなるような歳月が過ぎれば、この緑が広がり 
砂漠さえも呑み込んでくれるのかもしれない。




天空の守護 四神将がうちの一つ 
玄武が司るは母なる大地 
生きとし生ける物 そのすべての命と時の支配者 
守り慈しんで育てるのも 
その輝きを心のままに握りつぶすのも 
唯一 玄武のその手

冷たくて 優しい 玄武のその手





おお!!何だか書いている内に中嶋さんが好きになってきた(笑)
あ・・別に嫌ってたわけじゃ・・・・







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