ええ。小心者ですから・・・。

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悠遠夜話<本編>


悠遠夜話『弐乃二』

2010.03.18  *Edit 
▽TB[0]▽CO[0]

ぺろり。ぺろり。ぺろり。

やわらかで大きな舌が少年を優しく舐めあげる.

「くふふふふふ もう」

とうとう我慢が出来ずに 少年は笑い出した。
「山神様 早―い ずるーい」
ころころと転げる少年を尚も追い掛けて舌を這わせる。
「今日は上手く逃げ切れると思ったのにな~。また、俺の負けだよう」

もう。くすぐったいってば。止めてよと少年はその獣を掌で追いやった。

しなやかな筋肉で覆われた大きな身体

一撃で、全てを薙ぎ倒す逞しい脚

その奥にはなんでも引き裂く 鋭利な曲がった爪が隠れているのだろう。

口からのぞく長く鋭い牙に捕まってしまったなら、
断末魔をあげることさえ許されず黄泉の国へと引き込まれるだろう。

転げまわって逃げていた少年はくるりと身をひるがえすと
その獣にすりすりと 頬ずりをして身を預けた。

その獣は白い。
否。
銀の毛並みをもつ 大きな大きなそれは美しい虎だった。
ふぁふぁの銀の毛並みはとても気持ちがいい。
それにもう一度だけ頬をすりよせ虎の腹にもたれかかるようにして座り込む 
少年は手をゆっくり伸ばして
その美しい獣の顎の下をゆるゆると撫であげてやった。

くるる・・・。
小さく鳴いて 気持ち良さげに虎はその宝玉のような紫の目を細めて少年を見つめた。
温かい。少年は虎に寄り掛かったまま ゆっくりと目を閉じた。

獣の力強い心音が聞こえる。
どくん どくん  それは生きている証 今ここに存在している証。
少年を守るように銀の虎はそっと身体を丸めて さり・・と
ゆっくりとまた静かに明るい癖のある髪の毛を愛しむように舐めた。




そうだ。初めてこの美しい虎に出会ったあの時もこうやって舐められていた。

光の全く届かない暗闇の中 涙でかすんで上手く見えない自分の眼に
ギラリと二つ光る何かがうつった時。

ああもうこれ以上苦しまなくて済むと意識を手放した。


深く沈んだ意識の底で 食べられる時 痛いのは嫌だなーと少し思いながら、死んだあとは父さんや母さんに会えるんだろうか だったらそれも 悪くはないな・・・。と思ったりする。

湿った温かい物が何度も何度も自分の手首を行ったり来たりしているのを感じて、
ここはもう天国なのかな?とぼんやり見える景色に考えた。

柔らかな良い匂いのする 布の上に自分の身体が横たえられているのをきちんと認識できたのは
一体どれくらいたってからだろうか。

腫れぼったい熱をもった瞼をようやく 持ち上げると 間近に迫った紫の瞳が自分を捉えている。

きれい_________ 。

本当に心の底から思ってから 天国に着いたのにまだ自分の手足にじくじくとした
痛みを感じるのはどうしてなんだろうと思う。

こくん。と首をかしげて また紫の瞳に視線を合わせた時、
初めてそれが大きな美しい銀色の虎のモノだったのだと気が付いた。

怖くないと言えば嘘になる。 でも不思議と心は凪いでいた。
ここが天国なのかそうでないのか?
自分は生きているのか死んでいるのかさえも判らなかったから 恐怖を感じていなかったのかもしれないけれど、その瞳がひどく優しかったから。

そして静かな色をしていたから・・・。今すぐに頭からバリバリと喰われてしまう事は
ないのじゃないか?とそう少年は思ったのだ

さっきから手首に感じていたのは銀色の獣の舌だった。
ゆっくりゆっくり・・・行ったり来たりを繰り返す。
だんだんと痛みが消えていくことをなんとなく 信じ切れずにいたけれど、
じっと見ていると荒縄に深く傷ついて 赤くはれていた処が
見る見る引けていってついには傷跡さえもなくなってしまった事に心底驚いた。

どうやら虎は癒しの力を持っているようだった。

足首のしびれるような痛みももう無くなった。
身体もぎしぎしするけれど 不自由なく動く。
身体の感覚が現実へと自分を引き戻す。
まだ 自分は生きているらしい。

きらきらでふあふぁの毛並み。グンと大きく突き出た逞しい胸筋。
銀の中に散らばる黒の縞模様だって計算されたように美しい。
長いしっぽがゆらりゆらりと揺れている。
そしてなにより 顔の真正面にある 紫の宝玉が美しかった。
こんな美しい色見た事がない。 
改めて、その獣をまじまじとみて見惚れた。
 
こんなに美しいのだから、やはりこの虎は 山の神の化身か、御使いだろうと
見当をつけ、少年は幾分軽やかになった身体をぐんと起こした。

銀の虎の前にきちんと膝を合わせてすわり、おもむろに額を地面にこすりつける
「山神様 どうかみんなを助けてくださいっ!」
と、頭を下げた。

自分は贄だ。
与えられた役割はきちんと果たさなければならない。
このまま 日照りが続けば村人は死に絶えてしまう。
優しくされた記憶はちっともないけれど 自分の育った国が滅びて行くのを
黙って見ているわけにはいかなかった。

俺には 俺が出来る精いっぱいの事をするだけだ。

だから、この美しい紫の瞳に頼むしかなかった。
 

くるる・・・。
と一つ鳴いて。虎は首をかしげた。
「えーと・・・その だから みんなを助けてください!山神様!」
「・・・・。」
やっぱり山神様じゃないのかなー?人間の言葉が通じないとか??
頭を下げていたので下から見上げるような格好で虎を伺い見る

自分の付けた見当が外れてしまった事に少年はいささか落胆したようだ。

どーしよ。俺。このままじゃ ホントに役立たずのままだよ・・・。
がっくりとうな垂れる。

でも。ここはどうやら、神の国に近いらしい事には間違いはなかった。
麓の村ではけしてお目にかかることのない 色鮮やかな花がずっと遠くまで咲き乱れ 
見た事もない色の果物が其処かしこに、たわわに実っている。
日照り続きの麓とは比べようもなかったから。きっと 
ここにいれば山神様にあえるんじゃないか?と少しだけ思い直して、待ってみようかと思った。
絶対に会って願いを聞き届けてもらわなければならない。
自分はその為の贄なのだ。

!!そうだ。大切なことを忘れていた。

「えと。俺の事助けてくれてありがとうございました!!」
またひとつ ぴょこんと 居住まいを正して茶色の癖っ毛頭を下げると
「あの。おれ啓太って言います。どうぞ宜しく」と虎に向かって自己紹介をする。
すると銀色の虎はにゅっと 顔を近づけてきて  ぺろり。ぺろり。
と何度も嬉しそうに少年の頬を舐め上げた。
 
「うう・・・。やめっ・・・くすぐったいってば。俺だめなんだよう~」
両腕で虎を押しやりながら 身をよじって逃げようとする少年を

美しい銀の虎はぎゅ。 と囲い込み飽きることなく舐め続けていた。
















やっとこ臣さん登場・・・しかも虎

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