ええ。小心者ですから・・・。

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お誕生日企画


啓太君お誕生日企画!! 『星に願いを・・・。』(前篇)

2010.05.13  *Edit 
▽TB[0]▽CO[0]

~おことわり~
作中にフランス語が出てきますが、翻訳ソフトをそのまま使用した適当なものです(笑)
フランス語が堪能な方にはふふんと鼻で笑って軽く受け流して頂ければ幸いです(>_<)


「ねえ。伊藤君せっかくお休みなんですから少し遠くへ行きましょうか?」
そう言った恋人はホクロがある方の片眼をつぶって優しく笑ってた。




5月4日 PM:5:00に
駅前正面入り口で待ち合わせをしましょうと七条さんは言った。
誕生日を二人っきりで過ごす為に、郊外の小さなコテージへ予約を入れてくれたらしい。



嬉しい!嬉しい!
俺 今 最高に浮かれちゃってる。
生まれてこの方、毎年GWは家族と一緒に過ごしていて、
当然 誕生日もアットホームに家族でお祝い
・・・って言うのが定番だった俺の16年間。
でも、今年は違う。

恋人と・・それもとびきりカッコ良くて素敵な人と過ごす初めての誕生日だ。
へへ。浮かれるなって言う方が無理な話だよ。

連休で久しぶりに帰って来たのに~、とか、せっかくの誕生日なのにー
とか・・母さんや朋子はぶーぶー文句を言ってたけれど、
父さんだけは男の付き合いもあるんだって気持ち良く送り出してくれた。
いつもは何となく影の薄い父さんだけど今日は男親!って感じで正直見なおした。

・・・まあ・・・。父さんの言う「男の付き合い」が、
俺と七条さんの「付き合い」に全くもって当てはまらない事はわかっているけれど、
今はその言葉に甘えたかった。

少しでも恋人に早く会いたくて意味も無くかなり早い時間に
家を出てしまったから、何処かで時間つぶしをしなくちゃいけない

七条さんを待つ時間さえも 今は愛おしい。
今日はどんな顔して 俺の事見つけてくれるのかな?とか
一番最初になんて言うんだろう?とか・・・。
考えるだけで楽しい・・。って俺ってこんな乙女思考だったろうか??
でもしょうがないじゃないか・・今日から過ごす二人っきりの
休みを想像して 心が浮かれてしまうのを抑える事が出来ないんだから。

コテージで過ごす分と七条さんのマンションで過ごす分の荷物が入った
バックがほんの少しだけ肩に食い込むけれど そんなの全然気にならない。
いつもよりも確実に多い人の波をかき分けて、もう一度バッグをぐいっと
肩にかけ直してから 階段を一段抜かしで登っていく。

世間はGW。
みんな心なしか浮足立って見えるのは上機嫌の俺だけの 気のせいかもしれない。

「♪」
約束の時間までにはまだ随分早いから、七条さんが来ている筈もないのに
俺ってば もう嬉しくって自然と進む足が速くなる。

改札を抜けてから、今度はさっきよりも苦労して人込みをかき分けながら階段を下る。
七条さんのマンションの最寄りの駅。
ここはかなり大きな駅で、新幹線の乗り継ぎも出来たりするから多少の混雑は
覚悟していたつもりだった。
来る度 いつも混んでるし・・・。

でも・・・正面入り口付近に近付いてからその光景に少しだけ俺はたじろいだ。

さすがに大型連休・・・いつもと違う凄い人・人・人だ
・・・・待ち合わせ場所・・失敗したかも。
俺のほんの少しの躊躇は黒々とした人の波に完全に後悔に取って代わった。

コレはあんまり遠くには行かない方が良いかもしれないと
早々に見当を付けてから 近くの駅ビルの中でもウロウロしようと決めて
くるりと身体の向きをかえ 振り向きざま、俺は人込みの向こう側に
ポツンと浮かぶ 大好きな銀色を見つけてしまった。

道行く人より 頭一つ出たその小さな頭は八等身。
どんなに遠くからでもわかる大好きな銀色は
絶対に絶対に 俺が間違うはずなんか無かった。

なんだ。七条さんも凄く早く来てくれたんだ。
へへ。こう言うの以心伝心っていうんだよな。
恋人同士、なにか確実に繋がっているものがある様で、
俺は一人にやにやしてしまった。

会えなくなってまだ たった2日しか経ってないのに
なんだかすごく久しぶりな気がして 早く恋人の側に行きたくて仕方無かったから、
完全に人の流れに逆らって 俺は大好きなその人の元へと急いだ。
はやく、はやく、七条さんに会いたかった。

かなり近くまで来たけれど、この距離から名前を呼ぶのは
結構恥ずかしかったから 後ろから行って驚かそうと思いつく。
それにしても何となく、いつもの七条さんと印象が違って見えるのは
なんでだろう??
初めて見る洋服のせい?
コテージに出かけるにしては随分とカッチリした感じの服だな・・と思いつつ
でも、七条さん何でも似合っちゃうからまあいいかと 
人込みの中 そっとすぐに後ろに待機する。

へへへ。全然気が付いてない・・・。
いつも驚かされるからたまには俺だって
七条さんの驚いた顔が見てみたいって思ってたから
今日こそは作戦成功を確信して3・2・1・・で飛び出した。

「七条~さんっ」
と勢いよく 後ろから二の腕に絡まる様にして自分の腕を巻きつける。

「?」
って・・アレ?????

一瞬・・・。
いや・・三秒は固まった。

振り向いたその人は俺の七条さん・・・じゃ無かった。

でも、俺はこの人の事を知っている。
この人は・・・。


「!!KEITA??」
名前を呼ばれて 不意にグイッと身体の向きを変えらた。
その人は俺を胸の内へ囲い込んでしまった。

「☆○§±×□◇ΛΠΞΩΔ!!!」
ぎゅうぎゅうと長い腕で抱きしめられて 頭上で何やら喋っている。

「ちょ・・えと・・」
英語じゃない・・。多分、きっと・・そうこれは・・フランス語・・・。
広い胸元に、ほっぺたをむぎゅ~っと押し付ける様にして抱きしめられる。

でも何で、俺の事知ってるんだろう??とか 考えている内に
また、今度は身体をグイッと離されて、その人に今度は顔を真上から覗きこまれた。

満面の笑みを浮かべてまた早口で何か喋ってるけど・・。
うう~。わかんないよ~・・。

淡い綺麗な紫の瞳。
さらさらの銀の髪。
そして俺の大好きな人と違う位置にある口許のホクロ。

そうなんだ。
確実にこの人の遺伝子を受け継いで、俺の七条さんはこの世に生を受けたんだ。
その人は・・・七条さんのお父さんだった。

でも、一体なんでこんな所に・・・。

以前に事件に巻き込まれてしまったこの人の居所を知る為に
七条さんと俺が犯罪組織に拉致された時があった。
七条さんの機転と俺の運で何とか事無きを得て解放された後、
PCの画面越しで七条さんとお父さんが会話をしているのを
隣にいた俺は見ていたっけ。

画面越しに見た七条さんのお父さんの顔は
実際に会うと もっとずっと若々しくてモデルの様に格好良かった。
さすが臣さんのお父さんだ。
俺の父さんとはなんか・・・こう・・・違う生き物みたいだ。
う・・・父さんごめん。

それにホントに外人さんなんだなー・・とおかしな灌漑にふけってみる
きっとかなり間抜けな顔でその人の・・・
七条さんのお父さんの顔をしばらく見上げていたにちがいない

「KEITA??」
たった一つだけ聞きとる事が出来る俺の名前を
随分と不思議そうにつぶやいたから それが判って俺はちょっと恥ずかしくなった。

「えーっと俺。七条さんと・・っていや・・臣さんと待ち合わせしてて!!」
公衆の突き刺さる視線を気にしながらも身振り手振りを加えて必死に説明するけど
七条さんのお父さんはニコニコ優しく笑っているだけで
俺の喋っている事は全然判ってもらえていないみたいだ。

「C'est donc!」
なにやら閃いた様子で手を ぽん。 と叩くと
俺の腕を掴んで何処かへ連れて行こうとするから、急いでまた
七条さんがここにやってくる事を説明しようと
ゼスチャーゲームの様に更に大きな身振り手振りをしてみたけれど
全くの無駄な努力なんだと七条さんのお父さんの顔を見て知る事になる。

「???」
ふうと七条さんのお父さんは一つ溜息をついて
両腕を上げて降参ポーズをしてしまったのだ。

「うー・・俺も降参です・・・。」
公衆の面前でゼスチャーゲームを披露する羽目になった俺は
恥ずかしいやら、情けないやらで 同じような降参のポーズを意図せずにとってしまった。
そんな俺を見て、一瞬 紫の目をパチクリしてから、目の端がへにゃってさがって
大きな声を出して七条さんのお父さんは笑い出してしまったんだ。

あ・・笑うと凄く七条さんにそっくりだ。
当たり前か・・親子だもんな。
笑い声は万国共通・・・。それだけは判った・・
でもそんなに笑う所ですか??
もう・・・ひどいです。

ひとしきり笑って七条さんのお父さんは目の端に溜まった涙を指で拭いながら
また俺の事を強引に何処かにつれて行こうとするから、
ブンブンと頭を振って「行けません」の意思表示をしてみた。
すると

「・・・KEITA・・・・?」
そう言って物凄―く悲しそうな顔をするから・・・。

ええ~・・。なんだよ。ズルイじゃないか・・・。
そんな捨てられた子犬みたいに悲しそうな顔したら
断ってる俺の方が罪悪感で一杯になるじゃないか。

ああ・・もう・・仕方ないな~。
通じる訳もない日本語で一人ごとを言ってから
まだ待ち合わせの時間までにはかなりの余裕がある事を腕時計で確認して、
ほんの少しだけ 付き合う覚悟を決めてから、
引きつった苦笑いで「OK。OK」って頷いた。
あまり遠くへ行かなければ大丈夫。時間になったら戻ってきて
後は七条さんと合流すればいいじゃん?って思ったし
OKが通じたんだから、まあ何とかなるだろう的な
行き当たりばったりの感情もあったりして・・・。

「KEITA!!±×□◇ΛΠΞΩ☆!!」

・・・OKって便利な言葉だな・・・。うん。

嬉しそうに何かを喚いた彼は 速攻、商談成立とばかりにがっちりと俺の腕を掴んで
ズルズルと引きずる様に強制連行していく。
そっと上を向いて 伺い見たそのきれいな顔は上機嫌で鼻歌でも歌い出しそうだった。


西風が強い。
海に午後の日差しが柔らかに降り注いで、
波間にキラキラと光が反射していてとても綺麗だ。
遠くに大型タンカーが幾隻も見えるこの目の前一面に海が広がる公園に 今、
何故か俺は七条さんのお父さんと二人きり。

あれから、何度かイントネーションの違うOKとでっかいゼスチャーを駆使して
何となくではあったけれど、二人のコミニュケーションは不思議と取れている。

隣に立った、ニコニコ顔の七条さんのお父さんが フェンスにもたれかかって
目を閉じて気持ちよさそうに海風を全身に浴びながら 
「♪~」
鼻歌まで歌い始めてしまった。

ん?・・・
それは・・どこかで聞いた事がある曲だった。
俺は目を閉じて遠い記憶をたどって見る。
多分、昔、なにかの映画で聞いた気がする・・・??。
曲のタイトルは判らなかったけれど、俺も知っている曲だったから
しばらく七条さんのお父さんの側に座って、静かに海風に頬を撫でられながら
呑気な鼻歌を聴いている事にした。

それにしても・・・・あんなに強引に公園に連れてこられて、
別段 何をするともなしに七条さんのお父さんは
ただ風の強い海を見つめてる。

此処にそんなに来たかったんだろうか?
なにか思い出の場所とか??

そう言えば、七条さんお父さんが日本に来ている事を知ってるんだよな??
普通の親子の関係ではないこの二人の事だから、少しだけ心配になって
メールだけはしておこうとポケットから携帯を取り出そうとすると
突然に又 強く腕を引っ張られて身体が傾いた。

「っとととと・・・。」

いつの間にか、フェンスから身体を離して けいた!!あっち!あっち!!
と身振り手振りで指さす先にはクレープと飲み物を用意した小さな露店が立っていた。
その顔が子供みたいにはしゃいでて、目をキラキラさせていたから
抗議する気も起きないまま、やれやれとポケットに携帯を突っ込む事にする。

まあいいか・・・まだ待ち合わせの時間には少し有るし・・・。
クレープと飲み物を二人分、注文して埠頭の石階段へ二人して腰掛けると
俺からクレープを受け取って早々に七条さんのお父さんはそれをパクつきはじめる。

大の大人の、それも男の人が凄く美味しそうにクレープを頬張る様子に
なんだか急におかしくなって笑ってしまった。
噴き出すように笑ってしまった俺を見て七条さんのお父さんは
不思議そうに顔を見つめているだけだった。

それにしても・・・。
七条さんの甘いもの好きはお父さん似だったんだなあ・・
とそう思うと妙に可愛らしく見える。

選んだクレープも、七条さんが好んで食べる キャラメルシロップと
生クリームたっぷりの甘いもの。
飲み物も、アイスティーのレモン入りだったから、もうコピー完璧だ。

さらさらの銀の髪だって、紫色の綺麗な瞳だって
当たり前だけど 俺の七条さんそっくりだ。
綺麗でカッコイイ俺の恋人。 
大好きな彼は 今 何処でなにしてるんだろう・・・



「KEITA・・・」
ボーっとして七条さんの事を考えていたから、甘い声が鼻先に近づいていた事なんて
全然気が付かなかった。
かなり近くに七条さんのお父さんの顔があって俺 めちゃくちゃ焦った。

すうっ と
長い指が俺の唇に伸ばされて、ゆっくりとなぞっていくから
一瞬何が起こっているのか理解できなかった。

「な・・っな何????・・・」

盛大に噛んで慌てて身を捩る。
見れば七条さんのお父さんは指先についたクリームを舐めとっているじゃないか

「っ!!///////////////」
―――――――――ったく。
この父親にして七条さん有りだ。

もうもうもうもう!!
心臓に悪いったらない!!
こんな所まで、七条さんそっくりだなんて――――。

・・・ってアレ??
七条さんが、お父さんに似てるのか??

多分、ゆでダコみたいに真っ赤になってしまっている
俺の顔を 更に覗き込むようにして、又
銀色のまつ毛に縁取られた綺麗な紫の瞳が近づいてくる。

その瞳の色は、俺の身体を甘く縛り付ける力を持つ恋人と同じ紫。

なんだろう心臓がまだ、ドキドキしてる。

ああ、もう吐息交じりのフランス語で 話すのは止めて欲しい。
何を言っているのかはコレっぽっちも判らなかったけれど、
身体に纏わりつく感じがするその言葉は
なんだか・・・。
その・・・。
凄く色っぽい・・・・。

「KEITA・・。」
と そう何度も名前を呼ぶのも止めて欲しかった。

その低くて小さな囁きは 恋人がするのとひどく似ていたから。

何度も名前を呼ばれて、紫の瞳に見つめられて
いつの間にか、七条さんのお父さんの指先は、耳を掠めて首筋へと移動していた。
何だかその先が読めて来て やばいっ!!て心の中で叫んでるのに
だけど、どうしてか 俺は全く動けずにいた。

頭の中で赤信号が点滅して危険を知らせるのに、身体が言う事を聞いてくれない。

いやだ。

ゆっくりと、指先が顎にかかるのが完全に判っているのに
恋人と同じ紫の瞳が俺の体に魔法をかける。

駄目だよ。俺。七条さん以外の人となんて!!

吐息がおれの唇のすぐそこまで来たときに
ぐいっと身体が強い力で拘束されて七条さんのお父さんから引き離された。

「Veuillez arrêter le père!!!」(お父さん止めてください)

その長い腕に絡めらとられる様に俺の身体が包まれた。

ハッとして 抱きこまれたままの恰好で慌てて振り仰げば
そこには俺が今まで見た事も無い程こわい顔をして七条さんが立っていた。

「O~MI~!!」

「Il est mon amant!!」(彼は僕の恋人です!!)

「C'est il pour avoir provoqué?」(誘って来たのは彼の方だよ?)

「Est-ce qu'une tête n'est pas drôle?」(はあ?頭がおかしいんじゃないですか??)

七条さんが物凄い剣幕でフランス語を捲し立てながら 
お父さんとやり取りをしているから 俺はどうしたらいいか判らなくて
情けない事に ただそのまま七条さんの腕の中で大人しくしてるしかなかった。

うう・・。七条さん かなり怒ってるみたいだな・・。どうしよう。

ひとしきり激しくやり取りをしてから、どうしようもなく イライラした様子で
七条さんはお父さんに向かって吐き捨てる様に一言こう云ったんだ。
 
「一体 何のつもりですか??日本語はしゃべれるでしょう??」

??は??え?
今何と仰いました??
一度、七条さんを見てから、向かいに陣取っているお父さんを見つめたら

「ちっ」

え?え?えええええええええ?
何???いま、舌打ちしたの???ええええ?

「うっふっふ~ バレちゃ、仕方がないねぇ」
両手を上げて肩をすくませながら、とぼけてみせるその口から
淀みなく綺麗な発音で日本語が 紡がれる様はいっそ見事だった。

はい!DVDの日本語吹き替えにリモコンのボタン ぴ!!
くらいに極々 自然で、流暢な日本語に 
俺はもうパクパク口を動かすしか出来なかった。
軽い頭痛と大きな敗北感が俺を直撃する。

七条さんのお父さんって・・・ちょっと・・なんか。


「伊藤君。大丈夫でしたか?」
抱え込まれたままだったのを思い出して、
上を見上げてはい大丈夫ですと答える間もなく
七条さんは、俺の顎を長い指で優しく掬いあげて
ちゅ。・・
と軽く唇を押しあてて来た。

「な・・な・・ななにするんですかっ!!」
慌てて七条さんからはじけ飛ぶように離れると すぐさま

「ふふふ。あれ~?臣~?嫌われてんじゃないの~?」
と、七条さんのお父さんが茶々を入れてくる。

ああ。もう。ややこしくなるから止めて頂きたい・・・。

「『お父さんは黙っていてください!!』」

見事に重なった俺と七条さんの抗議の声にお父さんは目を丸くしていたけれど
全く堪える様子も無く 人差し指を顎に当てながら思案顔で提案してくる

「ねえ。啓太。これから食事に行かない?ミシュランに載っていたお店に行くんだけど
一緒にどう?もちろん食後にはスウィーツもつけるよん♪」
なんて 語尾にはウインク付きで言うから、足からがっくりと力が抜ける。

よん♪・・・・。って・・・。よん♪ってなんだよ・・・・。

この容姿に、このテンション・・・・。
うう~~~。何だかエラク騙された気分だ。

「伊藤君を巻きこまないでください!食事でも何でも一人で行っちゃってください!!」
まったく・・とお父さんの視線から隠すようにして、俺をまた腕の中にすっぽりと
囲い込んでから、がるるるる~っと七条さんはお父さんを威嚇した。

「え~!別に良いじゃないか。減るもんじゃないし。君らはいつも一緒なんだろう?」

さらに七条さんと俺に交渉を試みるお父さんは 何故かとても楽しそうな顔をしていた。
そんな様子にまたイライラを増した声で七条さんが断りを入れる

「駄目です!!伊藤君が減ってしまいますからご遠慮ください。」
えーっと・・・俺・・減っちゃうんですか??七条さん・・・・。
ぽりぽり・・・と痒くも無い頬を掻いてみる。
なんか恥ずかしいんですけど・・。

「え~!!ひどいよ 臣ぃ。ダディ 一人ぼっちは寂しいなあ。ねえ 一緒にいこうよぅ」
「訳のわからない事を言ってないで、早く仕事に戻ったらいかがですか!!」
「まったく。冷血な息子を持つと苦労するな~。ねえ臣はひどいよね? 啓太?」
「って。なんで呼び捨てなんですか!!僕だって伊藤君って呼んでるのに!!」

俺に話題が振られたから 答えようかどうしようか迷っている間にも親子の
攻防戦は留まる事を知らない・・・。七条さんの後ろから伺うようにして
事の顛末を見守ろうとはしているのだけれど・・・。

「うふふふ。良いじゃないか。僕はね、啓太の事がとても気に入ったんだ。とてもね」
「・・・あなたって人は~~~~・・・。」
あり得ない事に・・ほんの少し・・・いや・・かなり・・あの七条さんが押され気味だ・・・。
恐るべし臣父!!

「そうだ!!臣なんかやめて、僕とお付き合いしない??今、僕フリーだし!」
キラキラと紫の瞳がいたずらっ子のように輝いて、
ね?ね?と七条さんのバスケットボールのような素早いディフェンスの向こうから
コレまた見事に隙をついて後ろの俺へと返事を問う様は
もう見事としか言いようがなかった。
天才ハッカーって身体能力も要求されるんだろうか・・・。

「・・・ったく。さっさとどこかに消えてください!!」
ぜいぜいと肩で息をしながらも何とか俺を守り切った感一杯の七条さんは
声を振り絞る様にしてそう叫んで、無理やりお父さんの両肩をむんずと
掴んで方向転換させてしまったんだ。

「ええ~ケチ――――!!」
と、ぶーぶー文句を言いながらぐいぐいと息子である七条さんに押されて
こっちを振り返り 振り返り、歩みを進めていく。

ほんのちょっと可哀想かも・・と追い立てられる後ろ姿を見ていれば、
くるりと綺麗に身を捻って まんまと七条さんの拘束から逃れたお父さんが
ダッシュして俺の所へと戻ってくるじゃないか!?

フェイントを掛けられた形の七条さんはと言えば、バランスを崩して片膝をついている。
あっという間の出来事で、動けなかった俺の側へ来た得意顔のお父さんは
そっと顔を近づけてから これは彼には内緒だよ?と小さく言って
紫の片眼を瞑りながら

「臣の事 お願いします・・。」
と、そっと耳元に吐息のように囁きながら 掠める様におれの頬にキスを落として行った。

「!!」「伊藤君!!」
ハッとして俺が頬に手をやるのと
臣さんの悲鳴のような声がしたのは殆ど同時だった。


「HaHaHa!! A bientot~」(ははは!またね~)
勝ち誇ったような高らかな笑い声を残して、七条さんのお父さんは振り向きもせずに
片方の手をひらひらさせながら海が見渡せる公園の道を一人歩いて行ってしまった。
つられて、いつのまにか手を振っていた俺は七条さんの視線に気が付いて
慌てて手をひっこめた。

 
「大丈夫ですか?七条さん」

まだ膝をついたままの恋人の元へと駆けよって、立ち上がる補助をしようと七条さんを
ひっぱろうとして伸ばした手は逆に七条さんに思い切り引っ張られた。
否応なくぼふんと恋人の広い胸に包み込まれる。

すると恋人は俺のつむじの辺りに鼻をうずめて 
すりすりするからどうやら しばらく身動きが取れそうもない。
だってコレは七条さんが不安な時にする癖だったから。

俺は七条さんの大きな腕に包まれたまんまの自分の腕を
もぞもぞと動かして引き出してから そっと、俺よりもずっと広い背中にまわした。
七条さんが何に不安になっているのか判らなかったけれど
ゆっくりと上下に撫でながら、大丈夫・・大丈夫と心の中で唱える。



「お父さん行っちゃいましたね・・・」
「ええ。」
と、なんだか少しだけ疲れた声で答えが返って来た。
ちょっと判る気がするけど・・・。

「なんだか・・その・・台風みたいな人でしたね?」
「すみません。子供のような父で・・・」

くっついたまま会話を続けるうちに段々と落ち着いてきたみたいだ。
さあ・・・っと海を渡ってくる風が冷たくなってきていた
あんなにキラキラと反射していた光も今はもうすっかりと落ち着いていて
ほんの少しだけ夜に近付いてきている事が判る。

でも・・七条さんのお父さんホントは何しに来たんだろう??




「・・ぷっ・・・ふふふ」
「??何が可笑しいんですか?伊藤君」

自分の顎の下で急に噴き出してしまった俺を何事かといぶかしんで
七条さんが顔を覗きこんできた。

「だって。七条さん。お父さんとどこもかしこもそっくりです!」

俺はついに我慢が出来なくなって、大きな声を出して笑ってしまった。

「ひどいです。伊藤君。僕の何処があの人と似ていると言うんですか?」

目をパチクリするしぐさまでホントそっくりだ。
心外だとばかりに、大笑いする俺から離れて腕組をしてそっぽを向いてしまったから
笑うのを止めなくちゃって思うんだけど・・中々コレが難しかった。

いつまでたっても笑ったままの俺に完全に拗ねて、
くるりとい後ろを向いてしまった背の高い俺の恋人。
強い海風に銀色の髪がさらさら揺れている。
ほら、そんな子供みたいな所も似てますよっ・・・て言ったなら絶対に、
しかられそうだったから今は言わないでおこう。

「ふふ。七条~さんっ」
ねえ機嫌を直して下さい・・とさっきお父さんに間違って 
してしまったように腕に絡まって顔を見上げる。

「機嫌、直して下さい。ね~?ね~?」
ひたすら低姿勢でお願いする俺を渋々ながら
どうやら許してくれたらしい恋人は ゆっくりとこっちを向いてくれた。

今日初めてやっと まともに顔を合わさせられた事に嬉しくなって
そっと彼だけに聞こえる声で呟いてみる

「似てるけど、同じじゃない。
七条さんは俺のたった一人の七条さんですよ?」

そしたら、まるでロボットみたいにぎぎぎーっと音がしそうな位
七条さんの首と身体がぎこちなく動いて俺の方へと手を伸ばしてきた。

へ??俺なんか又へんな事言ったかな??
スローモーションを見ているみたいにゆっくりと
七条さんの顔が近づいてくる。
ああ、紫の瞳が綺麗だなって見とれていたら、視界いっぱいに
大好きな人の顔。

「・・・・伊藤君。」
ここが公園だとか、人通りがある時間帯だとか・・・もうどうでも良かった。
久しぶりに抱きしめられる腕の強さが嬉しかったし、
いつも人目を気にしている俺の事を思って
してくれたであろう優しい掠める様な口づけが愛おしかったから。




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