ええ。小心者ですから・・・。

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悠遠夜話・番外編


悠遠夜話・番外編~王様の話~:::初月の消える頃(上):::

2013.09.26  *Edit 
▽TB[0]▽CO[0]

このお話は悠遠夜話設定(王×啓)のお話になります。
完全パラレルなのでご注意ください。
そんなのぜんぜんOK
ばっちこーーーいなお嬢様のみお進みくださいませー。









初月の消える頃 ~上~





例えば、それが別の誰かだったなら、そんな事には
到底思い及ぶはずもなかったし、もしかしたら
そこへ足を踏み入れる事さえ、確実にためらっただろう。
だがしかし、ここに居るのは他の誰でもなく丹羽哲也だ。
一切の遠慮も、ましてや戸惑いさえもこの男に有りはしなかった。



息を詰めたまま低い出口に身を屈め、やっと目指したその場所に躍り出た丹羽は、
予想外の明るさに目を眇めるしかなかった。
長時間、薄暗い所にいたせいかその光源に慣れるのに、僅かばかり時間がかかる。

丹羽の立つ場所は、本来なら光も届かぬ域の筈だ。
だがしかし、今、ここには目に痛いほどの光源が確かに存在する。
眼が徐々に辺りの風景を把握して、漸くその光の正体が何なのか判明すると
丹羽は少しだけ呆けてからすぐ、うんざりした様に嘆息を一つ吐き出した。

「・・・」

光の正体。
それは見渡す限りの螺鈿。螺鈿。螺鈿。
驚くべきことにそれらが、天井から床までを隙間なくびっしりと埋め尽くし、
ぶら下る燭台の灯りを幾万倍にも増幅させ、四方へと乱反射させていたのだ。

見上げた天井部には、太陽を抱いた黄龍が鎮座しこちらを見据えていた。
その黄龍に四方からかしずく様にして、四色の竜達が配置されている。
海底深く静かに眠る黒龍、噴火する火山にとぐろ巻く赤龍。
そして悠然と雲間を駈けめぐる白龍と、嵐を呼び雷鳴を轟かせる青龍とが
実に緻密に煌びやかに描かれそこに存在する。

必要以上にきらきらしい空間を、視線だけで大ざっぱに把握した丹羽は
ついに耐えきれなくなったのか突然、大声でわめきだした。

「あぁぁっっ!!もう!!面倒くせぇことすんじゃねえよっ!!」

木霊した語尾が何重にもなって穏遠(おんおん)と足元へと吸い込まれて行く。
どうやらここは下層へ行くほど狭まったすり鉢状になっているようだ。
しかも目的とする最下層へ続く道は、壁に沿って作られた華美で豪奢な階段ただ一つのみ。
西王母と共に崑崙山からやって来たという件(くだん)の花嫁は
その先の最奥で丹羽がやってくるのを待っているに違いないだろう。
問題はその階段の気の遠くなるような段数だった。

正直、もうとっくに丹羽の体も精神も限界を迎えている。
暗い洞穴を抜ければすぐに、崑崙から来た花嫁に会って直談判できると
勝手につけていたアテが大きく外れた上、
更にお預けを喰わされたのだから疲労度倍増もしかりだ。



「あ~あ・・・もう。仕方ねえな・・・。」

ひとしきり騒ぐと落ち着きを取り戻したらしい丹羽は、
どうやら、何かもっと別な方法で下へとたどり着く算段を付けたようだ。
当然、あの階段を使用する気など更々無い。

「・・・んじゃ、行くとするか。」

時の仙界の名工達が、威信をかけ作り上げただろうこの場所は
青竜族にとって巨大な一つの至宝と言っても過言ではないはずだ。
だがしかし、美術や工芸に酷く疎い・・・もとい、どうでもいい丹羽は
先人達の偉業にミジンコほども敬意を示すことはなかった。

手近にあった燭台に繋がる金の鎖を引き寄せた丹羽は、
何度か乱暴に引っ張りながら、強度が足りると知るや否や
ぶちり、と一切の遠慮もなく引き抜いてしまったのだ。

「まあ、こんなもんか?」

事もなげにそう言うと、片手に今引き千切ったばかりの鎖を、
命綱代わりにぐるぐる巻きにして、ちろ・・・と一つ舌なめずりをした丹羽は、
次の瞬間にはもう、遥か下方のただ一点を目指して己の身体を中空へと放り出していた。
胸を張り、四肢を広げたまま頭から真っ逆さまに落ちてゆくその様は
一切の重さを感じさせず、まるで舞うように軽やかだ。

丹羽と共に急降下する鎖は、蛇のようにのた打ち回ってじゃらじゃらと音を立て、
ついにはその衝撃に耐えきれなくなった色とりどりの宝石が
後から後から弾け飛んで散らばり、そこらじゅうへと落ちてゆく。
螺鈿から七色の光を受け取ったその石達はまるで、
夜空を滑り落ちる流星のように見えた。


::::::::::::::::::::::::::::::::::


もう随分と長い時間、巨大なあこや貝の中で身じろぎ一つせず
俯いていた花嫁はふと、頭上から何やらパラパラと音がするのに気が付き、
ゆっくりとその顔を上げた。
けれど、高い綿帽子を被ったままでは、上の様子はうかがい知れず
仕方なく座っていたその場から、ほんの少しだけ動いてみる事にしたようだ。

「??」

花嫁が身を乗り出し、上空を見上げたちょうどその時。
ずん!!と、重量級の地響きが辺りへと轟き渡る。

「!!どっは~・・・あっぶねぇ~」

かなり難はあったが、とりあえずは無事に着地した体制から
身を起こした丹羽の肩や髪にはまだ、小さな宝石が降って来る。
が、目の前に目的の人物を見つけるや、丹羽はそれを払おうともせず、
腕に巻きつけてあった鎖を外して、脇へとぞんざいに投げ捨てると真っ直ぐに花嫁を見据えた。

「・・・あんたがあの婆・・・いや・・西王母の孫?」

「・・・。」

「随分と待たせて悪ぃが、今回の事は完全にあんたンとこの西王母と
うちの馬鹿親父の先走りっつーか、勝手な企てっつーか・・・」

「・・・。」

「あんたがなんて言いくるめられて来たのか知らねぇが、
とにかく、こんな茶番はもう終わりだ。」

「・・・。」

よほど仰天したのか、はたまた、挨拶もなしに本題を突きつける
青竜の跡取り息子の無礼な態度に呆れているのか・・・
一方的に喋る丹羽の真正面にいる花嫁は、巨大なあこや貝の中に座って、
さっきからずっと下を向いて黙ったままだ。

「えーっと・・あ~・・・なぁ?・・・あんた聞いてんのか??」

「・・・。」

見れば、重そうな花嫁装束からのぞく細い指先は
念入りに白粉が叩かれているせいもあり完全に色を無くし、
どことなく震えているように見えないでもないが、
相変わらずその顔が一体どんな表情をしているのかは、
高い綿帽子の所為でこちら側からは全く伺い知ることは出来ないのだ。
だがそんな事に、一向構わず丹羽は続ける。

「まあその・・・つまりはこの話、無しってことで・・・。」

面倒かけて悪かった!と、この男にしてはかなり珍しく
頭を下げて殊勝に詫びの言葉を口にしたその時、丹羽の耳に小さな小さな声が届いた。

「・・・それは」

「?」

「それは一体・・・」

「は?」

「婿様がそのようにご執心なされる方は一体どのようなお方?」

「??あ?どのようなって・・・。そ・・そんな事聞いて何になる・・・。」

小さな、だがしかし明確な意思を持った花嫁の声に正直、丹羽はたじろいだ。
予想もしなかった質問に語尾が尻すぼみになっていく。
まさかそこに食らいついてくるとは考え及ばなかったのだ。
だって、こんなのさっぱり計画に無い。
と言うか、元々それほど綿密にたてられた計画でないのが自分でも恨めしい。

「私にも意地がございますゆえ。訳もなく要らぬと仰られては立つ瀬がございません。」

「・・・ん゛~・・・。」

さっきまでのだんまりは何処へやら、途端に責めるように言い出した
艶やかな紅い唇の勢いに押され、なるほどそうかもしれないと
ついうっかりと思ってしまった丹羽は、その瞬間に想い人の笑顔を思い出してしまった。
しかも極上の笑顔を、だ。

「あー・・・ごほん・・・・・・うん。そこまで言うなら仕方ねえ・・・
とにかく。とにかくだな・・・アイツは、啓太は可愛い奴なんだ・・・。」

ぼそり、と口に愛おしい人の名を乗せた時には遅かった。
これはちょっとマズイかもしれないと思いつつも、もう止める事は出来なくなったのだ。

今まで胸の中に、散々ぎゅうぎゅうに詰め込んでいた啓太への想いが
ついに飽和を迎え、とめどなく溢れ出すが自分でもわかる。
そうなると、目の前の花嫁の事も、人界から連れ去られてここ数日の間に起こった
理不尽な出来事も、全ては何だかもう、どうでもよくなってきてしまう。

「俺の・・・啓太は・・・」

始めはモソモソと独り言みたいに呟いていた丹羽だったが、想い人の琵琶の腕が
いかに素晴らしいかとか、舞だって天下一品なんだとか言う頃には
うっとりと一人悦に入り、ついにはその容姿の細部に至るまでをしつこい位
饒舌に声高に語りだしていた。

「晴れた空色の瞳に、ふわふわの茶色の癖っ毛。折れそうな位
細い肩してっから、弱そうに見えんのに・・・
実はスゲエ跳ねっ返りでとんでもなく短気なんだよなぁ。
・・・だけど、アイツ、ホントは寂しがり屋なんだよ。そこがまた可愛くてよ。」

目を閉じて一つ一つを噛み締めるように、うんうんと頷き
ひたすら惚気に没頭する伴侶となるべき男を見た花嫁はどう思っただろうか。
だけれど恋する丹羽はそんな事お構いなしだ。

「・・・へへ・・。それになんてったって俺たち、身体の相性が最高に良いんだよなぁ。
アイツの佳がる声がもう堪んなくてよぉ・・・なんつーの?腰にガツンと来るって言うか・・・」

だらしなく脂下がった顔で、ついに愛しい人の痴態についてまで披露しだした丹羽に
とうとう、悲鳴のような声が飛んだ。

「この助平!!」

「へ????????????」

深窓の花嫁が下世話な話に、やはり辛抱堪らず声を上げたのかと思われたが、
どうやらそうではないらしい。

「馬鹿!!馬鹿!!トンチキ!!恥知らず!!」

「?????は?」

罵倒される理由が分からず、さっきから間抜けな声ばかり上げる丹羽の目の前で
突如、音もなくゆらり、と立ち上がった花嫁が一歩、また一歩と距離を詰めてくる。

「この!唐変木ーーーーっ!!」

そう一際大きく叫んだ花嫁は、丹羽の目の前に大層男らしく仁王立ちになったのだ。
心なしか背後には陽炎のように立ち上る、どす黒い怒気付きだ。

「―――――なっ???!!」

喉に声を張り付かせた丹羽は、魂魄を吐き出しそうになった。
いや、もしかしたら正直、半分くらいは飛びだしていたかもしれない。

それはぺいっ!とかなぐり捨てられた真っ白な綿帽子や
何の躊躇もなく太腿までがばり!と捲り上げられた白無垢の裾を見たからではなく
よく知った空色の瞳がまっすぐにこちらを見つめていたからだった。

「け・・・啓・・・太??」

そう言ったきり、丹羽は絶句する他なかった。
あんなに会いたくて堪らなかった愛しい啓太が今、目の前に立っている。
あまりの出来事に本当にどうして良いか判らないのだ。

「夢じゃ・・・ねえよな?啓・・・太。ホントに・・・啓・・・太か?」

やっとのことで絞り出した声はかすれていた。
柄にもなく手足が震えれば、当然つられて語尾も震えた。

これは夢か、はたまた幻だろうか。
ああもう、取りあえず今は何でもいいからどうか消えないでくれ・・・と
祈るような気持ちで歩を進め、徐々にそれは速度を増して行く。
欲しくて欲しくて堪らなかった空色の瞳が、すぐそこにある。
その両腕は愛しい人を抱きしめる為に大きく広げられた。

嗚呼、細い肩も腰もキツク抱きすくめて、そこらじゅう撫でまわし、
うっとりするような甘い匂いを思う存分、吸い込んでやるーーーー!と
かなり不埒な意気込み垂れ流しで猛進した丹羽の抱きしめたもの。それは・・・

「――――っ!!!????」

突如、丹羽の鼻先で火花と共にぐわん、と不協和音が響く。
余韻をもってあたりに響く不協和音の正体。
それは、顔に深々とめり込んだ琵琶が奏でた音だった。
重く堅い紫檀の感触と、結構な衝撃が鼻先に襲い掛かかれば、流石の丹羽も目をしばたかせた。

だがしかし、恋は盲目とはよく言ったものだ。
酷い仕打ちとひりひりとしたその鼻の痛みさえ、すぐさま得心の材料にすり替えられるのだから。

「けぇ・・・たぁ・・・」

「わわっ!!」

・・・そう言えば俺の想い人はこんな奴だったよなぁ・・・と
揺るぎない確信を持った途端、極度の疲労か、はたまた究極の安堵からか、
最愛の人を目の前にして丹羽は、音もなくそのままゆっくりと後ろへ卒倒していった。






すすすみません。
なんだか続きます(+o+)
あと少し、あと少しで終わりますので
どうかお付き合いくださいませ。(コレばっかりだなあ。)






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