ええ。小心者ですから・・・。

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臣嫁日和シリーズ


臣嫁日和番外編 ~世界で一番君が好き~6

2010.04.30  *Edit 
▽TB[0]▽CO[0]

廊下からドスドスと猛烈な勢いで足音が近づいてくる。
夜中だと言うのにばたんと大きな音を立てて、旦那様が寝室へ戻って来たのだ。
何やら、大変に取り乱している。

「臣さん!!ちょ!!これ!!どういうことですかっ!!!」

顔を真っ赤にして、目じりにはほんの少し涙さえ浮かべ 大声で抗議しながら
ベットにゆったりと横になったままの妻へとにじり寄る。
大変慌てていたらしく、足元はトイレのスリッパのままだ。

「自分の物なので名前を書いてみました。」
にっこり・・・。

と奥様はガックンガックン・・と首を激しく前後に旦那様に揺さ振られながらも
たしかにそう答えた。

ゆうに3秒は間が空いただろうか?

「な・・な・・・・おみさ・・・。」

ぱくぱくと口だけが動くが意味のある言葉が全く出てこない。
一体何がどうなって こうなった??

さっきまで幸せな甘いまどろみの中に居たはずの、
とろけ切った頭のままでは まず正常な考えは浮かんでこない事は
解っていたけれど、今自分の身に降りかかっている
この意味不明な出来事を誰かに正しく説明してほしかった。

いや、やっぱり・・・。
第三者に見られるのは極力避けたい・・・。






なんで。

股間に。

でかでかと。

名前が―――――――――???????


「おみのもの」
内股に書かれたそれはご丁寧に矢印つきだった。
矢印は旦那様自身へとベクトルを向けている。

がくがくと首の関節が千切れるほどに振り回されていた奥様が
ゆっくりと手を伸ばして旦那様の両頬を大きな手で抱え込んだ為
必然的に揺さぶりは中止された。

「だから・・・。」

甘く呟く奥様は 空色の瞳をうっとりと覗きこんでから
自分に乗り上げる格好の旦那様の頬を包んだまま
あうあうしてパニックを起こしているのに
全くお構いなしで 力任せに引き寄せて口をそのまま塞いでしまった。

「ん――――!!ん―――――!!」

さすがにこればかりは、旦那様も納得がいかずに
じたばたと両手両足を動かして 断固抵抗の姿勢を貫く。

くるりと体制を入れ替えてすっかりとベットに身体を沈められてしまっても
旦那様の抵抗は未だ止む事は無かった。
だが、さっぱり、まったく、これっぽちも奥様は動じない。

「だから、ねえ。僕にも書いてください」

塞がれていた唇を解放されて、そう甘い声で囁かれれば、
自分の顔を真上から覗きこんでいる 
この整った顔立ちのせいで
睦言以外の何物でもないような気がするが
旦那様の耳は完全に事実を拾う事に成功したのだった。

ちょっと待て・・・。書いて??何を??

「書いてください。名前。啓太君の物でしょう?僕は・・・。」
違いますか?と紫の瞳の奥を揺らめかせながらうっとりと呟いて
いつの間にか 一体どこから取りだしたのか

手には極太マジックペン。

うん!
コレなら、お洗濯しても消えないね・・・。

―――――――――!
って。 違あああああああああああああああう!!
自分の物には確かに名前を書くよ。あーそりゃ書くよ。
でもさ?子供じゃないんだし・・・。

ってか 絶対間違ってるよっ!!

大体何で、そこで うっとり??
何??
そこ どういった事で臣さんのポイントな訳??

「さあさあ、啓太君」
と腰に響く甘い低音で囁き続ける奥様はマジックペンを持ったまま、
瞳の奥に怪しい光を宿してずずいっとにじり寄って
完全に旦那様に覆いかぶさってしまった。

ごくり。

と奥様が唾液を嚥下する音が耳元で聞こえて
唇が渇くのか、ちろちろと赤い舌を覗かせて下唇を舐めている。

その様子が情事の最中の顔に見えて、旦那様は大変困っていた。
だってその紫の瞳に絡め取られれば 
もう、身体の芯が疼いてきて手足の自由が奪われていく。

どんなに抵抗したくても じくじくと奥底の方から背筋へと
這うようにせり上がってくるその感覚は
旦那様の身体の隅々まで痺れさせるのだ。

それは奥様が時間と手間を掛けて 丹念に旦那様の身体に
随分昔から染み込ませてきた感覚なのだ。

「書いてください。僕に な・ま・え♡・・・」

徐々に吐息交じりになって、完全に熱を持て余している顔になってしまった奥様に
無理やりマジックペンを握らせられる。

もう旦那様は「あ~れ~、ご無体なあああああ・・」
と町娘の様に悲鳴を上げるしかなかった。



さっきから、この自分の優秀な秘書は
青くなったり、赤くなったりで随分と忙しいようだ。
扉一枚を隔てた部屋にいつも控えている啓太を、
ドア越しに何度も呼んでいたのに さっぱり応答がない。

席を外しているのなら、自分で用を済ませてしまおうと立ち上がり
部屋を抜けて来てみれば 何故か山盛りのコピー用紙を抱えて
トントンとひたすら机に打ちつけているではないか。

さて?こんなに大量のコピーは何に必要だったか??
会議の予定は来週の筈だったけれど・・・と思いながら
声を掛けても一向に反応の無い事をいぶかしみながら、
回り込んで顔を覗きこんでみれば・・・。

・・・。ふん。

大方、バカ嫁の仕出かした事に一喜一憂しているに
違いないことは容易に考え及んだ。

今回はどうも、『憂』の比率の方が断然高いらしいが。
啓太のくるくる変わる表情は全く見ていて飽きるものではなかったけれど、
コレではいつまで経っても、正気に戻りそうもない。
そろそろ声を掛けるべきか・・・

西園寺はころ合いを図りながら、バカ嫁呼ばわりする自分の幼馴染の事を思った。

あの男にも本当~~~に呆れたものだ。
学生時代から比べると どんどんと 訳のわからない方向へと
全力疾走しているように見える。

しかし、啓太も啓太だ。
よくも まあ愛想を尽かさずに結婚生活を送って行けるものだと西園寺は
腕組みをしながら こんなに近づいても気が付いていない秘書を伺い見た。

通常の精神の持ち主ならばあの幼馴染の突拍子もない行動について行けずに
とっくに離縁しても不思議ではない。
だがどうだ、啓太は変わらず臣と共に歩んでいる。

今日の様に疲れていたり、困ったりする事は多々あっても(←多々!?)
その事から決して、逃げ出したり、文句を言ったりはしないのだ。

この優しげな顔をした自分の秘書はなかなかどうして一本気な男だ。
そして柳の木の様にしなやかで、強い。

全てを受け止め 一旦は大きくさざめくが、その衝撃で折れたりはしないのだ。
とてつもなく大きな器をもった人物なのだと
幼馴染がとんでもない事をやらかす度に思い知らされる。
あの男を受け止めて、包み込み、際限なく甘やかす事の出来る唯一の人物。
それが伊藤啓太だった。


臣。
良かったな。

面と向かって親友には絶対に口に出しては言ってやらない言葉を
西園寺は 心の中でそっと呟く。


「啓太。」

ふと気が付けば、社長があり得ないほどの至近距離で
俺の顔をのぞきこんでいた。

「わ!!ははいっ!!」

思いっきり噛んで返事をすると
腕を組んだままその秀麗な顔をグイっと近づけてくるから
思わず目をそらしてしまって 頬に熱を感じてしまう。

好きとか嫌いの次元じゃなくて、これはもう、武器だ。生物兵器・・・。
美し過ぎるのも罪なんだと言ったのは何処の誰なのか?
時代が時代ならこの人を我がものにせんとして 国同士の戦争が
起こっても不思議じゃあない。

まさに傾国の美女・・・・いや麗人・・と言った感じか。
彼の目鼻立ちがあまりにも整い過ぎて、なんだか自分の存在が
ひどく居た堪れなくなるから 赤面してしまうのだ。

「これを届け終わったら直帰しろ」

目の前にすっと差し出されたのは茶封筒で 返事をする前に、さっさと
社長室へ西園寺は踵を返してしまっていた。

「あ!あの・・直帰って今まだ、三時過ぎ・・」
急いで閉まりつつある社長室のドアに身体をねじ込んで啓太は言う。

「直帰しろと言った。聞こえなかったのか?」
半身だけ身体をひねって啓太の顔を見ないまま西園寺は言い放ち、整然と並べられた
ファイルに手を伸ばして資料に目を落としてしまった。

「は・・はあ。」

「なんだ?納得いかない顔をしているな?」

「いえ・・そんな・・ただ・・。」

言い淀んでいる啓太へと身体を向きなおした西園寺は
やっと資料から視線を上げて言い切った。

「早く帰って休め。そのクマが消えて無くなる様に。
                   あのバカ嫁には私から良く言っておく」

重大なミスを起こされたら敵わんからな。今度啓太に 何かやらかしたら
損害賠償させてやるとぶつぶつ言いながら面白くなさそうに

ふん。
と一つ鼻を鳴らして、又手元に視線を落としてしまった。

・・・。やっぱり勘付かれてしまった・・・。

思っていたよりも早くに退場勧告をくらってしまい少しだけ凹むが
こうなってしまうと社長命令は絶対だったから、ぺこりと癖っ毛の頭を下げて
退室の礼を述べてから、茶封筒を手に社長室の扉を閉めた。
西園寺は ああ。 と一言云って啓太の言葉に軽く右手を挙げただけだった。




ふう。
大きく息を吸ってから又吐き出す。
仕方ない、用事を済ませたなら家へ帰って休む事にしよう。
明日から、頑張って今日の分を取り戻せばいい。
開き直ってしまえば幾分か心が軽くなる。

取りあえず、帰る旨を妻にメールをしておこうとスーツの
内ポケットから携帯を取り出してふと思う。

果たして 休めるんだろうか・・・??

いや いや いや・・・・。
幾らなんでも、昨日の今日だ。ましてや平日。
奥様だって鬼じゃないからゆっくりと休ませてくれるだろうと半ば祈る様な
気持ちで携帯を開いてから 小さな画面に点滅する光を見つけた。

「!」

そうだ。危ない。忘れる所だった。

スケジュールにあらかじめ登録されていたその予定を思い出して、
啓太は奥様にメールを送る事を止めた

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