ええ。小心者ですから・・・。

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臣嫁日和シリーズ


臣嫁日和番外編 ~世界で一番君が好き~8

2010.04.30  *Edit 
▽TB[0]▽CO[0]

もうすぐそこにある限界を感じて
それから逃げてしまおうと俯いていた顔を上げてみると 
どうした事か、あの女はペコペコと頭を下げて啓太に礼と別れを告げているようだ。

だがそれはひどく形式ばっていて どう見ても恋人同士の別れの仕方には見えない。
それに、手にはさっき買ったケーキの箱が一つづつ 別々に。抱えられている。

「??」
あれ?

えーっと・・・。

混乱する頭を整理しようとするがなかなか上手く考えがまとまらない。
最後に物陰から長身の身体を乗り出していた事をすっかりと忘れて
奥様はただ茫然とそこに佇んでいた。

丁寧に頭を下げる女に向かって 啓太は見えなくなるまで手を振り別れを告げる。
大きな花束が少しだけ持ち辛かったけれど、全然構わない。
形が崩れないようにそっと抱え直して、更にケーキの入った箱の中身が
傾いてしまわないように気を配りながら、歩道の信号が青に変わるのを今か今かと待っていた。

ふと、大きな花束の色とりどりのセロファンの向こう側に、
何故だかぼーっと突っ立っている大好きな銀色を見つけた。

遠くからだって絶対に見間違う事なんてない、啓太の大好きな色だ。

ちょっぴり変なところもあるけれど、一番大切な人。
朝はちょっとだけ 怒っていたけれど、
今日は二人にとって大切な日だった事を思い出したから、
大好きな 大好きな、俺の奥さんに早く会いたくて 仕方がなかった。

社長にはきっと『甘やかすな!!』って怒られそうだけど・・・。

メールも送って無いのに、どうして帰宅が早まったのが判ったのか
不思議だったけれどもしかすると社長から先に連絡が入って、
心配をして迎えに出てくれたのだろうか。

それにしても絶妙のタイミングだ。
これってやっぱり長年連れ添った夫婦の「阿吽の呼吸」ってやつ??

へへ。なんかちょっと こう言うの いいじゃん?

啓太は信号が青になるのを待ってから、手にした荷物を気遣いながらも
大好きな銀色へと歩調を早めた。


大きな花束に埋もれる様にして、旦那様が自分の方へ向って歩いてくる。
ひょっこりと花束の横から顔を出してから 
空色の瞳が自分をまっすぐに見つめて笑った。
モノクロの世界はそこから 鮮やかに色づいてくるようだった。

「臣さん!ただいま!!」

迎えに来てくれたんですか?と
自分を見上げる大好きな瞳にはひどく呆けた顔が映っているのが見える。

「けい・・た・くん・・。」

なんとか名前だけはつぶやく事が出来たけれど、
まだ上手く頭の情報と心の情報を操作し切れていない。

ねえ?ビックリした?
茫然として、固まったままの妻の態度を サプライズが成功したんだ
と勘違いをした旦那様は得意げに奥様に微笑で

「去年は忘れちゃったけど・・その分 今年は奮発しちゃいました~!!」

えへん と胸を張って誇らしげに大きな花束を
ぐいぐいと奥様に押し付けるのだ。

「・・・。」

尚も、固まったままの妻の態度にさらなる勝利を確信して
旦那様がここぞとばかり にんまりと笑って妻に問う

「へへ~。もしかして、臣さん 忘れてました?今日 記念日ですよ?」


・・・・・。

今まで停止していた(←様な気がする)心臓が動き出す。
どくんどくんと脈打って 血流を身体の隅々まで送り出し体温を取り戻していく。

「きね・・ん・び・・・。」
「そ!記念日です!俺たちが出会った記念日!!」


「!!!!」
脳内にフラッシュバックするあの光景。

忘れようとしたって忘れられない。

そうだ

抜ける様な青い空の下、あの学園で君を見つけたあの日。

僕は 君に恋をした。


さっきからオウム返しでしか喋らない妻をさすがにいぶかしんで、
旦那様は 少し心配そうに紫の瞳を見上げて様子を伺ってみる事にしたようだ。

「どうしたんですか?臣さ・・。」
最後まで言わせずに、ぐいっと長い腕が伸ばされて
その瞬間 臣は啓太を花束ごときつく抱きしめていた。

ここが、何処だろうと
衝撃でセロファンの中の花びらが散ってしまおうとも 一向に構わなかった。

喉元に込み上げてくる感情を抑えるのが精いっぱいで、
気の効いたセリフなんて 何も言う事が出来なかったから、
せめて温かな体温を感じていたかったのだ。

愛しくて愛しくて。
今も恋に落ち続けている自分を知る。
世界で一番 君が好きです―――――!!



「ちょ・・臣さ・・ケーキ!ケーキ!」

本気でケーキの心配をしている旦那様がちょっとだけ憎らしかったから
その尖らせてた可愛い唇を今すぐ塞いでしまう事に決めた。

即、行動を実行に移して ゆでダコみたいに真っ赤になった旦那様に
身体を引っぺがされてから、道路の真ん中で盛大に説教をくらう羽目になっても
奥様は大層幸せそうだった。

奥様は、花束を。
旦那様は、ケーキを。
片方の手に持って。
余ったもう片方の手は仲良くつないで二人の家に並んで帰る。

抱き潰されて少しだけ形が崩れてしまった 大きな花束は
「永遠の愛」「あなたしか見えない」「情熱」「幸福」・・・
どれもこれもが、愛を意味することばで彩られた美しい花たちで
恥ずかしがり屋の旦那様の 心からあふれる愛情そのものだった。

キラキラと輝くセロファンに包まれたいっぱいの愛。
旦那様は何を思ってこの花束を、注文してくれたのだろう。
堪らなく、愛おしくなってそっと 奥様は花たちをまた抱きしめるのだ。



さっきまでの暗く冷たい感情に埋め尽くされていた自分は何処に行ってしまっただろう。
大体 原因は自分の勝手な思い込みから始まった事だったが、
旦那様が知らない女性と 親しげに話していた事は事実だったから
疑って後を着けてしまった事への ほんの少し後ろめたさを感じながらも奥様は
あの女性の素性を確認しなければ落ち着かなかった。

「あー・・あの人? 朋子の家庭教師の先生ですよ?」

臣さんも会った事ありますよね~?と
淹れたての紅茶の香気を楽しむ様にゆっくりと喉へと流し込みながら
さらりと啓太は言う。

「え??」

自分は他人よりも記憶力は良い方だ。認識する力もあると思う。
だがしかし、あの女性には全くもって見憶えが無い。

義妹の家庭教師??
前に一度会った事があるのは スウェット上下の黒ぶち眼鏡女子で
色気なんて コレっぽっちも感じられない女性だった。

「ね?俺もビックリしたんですよ。ぱっと見、全然分かりませんでした~」

女の人ってお化粧で随分変わるものなんですね~と
感心しきりの旦那様だったが 話を聞いてみれば、
彼女のデートが終わって これから家庭教師をしに朋子の所へ向かう所だったらしく、
啓太は実家への手土産のつもりで 一緒に菓子を買って持たせてやったらしい。

ま・・・紛らわしい・・・。

自分の行動をなんとか正当化したくて、旦那様の細やかな心遣いを
この時ばかりは恨めしく思う奥様だった。

ああ でも、そう言われてみれば・・・。
パズルのピースを合わせて行くように、
眼鏡女子とさっきのミニスカートの女性の符合を試みる。
旦那様はメイクのせいで判らなかったと言ったけれど、
きっと彼女は恋をして美しく変わっていったのだ。
恋は人を変えてしまうと言う事は 自分の経験から確かに立証できる事実だったから。

自分の勘違いのせいで あらん限りの悪態をついた上 
更に呪いの言葉さえ口走った彼女には申し訳ない事をしたな
と反省する奥様がここにいるから
どうやら彼女の寿命は短くならなくて済みそうだった。

それにしても・・・。 
冷静になればなるほど、なんだか無性に恥ずかしくなってきた。

あ――――。
でも、やっぱりお自分の気に入りのあの店で、二人っきりで買い物をしたのは
ちょっと気に入らない・・・ちょっと?いや・・かなり・・・。

「臣さ~ん。ケーキ食べましょうケーキ!!」

奥様が大層狭量な考えをぐるぐると巡らせている内に、我慢しきれなくなった
旦那様はとうとう自分でキャビネットからお皿を出し始めている

「・・あ・はいはい。今すぐ用意します」

若干の歯切れの悪さを まさか旦那様が気づくはずもないだろうと、
高をくくって奥様は 新しい紅茶を入れる為にポットに湯を入れて
茶葉が広がるのを待ちながら ちら。とソファの向かい側を見ると
ケーキの箱を覗きながら もう待ちきれないと言うように
旦那様が身を乗り出してどれを食べようか吟味のまっ最中だった。

行儀悪くフォークを口に咥えながら、びょんびょんさせているから
危ないですよと注意をしようとした時に

「まったくー。 浮気なんかしませんから 心配なんかしなくっても良いですよ~」
ほごほごとフォークを口端に揺らしながら、呑気に 
だが確かに旦那様はそう言ったのだ。

はて さっき、僕は口にだして言葉にしただろうか

「出してなくてもわかりますよ」

「???え?」
「臣さん そう思ってたでしょ?」
「・・はい・・思ってました・・・」

「へへへ。わかりますよ。何てったって夫婦ですから!!」

とうぜんですっ!と言う顔でにぱっと笑った旦那様の関心はもうとっくに
ケーキに戻ってしまっている。

「け・え・き~♪け・え・き~♪」
良しっ き~めた~と目星を付けた一品へと手を伸ばしながら
小さく舌舐めずりする旦那様を奥様は大きく目を見開いたまま
ただ見つめているしかなかった。


嗚呼。
僕の旦那様は本当にずるい。

また、僕の愛してるが 君の愛してるより大きくなる。

何が、日々籠絡だ。
囚われて落ちて行くのは確実に自分の方だ。
一体 どこまで、僕を虜にしたなら気が済むのか・・・。

でも、それでいい。
それがいい。

出会ったばかりの僕たちは、ほんの小さな事に笑ったり 傷ついたりして
毎日を転がる様に過ごしていたっけ・・・。

優しい春を 

眩しい夏を

穏やかな秋を 

温かな冬を
二人で迎えて また送って。

もうこれで何度目の記念日を迎えたんだろう。
これから先もまた、こうやって二人で迎える この穏やかな幸せが
ずっとずっと変わらずに続けばいいのに。


「臣さんってば~。俺、ケーキ 食べちゃいますよ~??」

とついに痺れを切らしたらしい旦那様に向かって
奥様は優しくほほ笑んでこくんと頷くのだ。

「はい。すみません。すぐ紅茶を入れますね」

長い時間ほったらかしにされてしまった紅茶は
茶葉がすっかり沈んでしまって、もうかなり温くて苦いんだろう。
けれども、それをまた入れ直す事をしないで、奥様はそっと
愛する旦那様の横に座る事を選ぶのだ。
この優しくて大切な時間を少しでも多く味わっていたかったから。

世界で一番君が好き。
でも、二番目も三番目もいない。
君しか いらない。
君だけしか いらない。


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