ええ。小心者ですから・・・。

スポンサー広告


スポンサーサイト

--.--.--  *Edit 

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


*Edit

悠遠夜話・番外編


悠遠夜話・番外編~王様の話~:::鏡の中の十三夜:::

2013.02.25  *Edit 
▽TB[0]▽CO[0]

このお話は悠遠夜話設定のお話になります。
完全パラレルなのでご注意ください。
そんなのぜんぜんOK
ばっちこーーーいなお嬢様のみお進みください。















おかしくなってしまったのは、あの瞳に見つめられた時。 
種火のように、奥底でくゆり始めたその炎は 
ゆっくりとこの身を舐める様にして、いつか全てを焼き焦がしていくのだろう


男がふらりとこの楼閣にやって来た夜は、滅法派手な宴が開かれた。
それは随分と型破りなお座敷で、雑用係のお端はちろん、
普段は客の目に触れる事の無い下男下女まで巻き込んだ、
飲めや唄えのどんちゃん騒ぎだった。

こんな破天荒なお座敷なんて、
花街一格式高い鈴菱楼では誰もが想像出来なかった事だが
いつのまにか男の持つ資金と、
何よりもその人懐っこい笑顔がそれらを可能にさせていた。
身分の上下なく誰もかれもが極上の肴を味わい、大量の盃を煽る。
やがてその男は夜が更ければ決まって、たった一人の太夫だけをその腕に囲い
奥の寝所へと消えて行くのだ。
褥の中ではさぞや濃厚な営みが行われているのだろうと
お開きになった座敷では誰もが明け透けに口にした。

だがしかし、男が太夫を抱いたのは初めの一度きりだ。
羽根の様な口づけを一つ、二つ、落とす事はあっても、又あの晩の様に
力づくでその体を開くことはけしてなかった。


それは啓太にとって、相手に身を任かす事をしないまま大金が懐に入り、
且つ、楼閣の者たちにも気付かれる心配のないという願っても無い最良の方法だ。
丹羽がわざわざ夜も更けぬうちから帰るのだって、
自分の事を慮っての仕業に違いない事ぐらい啓太にだって十分解っていた。
だけれど、判っていてもなおそれすら何だかやたらと癪に障って、
どうしたって丹羽の前では、ぶすくれた顔をせずにはいられなかったのだ。

『啓太・・・なあ・・・俺の事を好きになれ・・・』

そう甘く囁く、優しい声がこの耳に残ったまま離れない。
出会った晩に力ずくで体を貪ったくせに、今更どう好きになれと言うのか。
拒絶するたび、酷く傷ついた顔をして見せるけれど、
泣きたいのは手籠めにされたこっちのほうだ。
今度こそ絶対に会ったら文句を言ってやろう、と心に決めた啓太だったけれど
あの日、窓の向こうへ消えてしまった丹羽はそれきり啓太の元へやって来はしなかった。
一体、あれからどれ位経ったのだろうか?
やはりいい加減、この頑なな態度に怒ってしまったのだろうか?
それとも、もうこんな自分に飽きてしまって、
どこか別の遊郭へでも通い始めたのだろうか?
そしてまた、誰か別の人を腕に抱いてこの月を見上げているのだろうか?

「・・・っ。」

そう考えれば、何故だかズキズキと胸の奥の方が痛んだ。
一度その痛みに囚われてしまえば苦しくて、苦しくて、息が出来なくなる。
その痛みからなんとか逃れようと横になっても、到底寝る事は叶わず
よしんば、とろりとまどろみ始めても、決まってあの男の悲しそうな顔が
ちらついて、すぐに目が覚める事を繰り返すのだ。
食欲だって一向に湧く様子は無く、もう手足の自由さえも儘ならないような気がして、
随分と長い間、頭から布団を被って伏していたのもそのせいだった。
青くなって大騒ぎする女将には気の毒だったけれど、
本当に、何もする気が起きないのだから仕方ない。

「疲・・・れたぁ・・・。」

ついさっき稽古がてら戯曲をほんの数曲踊っただけだと言うのに、啓太はクタクタだった。
ふう・・・。と、ことさら大きなため息を吐き、そのまま倒れる様にして
寝所へとその身を沈ませる。

どさりと派手に音を立て、仰向けになったままピクリとも動かない啓太の頬を
真っ暗な部屋の中にそっと入り込んだ月明かりだけは、いつもと変わらず
優しく撫でるようにして照らしてくれた。
夜通し眠らない花街でも、高い楼閣の窓から眺めるこの月だけは故郷と変わらず蒼く美しく優しい。
今日は十三夜。
すっかりと月は明るさを増しその身を肥えさせている。

故郷は変わり無いだろうか?
父も母も息災だろうか?
姉たちは、俺を思って泣いてくれているのだろうか?
・・・皆は今でも・・・、まだ俺の帰りを待っていてくれているのだろうか?
啓太はそっと薄目を開けて、頬を撫でる月明かりに問うた。



::::::::::::::::::::::



「どういう事ですか!!長!!」

「・・・何事じゃ?騒々しいぞ啓太。」

「俺・・・俺・・・あんな事、絶対に納得できません!!」

「ほう。何がどう会得できんのか?」

「・・・何がって・・・その・・・つまり・・」

「はてさて、可笑しなことじゃのぉ。解らんくせに難癖付けよるか?」

「えと・・・その・・・横暴です!!俺の意見もなしに、こんな事。」

「・・・ふふ。」

「・・・な・・なにが可笑しいんですか?」

「そなたは愛いのぅ・・・ほんに愛い奴じゃ・・・ははははは。」

「お・・・長!!」

「じゃが、変えられん。もう決めた。」

「そんな!!」

「嫌だと言うならここから出て行けばよい。
もっともお前の様な若輩者がこの里を出て暮らして行けようとは到底思えんがのぅ
・・・・まあ、精々悩め。はははは。」

「お・・・長」



::::::::::::::::::::::::::::::

高く笑う族長の声が今でも耳に残っている。
それは明らかな嘲笑とわずかな憐憫の情を含んだ嗤いだった。
一人では何も出来るまいと、言外に言われたようで
啓太はその日のうちにたった一つの荷物である琵琶を抱えて故郷を飛び出したのだ。

望んで捨てた故郷だった。
幾つもの掟に縛られた生活など、もう沢山だった。
ただ己の思うがまま、風のように自由に生きたかっただけだ。

山を下り、目にしたものは見るもの聞くもの全てが新鮮だった。
毎日が楽しくて仕方がなかった。
横暴で理不尽な族長のいいなりになどなるものか。
古めかしいしきたりや、頭の固い一族に媚びへつらうなんて願い下げだ。
琵琶とこの身一つあればこうやって好き勝手、面白おかしく生きていけるのだ。
なんだ。意外と簡単じゃないか。
これならば、この先ずっと一人で大丈夫だ。
そうだ。
きっと・・・大丈夫だ。
そう。思っていた。
いや・・・思い込もうとしていたのかもしれないと、今頃になってようやく気づく。

ああ、今日は殊更に生まれた郷が懐かしくてたまらない。
こうやって一人きり、目を閉じて月明かりを浴びれば、
なんだか故郷に戻った気さえして酷く心が落ち着くのだ。

絶え間ない虫の声、豊かに生えそろった草の葉ずれの音。
清廉な川のせせらぎに・・・甘い甘い風の匂い。
自分にとってそれら全ては、取るに足らない日常の景色だった。
だがしかし、今その全てはこの欲の街に存在し得ないものだ。

『啓太・・・。』

不意に故郷を懐かしむ啓太の瞼の裏に、男の広い背中が閃光のように瞬いた。
それは丹羽を最後に見送ったあの夜の記憶だった。
どうして今、あの夜の事が浮かんだのか啓太にはわからなかったけれど
いつだってギラギラと強い光を宿した瞳が、時折り見せる寂しそうな様子を思い出す。

そうだ。
一体いつからだったのだろう。
黒曜石のような丹羽の瞳の中
自分一人だけが映る事実に、酷く満ち足りた感情を持つようになったのは。

「あ・・・れ?・・なに?」

啓太はぎくりとその細い身を強張らせた。
僅かに顔を傾けたその先にある、大きな姿見に映る自分を見つけて
初めて今自分が泣いている事を知ったのだ。
鏡の中の自分はなんて悲しそうで、なんて寂しそうなのだろうか。
次々と頬を伝う大粒の涙は、絶える事なく流れ続けて敷布を濡らしている。

「――――っ・・・えっく・・。・・ふ・・・・。」

その夜、啓太は泣いた。
誰はばからず大声をあげて泣いた。
泣いて、泣いてぐちゃぐちゃになって、
やがて声も涙も枯れたところで漸く気が付いたのだ。
この手からするりと零れてしまった大切なものの事を。
抱きしめたくても今はもう、届かない大切な大切なものの事を。
心の奥底に深く埋もれたままくゆる、小さな小さな種火の事を。



:::::::::::::::::::::::::::::::::::::







深海の屋敷に低音の声が響く。

「おらおら~。きりきり歩けぇ~」

巨躯を揺らし青龍族当代頭領の顎が尊大にしゃくられれば、その後に
じゃら・・・ずるる・・・。と地面を引き摺る金属の音が続いた。

「るっせぇ!!クソ親父っ!!大体なんなんだ??この扱いは!!」

発達した犬歯を露わにし、族長であり父親でもある竜也を誰はばかることなく
威嚇して見せたのは、目の下の隈も痛々しい青竜一族の総領息子 丹羽哲也であった。
相変わらず周りには一族の黒装束がとり囲み、その様子はさながら
罪人の護送の呈であったが、今日丹羽がその身に纏うのは
いつもの簡素な衣ではなく、重厚で煌びやかな一族の正装だった。

「あぁ??てめえにはソレくれぇが似合いだろ?」

ふふん。とせせら笑って見せた竜也だったが、
息子の両腕を括っている強固な手錠と、その目の下に黒々とある隈を素早く見比べると
呆れたように一つ小さな溜息を吐いた。
まったく我が息子ながら本当に馬鹿みたいな体力と根性だ、と。
あの太い手首にあるのは、意識の有るうちは昼夜問わず、
体力と気力を吸い取り続ける咎人用の手錠なのだ。
朝日が昇る頃にはとっくに白目をむいて倒れていたっておかしくは無いのに
それを丸2日はめた状態で、まだ立って歩けるとはいやはや全く正気の沙汰ではない。
しかも超重量級の鉄球込みで、だ。

・・・やぁれやれ・・・俺の隠居も間近ってか・・・

胸になんとも複雑な思いがほんの少しだけよぎって
竜也は至極らしくもない自分の中のつぶやきを打ち払うかのように
幾重にも重なる衣の端が乱れるのも構わず、ばりばりと行儀悪く頭を掻いた。

「・・・ったく弱い犬ほど良く吠えるもんだな。」

「ーーーーなにっ?!!」

お互いの胸ぐらを掴んでの取っ組み合いの親子喧嘩が始まろうとした二人の間に
珍しく黒装束の男がずい、と割って入る。

「・・・長。すでに西王母様があちらに。」

「!?」

同時にひくりと口端を引き攣らせた青竜族当代族長とその跡取り息子の視線は、
男の指が示す方をゆっくりと注視した。

二人の視線の先・・・。
サンゴ礁の上に作られた、小さな朱色の社のすぐ傍に静かにたたずむ一つの人影がある。
それは、ぱちん。ぱちん・・・。と、手元にある真っ白な羽扇を、
僅かばかり開いては閉じを繰り返す女仙の姿だ。

誰あらん。
彼女こそが崑崙山の女主 西王母その人だった。

おそらく彼女はかなりの老齢である筈だったが、凛と伸ばした背筋には
脈々と受け継がれる気品が滲みでて、老いた様子は微塵も感じられない。
確かにその顔には深く刻まれた皺があるが、歳を経てまだ尚、
目鼻立ちの整った顔は実に聡明で、若い頃はさぞやと思われる秀麗さを保ったままだ。

ふわり。と優雅に揺れる真っ白な羽扇の向こう側に、
静かに伏せられた切れ長の眼元には底知れぬ知性が溢れ、
わずかに上がる口角は強固な意志と自信、そして揺るぎ無い余裕を含んでいる。

さもありなん。
彼女は崑崙山ばかりでなく仙界の女仙を一手に束ねる女傑でもあるのだ。
齢ばかり重ねた他の多くの長老達と違い、その有り余る力と才能で辣腕をふるい
仙界中の女仙の信頼と尊敬を一身に集め今現在も尚、頂点にあり続けている。

「・・・遅い。」

ぱちん!!と一際大きく扇の要が鳴り、今まで羽扇の向こう側にあった
彼女顔がゆっくりと露わになった。
どうやら遅れてきた青竜の一団を認めたようだ。

「!!」

刹那、ひくり・・と片眉をあげた、そのわずかな仕草ひとつで
大気がずしりと密度を増し、彼女の背後から陽炎の様に気配が立ち上ったかと思えば、
あろう事か、たちまちそれが怒気をはらんで空間を震わし始める。

「・・・このわたくしを待たせるか。」

びりびりと大気を震わせ、ぱちん。とまた羽扇が鳴った。
一体、この細い身体の何処にこれほどの強大な力が内包されているというのだろう。
深海の奥底。青龍の結界のど真ん中の地にあって尚、留まることを知らずに
大きくなり続ける西王母のその肌を裂くような気の膨らみは、確実に間合いを詰めてくる。

必然的に背後に影のように控えていた黒装束の男たちは皆、
長である竜也の前に盾となるべく、じり・・・と一歩足を踏み出した。

「ああ・・・。西王母様。どうかご無礼をお許しください。」

だが、それをいなし、部下の前に大きく歩を進めたのは竜也の方だった。

「?!」

そこまできて漸く丹羽は、ついさっきまで握り締めていた父親の衣が、
もうすでに己の手の中に無い事に気が付いた。
いつの間にか父親は自分の手を払い、西王母の前に起拝の姿勢をとっていたのだ。

己へと恭しく跪く青竜の長へ一瞥をくれた西王母は、また羽扇をぱちり・・と鳴らした。
するとそれを合図にして、今まで際限なく広がっていた怒気が急激にしぼみ始め
遂には霧散して、再び深海の屋敷にはまるで穏やかな沈黙が訪れたのだった。

「・・・・ふぅん。」

小さく唸った西王母は、すっかりとその猛々しい気配を内に収めると今度は
青竜一族の族長を頭の先からつま先まで実に無遠慮に、だがしかし当然のように検分し始めている。

ジロジロと容赦ない視線の先、今日の竜也は珍しく正装にその身を包んでいた。
この男の顔に常にある、不潔な無精髭をきれいさっぱりと落とせば、意外にも精悍な顔立ちが現れる。
無頓着に束ねて然りの頭も特別な今日の為、後れ毛の一本も残さず丁寧に艶やかに梳き上げられ
綺羅綺羅しい族長の冠がその頭頂部に置かれていた。

四神将の中でもずば抜けて派手なことで知られる青竜族の族長の衣は、
竜也のぶ厚い胸板に嫌味なく映え、まさに天空の勇にふさわしい威厳と風格が満ち満ちている。
普段の粗野な言動や仕草をおくびにも出さない実に典雅なその佇まいは、
彼の常を知らない者が見れば、ついうっとりと見惚れてしまうに違い。
西王母もまた、そんな今日のこの竜也の振る舞いには大変に満足した様子で、
どうやら曲げた機嫌も取り直してくれたようだ。

「哲也、何を呆けている。お前も今すぐ西王母様にご挨拶せよ。」

「・・・。」

下から見上げた達也が、ぼんやりとそこへ突っ立ったままの丹羽へと声をかけた。
さっきから一人取り残されたままの丹羽は、父親と西王母のやり取りを
ただ見ている事しか出来なかったのだ。
それはもちろん、桁外れの力を見せつける西王母然り。
また、今まで目にしたこともない父親の変わり身の早さにも然りだ。

「ーーーでっ!!」

不意に父親の大きな掌が、息子の頭頂部を押さえつければ
その意思が全く無いにもかかわらず丹羽は長い脚を折り、西王母の前に跪く羽目になった。
真上から万力のような力を持つ大きな手でグイグイと押し付けた挙句、
西王母からはまるきり見えないようにして、丹羽の膝裏に足蹴りを食らわせたのだから無理もない。

ぎりりと悔しげに歯ぎしりをしても丹羽は、そのまま頭を垂れるしかなかった。
相変わらず体からは、頑強な戒めにより絶えず気が流れ出していて、
もはや真っ直ぐ立っていることもままならないのだ。

「西王母様におかれましてはご機嫌麗しゅう。かくもめでたき日を
無事迎えられた事を青竜一族族長としてお礼申し上げる。」

朗々と流れるような口上を述べ始めた青竜族 族長を前にしても西王母は
それに一切答えることをしないまま、達也のその隣で地べたに潰れたように跪く
丹羽の方へ顔を向けると、ゆっくりと其処へと近づいて来る。
そしておもむろに、ぽふぽふ・・・と手元の真白い羽扇で丹羽の頭を小突き始めたのだ。

「?!」

仙界一の女傑の全く予期せぬ行動に、丹羽と竜也と黒装束達の目が点になる。

「――――っ?!」

「・・・やれ、婿殿。婿殿や。」

言いながら西王母は、自身も身をかがめ丹羽に目線を合わせると、
尚も丹羽の頭をぽふぽふ・・・と小突き続けた。
とうとう丹羽が困惑の表情を浮かべたまま、仕方なく顔をあげれば、
西王母はそれを待っていたかのように
羽扇をするりと輪郭ごしに降ろして丹羽の顎に留め、
そのままグイ・・と強引に顔を上向きにさせた。

「ふーむ。なんじゃ・・・今日はエラク活きが悪いのぉ。」

「はぁ?!」

何やらひどく残念がって言う西王母の、まるきり市場で野菜を品定めしているようなその言い草に、
さすがの丹羽も素っ頓狂な声を上げずにはいられない。

「はは!!いやはや、お恥ずかしい・・・存外、初心なやつでして。」

「なに??・・・初心じゃとぉ?? 」

脇から割って入った竜也を一瞬、半目でじとりと睨んだ西王母だったが、
すぐに屈んでいたその身を起こしながら、その背後にある小さな朱い社を振り返り
鷹揚に手元の羽扇をひらひらと振って見せた。
それは社の下にある真っ暗な穴を指していて、どうやら言外に其処に入れと促している様だ。

「・・・まあなんでも良い。さて、さっきから祠の中で
花嫁が婿殿を待っておるぞ。さっさと行って来や。」

「―――だからっ!!俺は結婚なんかしねえって言ってんだろ!!」

弾けるようにして膝立ちになった丹羽が、我に返ったように捲し立て始める。
これ以上いろいろと置いてきぼりを喰らう訳にはいかないのだ。
大体、誰が今日の婚儀を了承するといったのか。

「おやおや・・・。初心もそこまで来ると笑えぬぞぇ?」

「おいコラ!!婆あ!! さっきから黙って聞いてりゃ好き勝手な事ぬかしやがって!!」

いよいよぶちり・・と米神に青筋を立て、豪奢な衣もなんのその、
唾を吐き捨て、勢いをつけて立ちあがった丹羽がぐいぐいと乱雑に腕まくりを始める。
あの渦巻く強大な怒気を見せつけられてもまだ、彼女にこうも不遜な態度を取れる人物は
いかに仙界広しといえども非常に稀な存在だろう。

だがしかし本当に、今回ばかりは相手が悪すぎる。
あの力を持ってすれば、深海のこの屋敷を吹き飛ばす事など造作もない事だろう。
戦闘においては相手の度量を正確に推し測り、時に潔く退くことも重要だ。
血気に逸り、向う見ずな行動を取ることは無造作に命を捨てるに等しいのだ。

これから起こる大惨事を想定した丹羽と西王母以外の者は皆、
一瞬で顔色を無くし焦燥の色を濃くさせてた。

「・・・・・・。」

ちりちりと首筋を焼くような沈黙が、ついに飽和を迎えようとしたその時。

「はあああ。まったく!!!なんと往生際の悪い奴じゃ。ほれほれ!!早う行け!!」

「いでででで!!婆ぁてめえっ!!何しやがるっ!!」

一体いつの間に間合いを詰めたのか、西王母は丹羽の耳を取り一切の遠慮なく
ぎりぎりと引きあげていた。しかも片手で。

「ああもう・・・。歳は取りたくないモノじゃの~。
この婆、耳が遠くてなあ。ぜ~んぜん、全く、な~んにも聞こえぬわ。」

「いででで!!し・・しっかり聞こえてんだろ!!このくそ婆!!」

「ええい!黙りゃ。さっさと行けぃ」

刹那、西王母の薄衣の裾がひらりと翻り、僅かばかり靴先が見えたのもつかの間。
かの人の、その閃光の如き華麗なる足技の前に、哀れ丹羽の姿は忽然と消えていた。

「うがああああああああああああああ!!」

暗い暗い穴の向こう。
ドスン、ガラゴロ・・・ガシャン!バキ!!と様々な擦過音と地響きをさせながら、
丹羽の声が次第に遠くなっていく。
やがてそれが、とうとう聞こえなくなったのを耳に手を添えて確認していた西王母は、
至極満足そうに小さく一つ頷くと、次の瞬間にはもう、
くるりと社に背を向けて歩き出していたのだった。

「ふふ・・・。首尾は上々じゃ。なあ?青竜の。」

そう問いかけてきた西王母の鼻歌でも唄いだしそうなほど上機嫌な顔を前にしてしまえば、
竜也とその他一同は、ただ黙ってこくこくと首を縦にする他選択肢はない。

ゆ・・許せ。哲也・・・・。

もうすっかりと関心を無くしたように、背後にある朱色の社をただの一度も振り返らず、
すたすたと足取りも軽やかに歩く西王母の後に無言のまま従った竜也は、
息子の身を案じてただ、小さく小さく合掌したのだった。






どはーーーーーーー!!!
すっごい久しぶりの王様編でしたああああ。
皆様覚えていましたか??
正直私は忘れそうだった(笑)

それというのも、だいぶ前から書き書きしていたくせに、ちーっとも進まない上、
ほかの作文にも手を出していたので時間がメッチャかかるかかるー((+_+))
あと久しぶりすぎて、プロットもどこかに見失い(笑)
あちこちサルベージするのに手間取っちゃいましたー(馬鹿。)
ああ。この話、いったい何時まとまるのでしょうか??(人に聞くな)

えーっと・・・。あともうちょっと
あともうちょっとだけ(本当か???)お付き合いくださいませ~(V)o¥o(V)


*Edit ▽TB[0]▽CO[0]

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。