ええ。小心者ですから・・・。

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天色恋々歌(あまいろれんれんか)


天色恋々歌 ◆参の巻◆

2014.04.16  *Edit 
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天色恋々歌(あまいろれんれんか)
◆参の巻◆







風薫る新緑の五月。
暗闇が、何もかも呑みこんでしまう新月の真夜中にそれはやって来た。

チロチロとおぼろに揺れる紅い炎がぽう・・と黒い森の奥深くから、
突如湧き出る様にして一つ、二つ、
それから三つ目・・・と、中空に灯り始めたかと思えば、
いつの間にかそれは何十、いや、何百もの揺れる提灯となって、
長い長い行列を闇夜に浮かび上がらせたのだ。

白装束をまとった奏者が一斉に笙や龍笛、篳篥を鳴らせば三鼓がそれを追う。
華やかで美しい調べは、そびえる山々に渡り、
木霊にまた木霊して穏穏(おんおん)と遠くまで響く。
それは長い行列が社(やしろ)に全て入殿するまで延々と続けられたのだった。

神官が朗々と祝詞を謳いあげ、巫女が寿ぎの舞を厳かに披露するその様子を、
本日の主役の一人である七条臣は、若干、口端を引きつらせたまま、
黙って見ている他なかった。
人界と妖界両方の礼儀にのっとって、執り行われているらしいこの仰々しい儀式が
およそ、あの父が言う所の「内輪同志の簡単な顔合わせ」的なものではないらしい事が
始まってすぐ、判ってしまったからだ。

「・・・。」

うっかり口元に出かかった大きな溜息を何とか飲み込んだ臣は
あえてその風景から視界を反らす事で何とか気を紛らわそうとした。
覚悟を決めて、臨んだ今日この日のはずなのに
心の中では多大な困惑と些かばかりの後悔がせめぎ合う。


時の移ろいとは実に早いもので、父親の衝撃的且つ
理不尽極まりない宣言からもう一ヶ月が過ぎようとしていた。
思えば今日まで本当に災難続きだったような気がしてならない。

縁談話を聞かされた翌朝。
すでに長期の休暇を申請済みだからと言う父親を無視して、
いつものように仕事場へと登庁した臣だったが、
まずは己へと突き刺さる視線の多さと、そのあからさまさに辟易させられた。

さもありなん。
今回の件は公への発表は未だ極秘とされてはいたが、
政府関係者はもとより有力貴族や軍上層部には広く通達済みだ。
故に、好奇、羨望、嫉妬、蔑み、同情・・・と、
ありとあらゆる感情が込り混じったそれは、渦となって臣を取り巻いたのだった。
かくして七条臣のその身体は、一夜にして「選ばれた者」となり、
当然のことながら最重要人物扱いされる事になったらしい。

だがしかし、ある程度の覚悟はしていたものの、
登庁した途端、鼻先に辞令を突きつけられ開口一番、
既に所属部署が移動になっている旨を告げられた時は、流石に軽い眩暈を覚えたものだ。

藁半紙にたった一行、部署名のみが素っ気なく記されたソレからは
『ツベコベ言わずに黙って命令に従え。』と言う圧力が
ヒシヒシと感じられて、臣は一人静かに消沈するしかなかったのだった。


::::::::::::::::::::::::::::::

うっかりと意識を彼方へと馳せている内に、
いつの間にか神主の祝詞が終わっていたようだ。

会場全てが見渡せる中央の壇上に一人、
式典用の煌びやかな軍服に身を包んだ七条臣は、直立不動のまま、
今日、幾度目かわからない嘆息を心の中で盛大にした。

そろそろ顔に張り付け続けている微笑みも限界が近い。
流石にコレではマズイと思ったのと、もういい加減この状況に飽きてきたのもあって、
臣は視線だけを辺りへ流し始めた。

(しかし・・・。これの一体どこら辺が「略式」なんでしょうかねぇ・・・・)

目に映るのは、広い会場内に敷き詰められた真紅の天鵝絨の絨毯だ。
その真ん中の通路を挟んで、人界側と妖界側の列席者が合いまみえる。

人界政府側には、かなり見覚えのあるお歴々がずらりと並んで
和やかに挨拶なんぞを交わしているが、その誰もが一人の例外なく、
ありったけの勲章を掻き集めて正装を飾り立てており、
見ているだけでなんだか肩が凝りそうだ。

何の感慨もなく同じ速度で流れていた紫の視線が、突如其処でぴたり、と止まった。
其処・・・つまり、妖界側の関係者が並んでいる側を指すのだが
凝視してはいけないと解っている筈なのに、どうしたって眼が離せないのだ。

「・・・。」

妖界側の来賓として招かれた彼らは全員、
真っ白な絹の頭巾を頭からすぽりと被っていた。
その所為で表情を判別する事はまるきり不可能だったけれど、
顔から下の部分には特に統一性は無いようで、
誰もがこの寿ぎの式典にふさわしい、煌びやかで華やかな衣装に身を包んでおり、
それぞれに、意匠を凝らした珠飾りや宝飾品を品よく身に着けている。

しかし、問題は其処ではない。
まず臣が強烈に目を引きつけられたのは、天井に頭が付きそうな程の大男だ。
彼の片方の腕の筋肉は異様に発達し、コブのように盛り上がっていた。
あんな腕で殴り掛かれれたならひとたまりもあるまい。
もし仮に、彼が暴れ出したなら・・・と考えただけで大惨事が容易に想像出来、恐ろしくなる。
かと思えばその足元には、人の掌に乗れそうな程に小さく
可愛らしい姿をした者達が数人、ぺちゃくちゃとしきりに甲高い声で談笑しており、
時折、隣にいる大男に向かって何か指図している所から、
彼らの序列を、なんとなくうかがい知ることが出来たりした。
だがしかし、まあそれ位はまだ良い方で
参列者の中には、すでに人型を成していないモノまでもが混じり
ウネウネとしながらも整然と列に並び、この寿ぎの式典に臨んでいるのだ。

正直、臣は目の前に在る彼らの風体の異様さと、恐ろしい程の妖力の高さに圧倒されていた。
今まで軍の第一線にあり、妖界の知識には長けている方だと自負していた分、
落ち込みも具合も半端ない。

(・・・。)

己の常識と概念を簡単に覆すその風景に、もはや今日が一体何の日なのか
すっかりと失念したその眼は酷く虚ろで、まるで水面に浮かんだ魚のようだ。

また一つ溜息を吐きそうになった臣の耳に、一際大きく鳴らされた銅鑼の音が届いて、
ようやく本日もう一人の主役の入場が告げられた。

ぎぎ・・と渋く開いた白木の観音扉のその先に
介添え人に手をひかれた姿が見える。
やたらと時間をかけて、ゆっくりと歩むそれを見て、思わず臣は瞑目していた。

(・・・大体・・・今日が顔合わせだっていうのに、
相手の顔も知らないってどういう事なんでしょうか・・・)


異世界から婚約者を迎えると父から宣言され、
今回ばかりは何の良策も思い浮かばず、取りあえずは流れに身を委ねる事を
選択する他ない臣だったが、彼だってやっぱり人の子だ。

経緯はどうあれ婚約と言うからには、せめて相手がどんな人物なのか知りたいと
いう興味がむくむくと湧いてきて、その旨を父親に申し出たところ、
またしても驚愕の事実が発覚したのだ。

なんと相手方の写真はおろか、釣書さえもこちら側には存在しないと言う。
どうやら写真は魂を抜きとられるから嫌だと、先方が断固拒否したらしいよ?
と、やたら神妙に語る父親と、ヒクつく腹筋をなだめながら、
必死になって笑いをコラえる幼馴染を横目に、
よろり・・・と壁に寄りかかったまま、しばらく動けなかったことを覚えている。

(・・・せめて人型を留めていてくれると有り難いんですがねぇ・・・)

大方、醜悪な姿を憂いて、写真を拒否したのだろうと勝手に解釈し
無理矢理に自分を納得させると、相手がせめて、
人の形を留めていてくれるようにと臣は心密かに願ったのだった。



静々と音もなく近づいてくる人影を、胡乱な紫の眼が捉える。
初めて見るソレから、少しでも何か情報を得たい。
だが残念ながら、他の妖界側の者達同様、
頭から大きな頭巾を被ったその姿からは、何の情報も得る事は出来なかった。

しかしながら見た所、どうやら人型は保っているらしく、
ウネウネともしていないし、ましてや見上げるほどの巨躯でもない。

いわゆる中肉中背。
いや。どちらかと言えば、自分と同性と言う割には随分と華奢な印象だ。
それに時折、袖口や裾からほんの少しだけ見え隠れする手も足も
自分達と何ら変わりないようだった。




「―――――――!!!!」

その時。

臣の背筋を強烈な悪寒が走りぬけた。
突如這い上がって来たソレは、己の感覚を疑うほどに強大でおぞましい。
つい反射的に腰にある軍刀へと手を伸ばした臣だったが、
それが装飾用の竹光でしかない事を思い出して、小さく舌打ちする。

(・・・誰だ)

今日は妖界と人界の良好な関係が末永く築かれようとしている記念すべき日だ。
両国の政治の集大成ともいえるこの日に、
こんなむき出しの殺意を滲ませた輩がこの会場に潜む意味。
それは危険分子以外の何ものでも無いだろう。

臣は平静を装ったまま片足を半歩下げ、
精神を辺りへと拡散させながら僅かに重心を低くとった。

(・・・誰だ?・・・どこにいる?・・・)

これ程のあからさまな気配に気が付かないなんて、
一体、今日の責任部署はどこなんだ?と心の中で毒づきながらも、
精神を研ぎ澄ませ、慎重に四方へと巡らせてみる。

不意に、花嫁の横を歩く介添え人の視線と、臣の視線がばちり。と噛みあった。

(・・・?)

見れば海色の瞳が、まっすぐにこちらを見つめている。
正直、花嫁ばかりに気を取られていた所為か、
隣に立つ介添え人の事などさっぱり気にかけていなかったが、
妖界側全ての列席者が顔を見せていない状況下にあって
介添え人の彼だけが頭巾を被っていなかった事に、臣は今更ながらに気が付いた。

ハシバミ色の髪に、目鼻立ちの整った秀麗な顔つき。
凪いだ海色の美しい瞳は、思慮深く聡明に見える。
花嫁を気遣いながら導き、泰然と歩く彼からは、いっそ風格さえ感じられた。

その姿は何処から見ても異形の者にほど遠く、
通路の片側に並んだ妖界側の列席者とは、一線を画している。

(・・・???彼???)

疑念を抱き、僅かに眉根を寄せた臣を見つめて、
男はどうしてか、にこり、と微笑んでみせた。
それはそれは静かに、そして酷く優しく。

(!!)

途端、臣の産毛がぶわり、と総毛立った。
突如足元から黒い冷気が発生し、猛烈な勢いで臣の身体に纏わりつく。
冷たい汗が体中に噴き出して、
首筋をチリチリと焼く様な感覚が走りぬければ、
それは、忘れたくても忘れられない、
生と死を分かつ境界線でのみ知る感覚なのだと思い知らされる。

(――――っなんだ???コレは!!!)

男から視線をそらす事が出来ないまま、臣は酷く混乱していた。
相手の男は、相変わらず口元に優しげな微笑みを湛えながら、
臣の事を真っ直ぐに見据えて、花嫁と共にゆっくりと歩を進めてくる。

男が一歩、また一歩、と近づく度、臣の身体は段々と硬直し始めた。
汗が珠を結んで次々とこめかみを伝う。

やがて胸が詰まり、呼吸さえも困難になれば、脚元が覚束なくなって、
身体がずぶずぶと地面に取り込まれる錯覚に囚われた。

(!!―――――っ!!)

耐えきれず、ついに臣が膝を落とそうとしたその時、
どうしてだろう。
がんじがらめにされていた身体の緊迫が急速に緩んで行った。

汗が流れ込んでぼんやりとする臣の視界に、男と共に歩を進めていた白装束の花嫁が、
男へと顔を寄せ、小さく何事かを呟くのが映る。

(!???)

突然の解放に、臣の両方の膝頭が情けなく小刻みに震えだす。
はたして、今までの出来事は夢幻であったのだろうか?

否。
その証拠に、ドクドクと煩く心臓が脈打ち、
ぐっしょりと汗で濡れた背中が、何が起こったのかを如実に物語る。
衆目の前で悲鳴をあげなかったのは、せめてもの救いだった。

(一体、何が・・・。)

だがしかし。
未だ激しい動揺と混乱の中にある臣を余所に、
男は何食わぬ顔をして花嫁を導き、遂には壇上に在る臣の隣へと並び立たせると、
介添え人としての役目を終えて、そこから静かに優雅に後退って行った。

その海色の瞳の端には臣を映したまま、
相変わらず唇には微笑みを浮かべて。







大変にご無沙汰をしておりました。すみません。
どうにか続きです。あまり面白くもない展開ですみません。
書きたい事があり過ぎて、どうにもまとまりませんー。
ちなみに、臣さんを睨んでいたのは和希さんです(笑)


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