ええ。小心者ですから・・・。

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悠遠夜話・番外編


悠遠夜話・番外編~王様の話~:::有明の月の下で:::

2013.06.20  *Edit 
▽TB[0]▽CO[0]

このお話は悠遠夜話設定(王×啓)のお話になります。
完全パラレルなのでご注意ください。
そんなのぜんぜんOK
ばっちこーーーいなお嬢様のみお進みくださいませー。











からころ・・と小さく砕けた朱色した珊瑚の欠片が、其処此処へと落ちるのが
ようやく収まったころ、べっしゃりと地面に平たくなったまま
ピクリともしなかった丹羽の背が、漸く動き出した。

「・・・っ。」

丹羽は目を閉じたまま、手足を少しずつ動かし
ずっと肺の奥に詰めていた息を慎重に吐き出した。
擦過傷の為か体中がヒリヒリとし、頭蓋のいたる所が恐ろしく腫れ上がっていたが
大きな裂傷や骨折を負っていなかったのは本当に不幸中の幸いだった。
どうやら穴に蹴り落とされると同時に取った受け身の姿勢が、功を奏したようだ。

「っ・・いでっ・・いででで・・・。」

丹羽は、げほげほ・・・とせき込みながら呼気を一気に吐き出すと
うつ伏せになっていた姿勢からのろのろと起き上がり
ひとまずは岩壁へと背を預けた。

眼の下の隈はますます黒くなり、瞼がひとりでに痙攣している。
丹羽の、あのいつだって爛々とした光を宿した瞳は
今はもう、どこか朦朧として焦点さえ合っておらず
これでは治癒の術さえも使うことは不可能だった。

疲れ果て、もう指先さえ動かしたくはなかったけれど、
節の高い指を幾度か開き閉じしてみたり、
両肩をぐるぐると回したりして、とりあえずは己の身体が
どこも不自由なく動くことを確認したのは、
丹羽のその胸に僅かばかり残った矜持からだった。

「・・・ちっ」

眼球だけで遥か上空を見上げた先。
忌々しげに見つめるそこに、小さな光のもれる箇所がある。
殆ど垂直方向に位置するそれが、ついさっきまで丹羽が立っていた場所だった。

改めて見れば本当に、なんという高さだろうか。
よくよく目を眇めれば、どことなく足場らしき段差が
刻まれているようにも見えるが、
それは間違いなく断崖絶壁と言っていい代物だ。

こんな所に手枷足枷を喰わされたまま突き落とすなど、
いくら丹羽の身体能力が尋常ではないとは言え、
無傷では済まされないだろうことは誰だって容易に想像がつく。
それを西王母は僅かの躊躇も見せる事無く自分を蹴り落としたのだ。
まさに道端に転がっている石ころを蹴るが如く。だ。

まったく、死んだらどうすんだ・・と天井に向かい、口を歪めて毒づいた丹羽は
はた、と、ついさっきまで感じていた重量級の戒めから
両手、両足が解放されていることに気が付いた。

「――――!?」

いや、まさか・・・。そんなはずはと
半ば混乱しかける頭を振った丹羽の目の裏に
軸を失い穴に転がり落ちる寸前に見えた西王母の顔が、閃光のように蘇る。

真白い優雅な羽扇の向こう側。
ちら、と見えたその顔は確かに笑っていたのだ。
それは他を押さえ頂点に君臨し続ける、圧倒的な力を持つ者のみが許された
絶対的支配者の微笑みだった。

「!!――――っ・・・くそっ!!くそっ!!くそ!!」

あの僅かの間合いに、自分が二晩かけてどうする事も出来なかった
強力な枷を、玩具の様にいとも簡単に外された事実を認めた途端、
丹羽の背筋を断りもなしに悪寒が駆け上がり、口端が引きつりだした。

「・・・あ・・・あのくそ婆あ~っ・・いつか、ぜってー倍返ししてやるっ!!」

無様に震えて止まらない目の前の膝頭を、血管の浮いた掌で握り締めた丹羽は、
全てを誤魔化すようにして、西王母への復讐を吐き捨てたのだった。



:::::::::::::::::::::::::::::


「・・にしても・・・くっせーな・・・」

洞穴には焚かれた香が、これでもかと充満している。
それはもはや虫払いの燻煙の如く丹羽の体を取り巻き、濛々(もうもう)として
辺りに立ち込めているのだ。
この香が酷く上等な代物だろうことは、なんとなく丹羽にだって想像出来たが、
モノには限度と言うものがある。
視界を遮り、嗅覚を麻痺させるほど焚かれた香は、
いくら極上の物といえどもハタ迷惑以外の何ものでもなかった。

「・・・燻製でも作る気かっつーの・・・」

言いながら、げふん・・と一つ咳き込んだ丹羽は、
衣の袖を口元に宛て直し、涙目になりながらまた眉間の皺を深くする。
だがしかし、ブツクサ言いながらもその足は
明確な意志を持って先へと進められていた。


正直、さっきまでこの男は、落ち込んでいた。
ソレも相当に、だ。
一瞬とはいえ、恐怖に支配されかけた自分にやり場のない憤りを覚え、
やがてしばらくすると結局は、何もできていない自分に気が付き
酷く消沈してぷつりと脱力し、その場から動けなくなってしまったのだ。

それほど丹羽は疲れていた。
本当に、酷く酷く疲れていたのだ。
強大な力に押しつぶされてされるがまま、いわれるがまま、
嫁を娶り、代々続く家の礎となって生きてしまおうかなんて
そんな到底らしからぬ選択肢を頭に浮べるほど、
この男の身心はすり減り、限界を迎えようとしていたのだ。

だがしかし、そんな丹羽の鼻に僅かだが、新鮮な風の匂いがふわりと届いて
その瞬間、あの青空みたいな瞳が脳裏に瞬いたのだ。

「!!・・・・・」

カビ臭い仙界に嫌気がさして、逃げ出した丹羽が人界で出会ったのは
竜族が焦がれて止まない美しい空色の眼をもつ、楼閣の名太夫。

人界の淀んだ気にあてられたのか、その瞳に囚われたのか
今となっては分からないけれど、初めて会ったその夜に
浅ましくも獣のように組み敷いたその体に丹羽は心底驚いた。

一体どんな理由があるのか知らないが、一夜の夢を男に売る
太夫であるその人は、酷く初心で誰より可愛らしく
おまけに見通だったのだ。
現金な事にそれを知った途端、自分の中で湧いた淫猥な征服欲が
瞬時に無垢な庇護欲へとすり替わるのが解った。

ちょっとからかっただけで、子供みたいに怒ったり騒いだりする。
啓太のそのくるくるとよく変わる表情から、いつしか目が離せなくなっていた。
それに好いた欲目とは言ったもので、悪態をつかれるほどもしかしたら自分は、
特別なのかもしれないと優越感さえ覚えた。

「けい・・・た」

声に出さないと何かを失ってしまいそうで、
丹羽は想い人の名をかすれ声で呟く。




出来る事ならば、初めからやり直したいと
啓太の心が開くまでずっと気長に待つつもりでいた。
それが身体を無理矢理に開いた罪滅ぼしになるなんて
思わなかったけれど、不器用な自分にはそれくらいしか思い浮かばなかったのだ。
それが完全なる自己満足だと分かってはいたけれど、とにかく啓太の事を
大切に大切にしてやりたかった。

生まれて初めて味わうこの感情は不確かで、頼り無くて、酷く鬱陶しい。
正直、大ざっぱな性格の自分には、いささか持て余し気味だ。
だけれどしかし、この想いを絶対に離してはいけないという事だけは分かる。

「啓・・太」

我が物顔で渦巻く香に消されそうになりながらも、その風の匂いは
バラバラになりそうな丹羽の心を一つ、また一つとかき集めてゆく。

この洞穴の奥の社には青竜族に嫁ぐ崑崙山の花嫁が一人
花婿である自分を待っているという。
風の匂いは確かにその方角から吹いてきていた。
もしかすると社の奥には、海上へと続く道があるのかもしれないと、
そう思った途端に、丹羽の心は漸く一つ所へと集まり、その瞳の焦点が定まり始めた。

「・・・啓太。」

・・・そういえば、あいつ、いっつもむくれてるよなぁ・・・。

くすり・・・と小さく吐息のように笑うと丹羽は
啓太に最後にあった日の事を思い出す。
寂しい事にいつだって、想い人はそっぽを向いているか
怒鳴っているかのどっちかだ。

・・・まあ、それも十分に可愛けどな。

そんな風に言ったなら、確実に機嫌を損ねて布団に潜り、
しばらくは顔すらも見せてくれなそうだな・・・と想像すれば
カラカラに乾いた唇に笑みさえ登るのが不思議だ。

そうしてやっぱり丹羽は思うのだ。
どうしたってあの、花がほころぶ様な笑顔が見たい、と。
それも太夫の笑顔ではなく、ただ一人の恋人へ向けられる笑顔を、だ。
そして出来ればずっと、側に居てその笑顔を守ってやりたいと。

初めて会ったその日に泣かせておいて、何を言うかと責められれば
言い返す言葉もないが、生まれて初めて守ってやりたいと思えるものが出来たのだ。
誰がどんなに邪魔しようとも、啓太をこの腕にしなければ気が済まない。
その為には、どうしたって仙界を抜けださければならないのだから、
こんな所で腐っている場合ではないのだ。

ああ。本当にもう一度、啓太に会いたくて仕方がない、と丹羽はじみじみ思う。
啓太に会って抱きしめたなら、いくらどんなに暴れたって騒いだって
二度とこの腕の中からもう逃がしはしないのに。
そうすればきっと、この身体の芯がぽっかりと無くなってしまったような
感覚は消えてなくなり、楽になれるに違いないと。

そんな風に思えば、鼻の奥がつんと痛くなって丹羽は一人で慌てた。

「――――啓・・・太ぁ。」

よろけながらも、ついに立ち上がった丹羽は力強く顎を上げた。
前だけを見据えるその瞳には漸く、あの爛々とした光が戻ってきていた。


:::::::::::::::::::::::::::::::::


丹羽の沓先を頼り無く照らすのは、
もはや煙に燻されてしまいそうな石灯籠達の灯りだ。

暗い洞窟の端にぽつりぽつりと等間隔に置かれたそれを見れば
どうしたって想い人と出会った、あの花街の景色と重なって胸がちりりと痛む。

灯篭の灯りが揺れる度、もし例えば、この腕に囲った啓太が泣いて嫌がったなら
その時はどうすればいいんだろうかなんて、らしくない昏い考えが
浮き沈みして、うっかり萎えてしまいそうだったけれど、
結局はそんな事、今から考えても仕方のない事なのだと無理矢理に頭を振って歩を進めた。

それにどうせ、今転げて来た断崖絶壁を苦労して這い上がっても、
入口には見張りが控えているに違いない。

・・ってか、ぜってーいるだろ・・・。

最悪、登り切った所をまた、あの西王母や父親に蹴り落とされかねないのだ。
第一、このボロボロになった体に絶壁を登りきる体力が残っているか、
かなり怪しいところだったし、もうこれ以上、
頭のタンコブが増えるのだけは勘弁してほしかった。

そう、残された最良の道はただ一つ。
この洞窟の奥の社へと進む事なのだ。
多分。

社の奥で散々に待ちぼうけを食らっているだろう花嫁には、何となく悪い気がしたが
ここはどうにか話をつけて、今回の件は無かった事にしてもらう他ないだろう。
とゆーか、元々この婚儀を了承した覚えはサラサラないのだから
花嫁には是非とも納得してもらわないと困る。

「まあ、ゴネられたとしても所詮は崑崙の箱入りお嬢だろ。
少しばかりデカい声を上げりゃ快く分って頂けるってもんだ・・・
まあ、いざとなったら・・・やっぱ実力行使しかねえよなぁ・・・。」

どうやら、頭の固い、もとい力比べではどうする事も出来ない
遥か頭上の強敵達から、か弱い花嫁へと完璧に的を絞ったらしい丹羽は
うーんと唸ってから両肩をゴキゴキ・・・と鳴らしたあと、
更には拳の具合を確かめる為、関節をまんべんなく鳴らすと
最後の石灯籠の灯りを目の端に送ったのだった。




お久しぶりの王様です。
お話、覚えてらっしゃるかしら??(笑)
あと一話・・で終わりますのでどうかお許しを~
恋人以外の人の扱いは、ものすごーく雑な王様希望でーす(笑)


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